大瀬良大地と九里亜蓮

実況アナの球種まちがい問題……大瀬良大地と九里亜蓮が教えてくれた判別のヒント | 文春オンライン

まぁ、球種を断言できるのは投げてる投手しかいないだろうけど・・・


2019/08/09

カープ戦の実況を担当するようになって19年、大きなミスもあれば小さな言い間違いもしてきた。いまだに難しいのが、ピッチャーの球種の判別である。特にラジオ中継では、一球一球の球種を可能な限り伝えたいと思っている。近年は、カットボールにツーシーム、さらにはワンシームも登場し、困難さは増すばかりである。

「中継のVTRを見ていて、球種の言い間違いですか? ありますね」と爽やかな笑顔で語るのが、エースの大瀬良大地だ。しかし、ここからのフォローに癒される。「フォークと縦のカットボールとかの間違いが多いですかね。でも、実況でも間違うということは、打者も多少なりとも判別が難しいということでしょう」。

前向きな思考にエースの風格を感じるが、大瀬良には、間違えて欲しくない球種もあるという。「スライダーとカットボールの間違いですね。カットは自信のある球で、スライダーはそんなに自信が大きいわけではありません。なので、ここを混同されてしまうと、ちょっと自信を失ってしまいますね」。

少し寂しそうな表情を見ると、この2球種だけは、最大限の注意を払って見極めようと心に誓うのであった。

大瀬良大地と九里亜蓮
大瀬良大地と九里亜蓮

さらなる強敵 10球種を操る九里が語る“判別のヒント”

カープにはさらなる強敵がいる。リリーフに先発にフル回転、無尽蔵のスタミナで7月は月間防御率2.81、8月も勢いは衰え知らずの九里亜蓮である。縦横、緩急、一説によると10球種を操るとも報道されている。不敵な笑みが頼もしい九里にも、正直な意見を求めてみた。「坂上さんの中継、見ましたよ。確かに、球種の間違いはありますね」。ならばと、判別のヒントを乞うてみた。「ツーシームは左打者に逃げ落ちます、フォークは落ちるときに少しスライダー気味のことがあり、チェンジアップは球速が違いますよね……」。その説明を頭に叩き込んで実況することは困難だが、こんなにも実直に説明を与えてくれる彼の人柄の良さは何としても伝えたいと思う。

そもそもは、こんなに球種の多い投手ではなかった。亜細亜大学では通算19勝、4年の秋季リーグではチームを33年ぶりの優勝に導き、MVP・最優秀投手賞・ベストナインの3冠に輝いた。その頃は、ストレートを中心にスライダー、ツーシーム、チェンジアップという投球スタイルだった。しかし、プロで打者に対峙しながら進化する中で、次々と新球をマスターしていった。

マウンドでは気迫満点だが、普段は冗談も忘れないナイスガイは決してフォローも忘れない。「誰しも間違えることがありますよ。フォークとチェンジアップの間違い、シュートとツーシームの間違い、ほぼほぼ全部が間違いの中継だってありますから。逆に、打者が戸惑ってくれればいいです。相手ベンチで、シュート? いや、ツーシーム? そんな風になっていたらラッキーですね」。

同じ悩みは、野球実況だけではないようだ。インターネットのプロ野球速報だ。「見ますよ。一球速報なんかを見返していると、ツーシームなのになぁ……ということがあります」。

九里の変幻自在なピッチングは、放送席はもちろん、打者もインターネットの世界も幻惑しているのである。

「僕の方も、球種を増やしておきますよ」

カープは球団史上初のリーグ4連覇へ向け、驚異のV字回復を見せている。首位と最大12ゲーム差あったが、今や1.5ゲーム差(8月8日現在)は十分に射程圏内である。特に、週の後半のローテーションを支える同期コンビの存在は頼もしさを増している。8月のタイガース3連戦、2日の初戦で大瀬良が完封で8勝目を挙げれば、4日には九里が6回2失点の好投で6勝目をマークした。

大瀬良の完封を支えたのは、フォークボールだった。よしよし、集中して縦と横の変化を見極めていこう。実況者として、決意を新たにした。

あとは、九里のピッチングにいかに対応するかである。球速、軌道、手元のデータ、あらゆる情報を総動員して球種の判別に臨みたい。もちろん球種が全てではないが、トライするには十分な課題である。

「目指すは、九里さんの球種正解率100%です」。そう告げると、あの爽やかな笑顔がマウンド上さながらの不敵な笑みに変わった。「それができれば凄いと思いますよ。僕の方も、球種を増やしておきますよ」。

実況の球種間違いは、選手の進化とトライの裏返し。それだけ、打者を幻惑させようと工夫していることの裏返しでもある。そんな言い訳はさておき、カープには、これだけの投球をしながらも、こんな会話に向き合ってくれるナイスガイがいる。しかも、同期で先発ローテを守っている。

普段から仲も良く、ライバル意識も持つ二人の、ビールかけを見たい。おそらく、瓶を持つ「指の握り」に目をやってしまうに違いない。

情報源:実況アナの球種まちがい問題……大瀬良大地と九里亜蓮が教えてくれた判別のヒント(文春オンライン) – Yahoo!ニュースコメント

情報源:実況アナの球種まちがい問題……大瀬良大地と九里亜蓮が教えてくれた判別のヒント | 文春オンライン


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