プロの夢破れ、将棋バー 「駒見るのも嫌」から恩返しへ:朝日新聞デジタル

ほぉ・・・


2019年7月24日06時30分

お客さんとカウンターで将棋を指す福間貴斗さん=2019年6月16日、大阪市福島区、坂東慎一郎撮影
お客さんとカウンターで将棋を指す福間貴斗さん=2019年6月16日、大阪市福島区、坂東慎一郎撮影

かつて将棋のプロをめざした男性が夢破れ、大阪・福島にバーを開いた。カウンターに将棋盤をずらりと並べ、客と対局しながらお酒を出す。一時は駒を見るのも嫌になった。でも、「楽しく教えて将棋界に恩返しをしたい」。そんな思いが膨らんだ。

関西将棋会館(大阪市福島区)から歩いて5分ほど。JR福島駅そばの福島聖天通商店街の雑居ビルに店はある。

「将棋bar ルゥク」。店内はカウンター5席とテーブル3卓。今年3月にオープンした。

マスターは福間貴斗(たかと)さん(33)。「それ、いい手やね!」。カウンターで複数の客と同時に対局する「多面指し」をしながら、注文を受けてビールをつぐ。「ここがポイントやったかな」。対局後には、途中の盤面をさっと再現してみせ、アドバイスを送る。

大阪府大東市出身。プロまであと一歩だった。

将棋との出会いは5歳のとき、足をけがして半年間入院し、父親に将棋を手ほどきしてもらった。面白さにはまり、やがて関西将棋会館の道場に通うように。どんどん昇級を重ね、中学1年でプロ棋士の養成機関「奨励会(しょうれいかい)」に入った。

奨励会は6級から三段まで。四段からがプロ棋士だ。福間さんは高校卒業後、進学や就職をせず、目標を「プロ一本」に絞った。

だが、奨励会には原則26歳までの年齢制限がある。二段だった25歳の夏。2連敗して退会が決まり、「だめでした」と泣きながら、恩師の久保利明九段(43)に電話した。

「この先どうしたらいいんだろう」。途方に暮れ、プロになった同世代の姿を直視できなかった。悔しさ、悲しさ……。様々な気持ちがこみ上げた。

将棋とのつながりを振り払うように、給湯器の販売会社で7年、事務職として働いた。将棋は一切しなかったが、「どんな形でもいいから将棋に関わりたい」という気持ちがだんだん高まった。

プロにはなれなかったけど楽しさを伝えたい。バーなら珍しいし、リラックスして楽しんでもらえるのでは――。店名の「ルゥク」は、好きな駒の「飛車」にちなみ、同じ動きをするチェスの駒「ルーク」をもじった。

週末は弟の健太さん(30)も一緒にカウンターに立つ。健太さんも元奨励会三段だ。平日はインターネットで将棋教室を開き、土日に店を手伝う。

女性が入りやすいよう、店内は明るく、完全禁煙で、入り口の扉は開けっ放しにしている。「お酒が好きな人、将棋が好きな人、どんな人でも楽しめる場にしたい」

評判を聞きつけ、現役のプロ棋士も多数訪れる。史上初の女流六冠をめざす里見香奈女流五冠(27)もその一人。あこがれの棋士とファンが交流できる場にもなっている。

恩師の久保九段も、奨励会を去った貴斗さんの将来を気にかけてきた。「最初はびっくりしたけど、こうして将棋の世界に戻ってきてくれた」と喜んでいる。

ルゥク(06・4300・5257)は大阪市福島区福島7丁目。営業は午後6時~午前0時(月曜は午後8時から)で火曜定休。(坂東慎一郎)

情報源:プロの夢破れ、将棋バー 「駒見るのも嫌」から恩返しへ:朝日新聞デジタル




へぇ・・・