対局の席次、上座の譲り争いで神経戦 合理的な藤井七段:朝日新聞デジタル

ほぉ・・・


2019年7月4日10時11分

羽生善治九段(左)に譲られて上座に移る永瀬拓矢叡王(右)=2019年6月4日午前9時48分、東京都渋谷区、村瀬信也撮影
羽生善治九段(左)に譲られて上座に移る永瀬拓矢叡王(右)=2019年6月4日午前9時48分、東京都渋谷区、村瀬信也撮影

杉本昌隆八段の「棋道愛楽」

将棋の公式戦はほぼ和室で指されますが、席次、つまり上座か下座かで悩むことがあります。

勝負の世界なので、基本的には実力で決まります。竜王、名人などのタイトル保持者、次に永世名人などの永世称号保持者、そして九段、八段……の順。段位が同じなら、棋士番号(棋士になった順番)の早い順です。とはいえ、これはあくまでも原則で、タイトル戦以外では厳密に決められているわけではありません。

6月、羽生善治九段が歴代単独1位となる公式戦通算1434勝を達成しました。対局前、対戦相手となる20代の永瀬拓矢叡王が先に下座で待ち、後から現れた羽生九段が驚いて永瀬叡王に上座を促すシーンがありました。互いが互いに敬意を払う。将棋界の相手を重んじる伝統の一つです。

昔、若手の八段とベテラン七段(私のことではありませんよ)などの対局で、下座に座る若手を見たベテランが「悪いねぇ」などと言いながら上座に着くケースもちょくちょく見ました。これも日本ならではの様式美です。なお、重要なのは若手が先に対局室に入って待っていること。これが逆にベテランが先に到着して、勧められてもいないのに上座に座ると、結果は同じでもあまり美しくない風景になります。

片方が段位も年齢も上なら迷いがありませんが、そうでない場合、私なら対戦が決まったときから色々考えます。やはり先輩相手に上座には座りにくいもの。しかし年長者の方も、段位が下なのに上座はいま一つ居心地が良くない。実は上座下座の問題は、上座の譲り争いでもあるのです。

私が30代のころ、20代の現九段と対戦したときのこと。棋士番号は私が早く、年齢も上。しかし段位は相手が上です。当時は年長者に上座を譲る風潮もあり、上座を勧められました。私は先に下座を陣取り、周りに扇子や小物も置いて自分の陣地を主張。絶対的に有利な状況です。結果、無事に上座を譲ることに成功し、「勝った」。

しかし、その九段は上座に移動後、駒箱を開け「では、こちらで」と本来上位者が持つべき王将ではなく、下位者が持つ玉将を手にしました。「半返し」で、上座のお返しに王将を譲る。割合有名な手筋ですが、私はそれを見るのは初めて。「その手があったか……あぁ負けた」。今思うと、私は一体何と戦っていたのでしょうか。

上座のメリットは、お茶が先に出ることと食事の注文を先に聞かれるぐらい。昔ほど年功序列が重要視されない今の時代、棋士も上座下座にこだわらない人が増えてきた気がします。

なお、迷った場合の目安があります。対局室入り口の掲示板には、両対局者のネームプレートが並べて張り付けてあります。向かって左側が「上座に座るべき」棋士なのです。藤井聡太七段は対局前にこれを確認していると言っていました。実に合理的です。

真剣勝負の前に交わされる水面下の戦い。ここにも棋士の個性が現れています。

すぎもと・まさたか 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2019年2月に八段。第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太七段の師匠でもある。

情報源:対局の席次、上座の譲り争いで神経戦 合理的な藤井七段:朝日新聞デジタル



竜王戦の決勝トーナメントだと、組が上の方が上座。
第32期竜王戦の決勝T2回戦、藤井七段 (5組優勝)vs 増田六段(四組優勝)は増田六段が上座だったな。

タイトルホルダー同士の(タイトル戦以外の)対局なら棋士DBの並びを参考にすればいい。まぁ、棋士番号が若くて段位で追い越されていることもあるけど・・・