「驚愕の大技」 棋界の歴史に残る藤井七段の一手とは?:朝日新聞デジタル

ふむ・・・


2019年4月18日09時16分

地元で将棋イベントに参加し、参加者とのジャンケン大会で笑みがこぼれる藤井聡太七段=2019年4月14日午後3時30分、名古屋市中区、滝沢隆史撮影
地元で将棋イベントに参加し、参加者とのジャンケン大会で笑みがこぼれる藤井聡太七段=2019年4月14日午後3時30分、名古屋市中区、滝沢隆史撮影

杉本昌隆八段の「棋道愛楽」

その1年で功績を残した棋士に与えられる日本将棋連盟の「将棋大賞」。第46回の受賞者が発表され、藤井聡太七段は記録部門で最高勝率、選考部門で「升田幸三賞」を受賞しました。

「新手一生」を掲げて数々の新手や新構想を編み出した昭和の名棋士、升田幸三・実力制第4代名人にちなんで創設された賞。アマチュアにも受賞の可能性があるところも特徴です。

選考理由となった藤井七段の手「7七同飛成」は、藤井七段と石田直裕五段との公式戦で指されたものでした。藤井七段が不利と思われていた局面。強力な飛車を相手の歩と交換して相手玉に迫るという、まさに「肉を切らせて骨を断つ」一着でした。

あえて自らを窮地に追い込むような度胸満点の踏み込みと、その後に続く針の穴を通すかのような精密な寄せ。見ていた棋士も驚愕(きょうがく)の大技でした。間違いなく将棋界の歴史に残る一手は升田幸三賞にふさわしく、誰もが納得の受賞です。

あまりのインパクトに、あるテレビ番組では2回も、この「7七同飛成」を取り上げたほど。私も、この放送前夜の企画会議に参加したことがあります。

視聴者に、このすごさをどう分かりやすく伝えるのか。番組のディレクターや映像のプロたちが集まり、大盤の前で将棋用語を使って激論を交わす。傍らで見ていた私も、将棋がここまで浸透したことに感動したものです。

なお、その性質上、升田幸三賞は狙って取れるものではなく、私たちも日ごろは意識しません。しかし名誉ある賞だけに、自分の指した将棋で淡い期待を抱いたり、逆に夢が打ち砕かれたりするケースも実はあるのです。私も経験があります。

公式戦で新手を披露して勝ったとき、新研究の成果が炸裂(さくれつ)して会心の勝利を収めたとき。冗談交じりに仲間の棋士から言われることがあります。「この手、升田幸三賞を狙えるんじゃないですか?」。関心がないふりを装いますが、内心悪い気はしません。将棋大賞の選考日が楽しみになるのは、こんなときです。

しかし、現実は甘くありません。受賞がかなわないうえ、後日発売の将棋雑誌で選考記事を読むと、自分の名手?が話題にならず、賞にかすりもしていないことが判明します。ちょっとへこむのも、こんなときです。おそらく多くの棋士は経験があるはずです。

昨年度は「記録」と「記憶」に残る活躍だった藤井七段。勝っている棋士だけでなく、すべての人に可能性がある升田幸三賞。私もひそかに、気長に狙っています。人を感動させる将棋を指したいものです。

すぎもと・まさたか 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2019年2月に八段。01年、第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太七段の師匠でもある。

情報源:「驚愕の大技」 棋界の歴史に残る藤井七段の一手とは?:朝日新聞デジタル



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