棋士の4月はオフシーズン? 令和時代も藤井七段に期待:朝日新聞デジタル

ふむ・・・

2019年4月4日10時48分

イベントで、色違いのそろいのネクタイで登場する杉本昌隆八段(右)と藤井聡太七段(中央)の師弟。左は佐藤天彦名人=2018年12月9日、名古屋市中区、滝沢隆史撮影
イベントで、色違いのそろいのネクタイで登場する杉本昌隆八段(右)と藤井聡太七段(中央)の師弟。左は佐藤天彦名人=2018年12月9日、名古屋市中区、滝沢隆史撮影

杉本昌隆八段の「棋道愛楽」

新年度が始まりました。まっさらなシャツに袖を通す気分ですが、新しい元号も発表され、スーツや靴、身の回りの物すべてが新しくなった気持ちになります。5月からは「令和」元年。うーん、新鮮な響きです。新年度も本コラムをよろしくお願いいたします。

会社と同じように、将棋界も4月から新年度です。私は名人戦の順位戦で昇級したので、B級2組の棋士として新しくスタートします。

年度替わりの良いところは、何といっても気持ちのリフレッシュ。例えば、3月まで公式戦で10連敗していたとしても、すべてリセットです。いや、内部では連敗のカウントは続いていますが、少なくとも気持ちのうえではまっさらです。

逆に連勝記録は日本将棋連盟のウェブサイトで、前年度から継続して表示してくれます。藤井聡太七段の29連勝は年度をまたいで約半年間続いたのを覚えている方も多いでしょう。

新年度とはいえ、棋戦は1年を通して開始時期がまちまち。実は4月の棋士は「仕事が休み」と言ったらちょっと語弊があるかもしれませんが、少しリラックスしているのも事実。その理由は順位戦にあります。

棋士の命とも言われる順位戦の開幕は6月から翌年の3月まで。つまり、この時期は対局がありません。1~3月にクライマックスを迎えるので「棋士にお正月休みは永遠にない」と言われるほど。激しい戦いが終わり、安心を通り越して、しばらく抜け殻のようになる棋士(私もそうです)も珍しくありません。

そんな順位戦がない4月と5月は、棋士が少し気を休められる時期なのです。旅行などの長期休みは、ここで取ります。4月は棋士の遅れてきたお正月休み、オフシーズンとも言えます。世間の人が仕事を始める4月に休む。やはり、ちょっと特殊な職業ですね。

もっとも棋戦はこの時期にもあり、勝ち進んでいる棋士は年中忙しくしています。名人戦七番勝負は4月に始まります。佐藤天彦名人と豊島将之二冠のどちらが令和時代初の名人を名乗るのか、今から興味が尽きません。

研究熱心な若手は、この時期に棋士数人で集まり「合宿」をして勉強します。対局が少ない時期だからこそ研究して力をためる。ここで、勝つ人とそうでない人の差がつくのでしょう。

新年度の目標は常に「1年間全勝」。恥ずかしいので公言したことはありません。でも、きっと他の棋士も心の中は同じはず。棋士はみな負けず嫌いです。新年度の今だからこそ許される毎年の夢なのです。

藤井聡太七段は今春から高校2年生。クラス替えなどはあるのでしょうか? ちょっと気になります。昨年度も見事な活躍でしたが、今年度はどんな記録を残すのでしょう。将来「令和を代表する棋士」と言われるのでしょうか。期待は尽きません。

出会いと別れもある4月。棋士は急に上司や部下が増えることもありませんし、転勤もありません。しかし、引退された先輩棋士を見ると月日の流れを感じますし、新しく棋士になった新四段を見ると自分の若いころを思い出します。令和元年も、ぜひ将棋界にご注目ください。

すぎもと・まさたか 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2019年2月に八段。01年、第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太七段の師匠でもある。

情報源:棋士の4月はオフシーズン? 令和時代も藤井七段に期待:朝日新聞デジタル



ほぉ・・・