(大志 藤井聡太のいる時代)挑戦編:7 「雲の上」の名人、中学生が破った:朝日新聞デジタル

第11回朝日杯将棋オープン戦


2019年3月31日05時00分

佐藤天彦名人(右)に勝利し、インタビューに答える藤井聡太四段(当時)=2018年1月、名古屋市
佐藤天彦名人(右)に勝利し、インタビューに答える藤井聡太四段(当時)=2018年1月、名古屋市

「勝っちゃうかもしれません」。解説の木村一基九段(45)が、そう声を上げた。

2018年1月14日。朝日杯将棋オープン戦の本戦が、名古屋市で行われた。当時四段で中学3年の藤井聡太七段(16)が、佐藤天彦名人(31)を相手にリードを広げていた。

多くの棋士にとって、名人は「雲の上」の存在だ。他のタイトル戦の挑戦権争いでは予選を免除されることが多く、対戦することも難しい。藤井は、朝日杯の1次予選、2次予選で計6連勝。本戦では、シードの佐藤と共に1回戦に勝ち、準々決勝で初対戦が実現した。

戦型は、開始早々に派手な戦いになることもある「横歩取(よこふど)り」。佐藤が後手番の時に得意とする一方、藤井はこの時点で白星のない戦型だった。だが、佐藤は「藤井さんの経験うんぬんということは考えていなかった」と振り返る。「楽しみと、純粋に手ごわい相手だというのと、両方の気持ちがあった」

相性の悪い戦型だったが、藤井は過去の敗戦を糧にしていた。佐藤の攻め駒をジワジワと圧迫して、盤面中央で徐々に勢力を拡大。対局開始から2時間10分で、佐藤を投了に追い込んだ。中学生が、公式戦で初めて名人に勝った瞬間だった。

対局後、佐藤は「逆転の目を探して粘っていたが、的確に対応された」。そして、こう語った。「藤井四段は将棋界に現れたスター。これからもいい将棋を指していける相手だと思う」

藤井は奨励会に入る前、地元のラジオ番組に出て、「名人を超えたい」と言ったことがある。それについて感想を問われた藤井は「当時、小学生でしたので……」と苦笑しつつ、こう答えた。「今回は勝つことができたが、実力的にはまだ及ばない。これからも一層、がんばっていかなければ」

=敬称略

(村瀬信也)

◆毎週日曜に掲載します。

情報源:(大志 藤井聡太のいる時代)挑戦編:7 「雲の上」の名人、中学生が破った:朝日新聞デジタル



何連覇できるかな?