インフルの治療薬「ゾフルーザ」患者の70%余から耐性ウイルス

インフルの治療薬「ゾフルーザ」患者の70%余から耐性ウイルス | NHKニュース

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2019年3月27日 19時57分

インフルエンザの新しい治療薬「ゾフルーザ」を投与されたA香港型のインフルエンザ患者30人を調べたところ、70%余りに当たる22人から、この薬が効きにくい耐性ウイルスが検出されたことが国立感染症研究所の調査で分かりました。調査件数は多くないものの、専門家は現在のような使用を続けると、耐性ウイルスが広がるおそれがあるとして使用基準を見直すべきだと指摘しています。

塩野義製薬が「ゾフルーザ」という名称で製品化している「バロキサビル マルボキシル」は、去年3月から販売が始まった新しいタイプのインフルエンザ治療薬です。

1回の投与で効果が期待できるとされ、今月上旬までの5か月余りの出荷量は560万人分余りと、インフルエンザ治療薬として今シーズン最も多く使われたとみられています。

国立感染症研究所の今月18日までの分析では、ゾフルーザが投与されたA香港型のインフルエンザ患者30人のうち、22人から耐性ウイルスが検出され、調査件数は多くないものの、その割合は73%に上ることが分かりました。

また、ゾフルーザを服用していない83人の患者のうち、3人から耐性ウイルスが検出され、国立感染症研究所は、耐性ウイルスがヒトからヒトに感染した可能性があるとしています。

日本感染症学会、インフルエンザ委員会の委員で、けいゆう病院の菅谷憲夫医師は、現在のような使用を続けると耐性ウイルスが広がるおそれがあると指摘したうえで、「ゾフルーザは患者が重症化した時などに効果が高いと考えられ、通常の患者への処方は制限するなど、使用する基準を見直すべきだ」と指摘しています。

調査結果について塩野義製薬は「われわれが行った調査ではなくコメントする立場にないが、ゾフルーザを使うと薬が効きにくいウイルスが出ることは認識しており、会社としても、そうしたウイルスが出る割合やどれくらい別の人に感染するのかなどデータの収集と解析に取り組んでいる。情報がまとまり次第、速やかに結果を公表していきたい」とコメントしています。

患者を診察した診療所では

東京 足立区にある和田小児科医院では、例年と同じように多くのインフルエンザになった子どもたちが受診しました。

この診療所では今シーズンからゾフルーザの使用を始めたということで、ぜんそくなど持病があり、吸入する薬が使用できない患者や、ゾフルーザの投与を希望した患者の合わせて34人に対してゾフルーザを投与したということです。

その結果、ほとんどの患者は投与して1日以内に熱が下がるなど、比較的高い効果がみられた一方で、投与後に再び発熱を訴えた患者が2人いたということです。

このうち、11歳の男の子は、ことし1月中旬に39度4分の熱が出て受診し、インフルエンザと診断されました。ぜんそくがあったため、ゾフルーザを投与したところ翌日には平熱まで下がりましたが、3日後に再び37度8分の熱が出て、その後、回復しました。

薬が効きにくいと感じたということで、診療所の医師はゾフルーザの投与によって耐性ウイルスが出た可能性が否定できないと考えています。

和田小児科医院の和田紀之院長は「ゾフルーザは1回投与で効果があるというすぐれた特徴があり、使いやすく、すばらしい薬だと思う。一方で、耐性ウイルスが出やすい傾向があることは聞いていたため、誰にでも投与することは避けていた。投与したあとに異変がないか、経過をしっかりと観察することが大切だと感じた」と話しています。

インフルエンザ治療薬の現状

国内でインフルエンザの治療に使われる薬は、ゾフルーザを含めて主に5種類あります。

近年、多く使われてきたタミフルは、1日2回、5日間服用します。

リレンザとイナビルは粉末の薬剤を口から吸入するタイプで、リレンザは1日2回で5日間、イナビルは1回、吸い込みます。

ラピアクタは点滴薬で、血管に点滴で投与します。

これら4種類はいずれも、インフルエンザウイルスが増えたあと、細胞の外に放出されるのを妨げることで治します。

そして、塩野義製薬が新たに開発したゾフルーザは、去年の秋からことしにかけてのインフルエンザのシーズンで初めて本格的に使用されました。

ゾフルーザは、錠剤を1回服用することで効果が出るとされ、ほかの薬とは作用のメカニズムが異なり、ウイルスの増殖を抑えるとされています。

厚生労働省のまとめでは、ことし3月上旬までのおよそ5か月間に全国の医療機関に供給されたゾフルーザはおよそ562万人分で、タミフルのおよそ466万人分の1.2倍になりました。

このためゾフルーザは今シーズン、最も多く使用されたインフルエンザ治療薬だったと見られています。

国立感染症研究所の調査結果とメカニズム

ゾフルーザについては、塩野義製薬が販売前に国の承認を得るために臨床試験を行っていて、A香港型インフルエンザ患者に投与した場合、耐性ウイルスは12歳以上ではおよそ11%、12歳未満の子どもではおよそ26%で検出され、耐性ウイルスが比較的、出やすい傾向があることがわかっていました。

またこの試験で、耐性ウイルスは、耐性のないウイルスよりも増殖能力が低下しているとされ、別の人に感染して流行する可能性は低いと推測していました。

国立感染症研究所が実際に投与した状況を把握するため今月18日までにウイルスを分析した結果をまとめたところ、ゾフルーザが投与されたA香港型インフルエンザ患者30人のうち22人からゾフルーザの耐性ウイルスが検出され、割合にすると73%になりました。

ゾフルーザが投与された「H1N1型」のA型インフルエンザ患者では15人のうち2人から検出され、割合は13%でした。

また、耐性ウイルスを詳しく分析したところ、増殖能力は低下しておらず、耐性のないウイルスと比べて増える能力はほぼ変わらないことがわかったということです。

さらに、ゾフルーザを服用していない83人の患者のウイルスを解析したところ、3人から耐性ウイルスが検出され、国立感染症研究所は、耐性ウイルスがヒトからヒトに感染した可能性があるとしています。

このうち神奈川県の事例では、先月、生後8か月の子どもが受診してインフルエンザと診断され、ゾフルーザを服用したことがなかったものの、ウイルスを分析すると、耐性ウイルスだったということです。この子どもの兄弟が前の日にインフルエンザでゾフルーザを服用していて、国立感染症研究所は兄弟の体内でできた耐性ウイルスが感染した可能性があるとしています。

塩野義製薬の臨床試験では、耐性ウイルスに変化したケースでは、発熱などの症状が出る期間が、自然に治癒するよりも短かったものの、耐性ウイルスが含まれない場合より1.3倍から1.9倍ほどの長さになったということです。

これまで多く使用されてきた別のインフルエンザ治療薬のタミフルでは、A香港型の患者で耐性ウイルスが出ることはほとんどなく、比較的、耐性ウイルスが出やすいとされる「H1N1型」のA型インフルエンザ患者でも0.3%から4%程度とされています。

耐性が現れやすい理由

国立感染症研究所は、耐性ウイルスができやすい詳しい原因はわかっていないとしながらも、ゾフルーザが高い効果をもつ作用メカニズムそのものに関係している可能性があるとみています。

これまで使われてきたタミフルなどは、インフルエンザウイルスが細胞の中で増えて、細胞の外に放出されるのを妨げることで治療します。

そのため、感染した人の体内で、ウイルスがある程度増えることは避けられません。

一方、ゾフルーザは、細胞の中でウイルスが増えることを妨げるため、感染しても早い段階で服用すればウイルスはあまり増えないとされています。

しかし、ウイルスが増える時は、ウイルスが変化しやすいタイミングでもあり、薬に耐性をもつウイルスを生み出しやすいと考えられるということです。

今季のインフルエンザ

年の秋からことしにかけての今シーズンのインフルエンザは、1月下旬に、1医療機関当たりの1週間の患者数が、統計を取り始めた平成11年以降では、最も多くなるなど大きな流行となりました。

今月17日までに病院を受診した患者の累計は1155万人余りと推計されています。

分析がまとまった最新の5週間の状況では、A香港型の患者が76%、2009年に新型インフルエンザとして流行したH1N1型が22%、B型が2%などと、A香港型が多いことが特徴です。

情報源:インフルの治療薬「ゾフルーザ」患者の70%余から耐性ウイルス | NHKニュース


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