師匠、昇級かけた激しい手 想像した「藤井七段なら…」:朝日新聞デジタル

ふむ・・・


2019年3月19日10時50分

C級1組順位戦で昇級を決めた杉本昌隆八段=2019年3月5日、東京都渋谷区、村上耕司撮影
C級1組順位戦で昇級を決めた杉本昌隆八段=2019年3月5日、東京都渋谷区、村上耕司撮影

杉本昌隆八段の「棋道愛楽」

2月22日、「七段昇段後公式戦190勝」の規定により八段に昇段しました。一つ一つの勝ち星を13年かけて積み上げた、いわば勤続年数の表彰。「藤井聡太七段の師匠が昇段」と大きく報道されて、ちょっと気恥ずかしくもありました。

さて、8勝1敗で4人が並んだ第77期C級1組順位戦の最終局が3月5日にありました。師弟同時昇級の可能性を残した大一番です。私は東京、藤井七段は大阪で対局しました。昇級は会社でいえば、役職が一つ上がるようなもの。ライバルを負かし、地位、名誉を自分の力でつかみ取る戦いです。

昇級枠は二つ。4人のうち、順位の差で私は2番手、藤井七段は4番手。つまり私は自分が勝てば良いものの、藤井七段は自分が勝ったうえで、上位3人のうち2人が負けなければ昇級できません。

師弟といえど、熾烈(しれつ)な戦いにお互いがピリピリしても不思議ではありません。ですが、この対局の2日前に藤井七段と会ったとき、全くいつもと変わらぬ温和な雰囲気。目先の順位戦ではなく、もっと先を見据えているように感じて、ちょっと安心しました。

私の相手は千葉幸生七段。今期、竜王戦3組で優勝した強敵です。前局の船江恒平六段との対局の前日、私は奨励会三段の弟子に最新形を教わりました。今回は大阪に住む別の奨励会の弟子を名古屋に呼び寄せ、深夜まで局面の追究を続けました。この数カ月は受験生のような生活で、これだけ研究に時間を費やしたのは若いころを含めても記憶にありません。今期、自分の感覚が活性化したのは弟子たちのおかげ。私の自慢の弟子は藤井七段だけではないのです。

対局の夕食休憩時、局面を有利に導く一つの激しい変化が浮かびました。しかし、それを選んでしまうと後戻りはできません。ちゅうちょしましたが、藤井七段なら必ずこう指すはずだ、と踏み込んだのが功を奏しました。

私が勝った約10分後、順位が3番手でライバルの船江六段も勝利。この瞬間、藤井七段の昇級がなくなり、師弟同時昇級も消えました。残念ですが、藤井七段は必ず近いうちに昇級してくれるでしょう。

50代でC級1組からB級2組への昇級は、平成になってからは初めて。勢いのある若手が多く、9割勝たなくては昇級できないこのクラス。仲間内で「C級に落ちたら、もうB級には戻れない」と言われていた厳しい戦いでした。

ピークは20代とも言われる棋士の世界。50代の私の昇級は奇跡とも言われています。

しかし、強くなりたい、諦めない気持ちに、年齢は関係ありません。年を重ねるのは怖くない。成長や学びは若い人だけの特権ではない。そう思えたのが今期の勝因です。次の目標はいつの日か、B級で藤井七段とともに昇級を争うことです。

すぎもと・まさたか 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2019年2月に八段。01年、第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太七段の師匠でもある。

情報源:師匠、昇級かけた激しい手 想像した「藤井七段なら…」:朝日新聞デジタル



ほぉ・・・