試験会場をコントロールした手口とは 米セレブ不正入学:朝日新聞デジタル

ロリ・ロックリンは「フルハウス」のベッキー役。


2019年3月15日15時03分

米ビバリーヒルズで2月28日に開かれたイベントで、報道陣を前にポーズをとるロリ・ロックリン被告(中央)と娘2人=AP
米ビバリーヒルズで2月28日に開かれたイベントで、報道陣を前にポーズをとるロリ・ロックリン被告(中央)と娘2人=AP

米国で名門大学を巻き込んだ大規模な不正入学事件が明らかになった。依頼した親として起訴された中には、著名俳優のロリ・ロックリン、フェリシティ・ハフマン両被告が含まれ、大きな関心を集めている。裁判の関連資料などから、2人のケースを通じて手口を読み解いてみた。

事件の中心にいるのが、カリフォルニア州で進学指導会社を経営していたウィリアム・シンガー被告だ。マサチューセッツの連邦地検などによる12日の会見によると、捜査の端緒は全く関係ない事件の取り調べで出た情報だった。1年余り前に捜査が始まり、シンガー被告は18年9月ごろ、刑の軽減のため捜査当局との司法取引に応じて実態を証言。捜査当局はシンガー被告と依頼した親らとの電話をモニターし、証拠を積み上げた。

トレーニング写真でボート選手に化ける

コメディードラマ「フルハウス」に出演していたロックリン被告と夫のファッションデザイナー、モッシモ・ジャヌリ被告が手を染めたのは、長女を大学のスポーツ推薦枠に不正に潜り込ませる手法だ。

「少し心配があり、ゲームプランを完全に理解して、成功に向けたロードマップをはっきりさせるために話し合いたい」

ジャヌリ被告は16年4月、シンガー被告にこんな電子メールを送った。長女は南カリフォルニア大学(USC)への進学を希望したが、シンガー被告は「学業成績を見ると、合格ラインの少し下」と回答。賄賂を使い、長女をボートレースの舵手(だしゅ)として推薦入学を目指す計画が動き出した。だが、長女はボートレースを本格的にしたことはなかったという。そこで、ボートをこぐ動きをトレーニングする「ローイング・エルゴメーター」と呼ばれる機器を使っている写真を撮り、選手としての「証拠」にした。

ここで登場するのが、USC体育部門の上級副主任だったヘイネル被告だ。同被告は同年10月、ジャヌリ被告らの長女の選考資料を大学のスポーツ選考小委員会に提出。この場で入学を認める基本方針が決まった。ジャヌリ被告はこれを受け、5万ドル(約560万円)をヘイネル被告側に支払ったという。また、シンガー被告が謝礼を不正に受け取る窓口としている慈善団体に20万ドル(2200万円)も振り込んだ。

長女は最終的にUSCに入学が認められ、ジャヌリ被告とロックリン被告は17年、次女についても同様の手口で不正入学を依頼。次女もエルゴメーターを使う写真を撮り、ヘイネル被告を通じて申請。やはり入学を認められたという。その際、ロックリン被告はシンガー被告に対し、ハイファイブの絵文字付きで「素晴らしいニュース!」とのメールを送った。

ただ、次女のケースをめぐっては、次女が通う高校で授業選択や進路指導の助言を行うガイダンスカウンセラーが「ボート競技をしていないはずだ」と不審がる一幕もあったという。

このカウンセラーはジャヌリ被告と話し合いを持ち、直後にヘイネル被告が「高校で何か質問されたら、(スポーツ奨学金を受け取る特待生ではなく)入学後に入部を目指すと答えてほしい。高校に怒鳴り込むようなことをしたらすべてがおじゃんになる」とのメッセージをシンガー被告の留守番電話に残したという。

こうした大学の運動部の推薦枠を使った不正はUSCのほか、スタンフォード、エール、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、ジョージタウン、ウェークフォレスト、テキサスの7大学で行われ、監督や関係者9人が起訴された。親がシンガー被告を通じて監督らに支払った賄賂は2500万ドル(約28億円)に上るという。ヘイネル被告が管理する大学口座には、親側から14~18年の間に130万ドル(約1億4千万円)が振り込まれていたという。

米国の大学では運動部が献金集めや知名度アップなどで大きな役割を果たすため、大学側は選手集めに力を入れる。起訴状によると、ウェークフォレストは約128、ジョージタウンは約158のスポーツ枠があるという。アメリカンフットボールやバスケットボールなどは選手集めの注目度が高く、不正をしにくいが、今回の事件では水球やボート、バレーボールなどあまり目立たないスポーツが狙われたという。

試験監督が代わりに解答

人気ドラマ「デスパレートな妻たち」への出演などで知られるハフマン被告は、大学が合否を判断する材料の一つとする全米共通の大学進学適性試験(SAT)の試験を不正でかさ上げする手口を使った。

シンガー被告の捜査当局への供述によると、同被告は17年12月、ハフマン被告と夫で俳優のウィリアム・メイシー氏と会い、シンガー被告の「コントロール」する試験会場で受験すれば、別に手配した試験監督が試験後に答案を書き直すことができると説明。ハフマン被告らはこの手口で進めることに合意したという。

この手口では、受験者は「学習障害がある」などと偽って、試験の事務局に試験時間延長を申請する。この申請が認められれば通常1日で終わる試験を、ほかの受験者とは別の会場で個別に2日かけて受けることができるようになる。この決まりを悪用し、シンガー被告の指定する試験会場に受験場所を移すという。

ハフマン被告は同年10月、シンガー被告の助言を受けて長女の受験で試験時間の「100%延長」を手配し、認められた。その上で、受験場所を本来の長女が通う高校から、シンガー被告が買収した管理者がいるカリフォルニア州の「西ハリウッド試験センター」に変更して受験。答案に不正を行った。

この結果、長女の成績は1年前の模試から400点高い1420点に達したという。ハフマン被告はこれを受け、シンガー被告の慈善団体に1万5千ドル(約170万円)を支払った。

ハフマン被告は18年1月、次女の入学選考での不正についてシンガー被告と電話で相談した。この電話ではSATは複数回受験が可能なことが問題になった。

ハフマン被告 「前回と同じ手法で頼みたいけれど、次女は必ず試験を2回受けると言うと思う。それは可能?」

シンガー被告 「まずは1回目を何とかしよう。1回目で基礎ラインが決まる。もし彼女が自力で1回目を受けて得点が良くなければ、2回目でアップできる幅は限られてくる」

ハフマン被告 「1回目で良い点が出ても、次女は『もう一度受ける』と言うと思う。2回受けると言うことを前もって関係者に伝えておきたい」

シンガー被告らはその後も謝礼額などについて話し合いを重ねたが、ハフマン被告は最終的に次女の試験では不正をすることを見送ったという。

広がりどこまで… 「761件手がけた」

会見したレリング連邦検察官は「捜査は継続中」と語り、今後さらに事件が広がる可能性を示唆した。

真偽ははっきりしないが、シンガー被告が18年6月、依頼を検討している親に対し、スポーツ推薦枠の悪用についてこんな説明をした記録が残っている。「家族が求めるのは、確実に入学できるとの保証だ。私はこの方法で761件手がけた」

シンガー被告の発言が事実とすれば、スポーツ推薦入学制度に何らかの見直しが行われる可能性がある。全米大学体育協会(NCAA)は12日、「困惑すべき起訴内容で、高等教育機関すべてにとっての懸念となるだろう。指摘されている内容を吟味し、NCAAの規則に違反していないか見極める」との声明を出した。

事件に対しては「セレブの不正」と怒りの声が上がるが、一方で「入学選考の現状を見れば、こうした事態が起きても不思議ではない」との見方もある。

米国の大学では、富裕層の子女が優遇されているのは「公然の秘密」だ。図書館や研究棟の建設資金などとして多額の献金をした寄付者の子女は、「学長推薦」などの形でほかの受験生よりも優遇される。全米から超エリートが集まるトップエリート校の場合は、学業成績ではほとんど差が出ないため、こうした要素が決め手になりがちだ。「大学に多額の寄付をするのと、監督に賄賂を送るのは何が違うのか」といった冷めた指摘もある。

ただ、レリング検察官は12日の会見で悪質性をこう強調した。

「起訴された親たちは、正当な方法で入学選考に有利な条件を子どもたちに与えられるのにもかかわらず、不正をし、システムを不法に操ろうとした。ここで言っているのは、大学に建物を寄付するとかいう話ではない。ごまかし、詐欺なのだ」(ニューヨーク=鵜飼啓)

情報源:試験会場をコントロールした手口とは 米セレブ不正入学:朝日新聞デジタル


次女オリヴィアさんとロリ・ロックリン
次女オリヴィアさんとロリ・ロックリン

現在、全米を騒がせている名門大学への裏口入学騒動。現地時間12日に『デスパレートな妻たち』の女優フェリシティ・ハフマンを含む不正入学に関わった50人が起訴された。そのうちの1人でテレビドラマ『フルハウス』や『フラーハウス』で知られる女優ロリ・ロックリンは翌13日にアメリカに戻り、逮捕された。『CNN』などが伝えている。

アメリカは日本よりも学歴社会の傾向があり、名門大学を卒業することは大きなステータスとなる。現地時間12日に女優フェリシティ・ハフマンや女優ロリ・ロックリン、富裕層の親や関係者50人が子供をイェール大学、スタンフォード大学、南カリフォルニア大学などに裏口入学させたとして起訴された。

フェリシティ・ハフマンは長女ソフィアさん(18)のSAT(大学進学適性試験)のスコアを不正に高くするために1万5000ドル(約167万円)を支払ったとのこと。また、ロリ・ロックリンと夫でファッションブランド「モッシモ」の創始者モッシモ・ジャヌリは娘のイザベラさん(20)とオリヴィアさん(19)を南カリフォルニア大学(USC)に入学させるために50万ドル(約5580万円)を支払っていたという。娘2人はUSCのボート部枠で入学したが、実際は2人ともボート部ではなかったとのことだ。

フェリシティ・ハフマンは現地時間12日の逮捕後に保釈金25万ドル(約2790万円)を支払い、海外に行くことができないようにパスポートを提出して釈放された。フェリシティがダウンタウンLAの裁判所をあとにする姿を目撃されており、現地時間29日にボストンの裁判所で予備審問が行われるという。

一方のロリ・ロックリンは撮影のためにカナダのバンクーバーにいたことから緊急でアメリカに戻り、現地時間13日にロサンゼルスで逮捕されている。夫モッシモ・ジャヌリは現地時間12日に100万ドル(約1億1100万円)を支払って釈放され、パスポートを提出していた。ロリも夫と同様に保釈金は100万ドルであるが、バンクーバーでのプロジェクトが終了する12月にパスポートの提出を命じられている。

ロリの次女オリヴィアさんは登録者数193万超の人気YouTuberとして活躍。大学生活を送りながらファッションやメイクについて動画を投稿しており、『フルハウス』『フラーハウス』で夫婦役を演じていた母ロリとジョン・ステイモスもゲストで動画に登場したことがあった。

なお、今回の裏口入学では大学受験の指導を行う「The Key」のCEOウィリアム・リック・シンガーが中心となっており、チャリティ財団を装って親から金を受け取っていたと見られている。

情報源:『フルハウス』女優ロリ・ロックリン、大学裏口入学で逮捕 保釈金1億円超 – ネタりか

情報源:【イタすぎるセレブ達・番外編】『フルハウス』女優ロリ・ロックリン、大学裏口入学で逮捕 保釈金1億円超 | Techinsight



ロリ・ロックリンのTwitterInstagramは削除されてるっぽい。
Facebookのページ(個人用じゃない)は残っているが・・・