誰もが思った「作戦失敗?」、藤井七段の新感覚の一手:朝日新聞デジタル

ふむ・・・


第12回朝日杯将棋オープン戦の連覇を喜ぶ杉本昌隆八段(左)と藤井聡太七段=2019年2月16日午後、東京・有楽町、越田省吾撮影
第12回朝日杯将棋オープン戦の連覇を喜ぶ杉本昌隆八段(左)と藤井聡太七段=2019年2月16日午後、東京・有楽町、越田省吾撮影

杉本昌隆八段の「棋道愛楽」

藤井聡太七段の連覇に注目が集まった朝日杯将棋オープン戦(朝日新聞社主催)の準決勝、決勝が2月16日に東京で指されました。

羽生善治九段以来の連覇は? ファンが待望する渡辺明二冠との決勝は? 今年も会場には多くの将棋ファンや報道陣、棋士が詰めかけました。私も控室で対局を見守ります。同時対局の準決勝は、まず渡辺二冠が千田翔太六段に勝利。藤井七段は第1回朝日杯優勝の行方尚史八段の矢倉を熱戦の末に破りました。

永世竜王の称号を持つトップ棋士相手に、どんな戦いぶりを見せるのか。渡辺二冠の作戦は雁木(がんぎ)囲いから棒銀という力戦。中盤で藤井七段が指した「5五角」に控室がどよめきました。

数手後に歩で追われ、従来のセオリーにはない手です。渡辺二冠は手順に好形を作り上げ、対照的に藤井七段の金銀は連結がなくバラバラ。「この手はどういう意味だろう?」「藤井七段の錯覚?」。控室には佐藤康光九段や行方八段、千田六段ら棋士が何人もいましたが、みな藤井七段の指し手の真意を測りかねていました。

自陣を固めて先に攻める展開は、渡辺二冠がもっとも得意とするところです。誰もが藤井七段の作戦失敗と思ったことでしょう。しかし、当の藤井七段だけは違いました。

一見、悪形に思えた藤井陣のバランスが良く、渡辺二冠の攻めが急所に届きません。満を持した反撃に、局面は完全に藤井ペース。渡辺二冠は苦悶(くもん)の表情を浮かべます。藤井七段は角使いの名手。あの「5五角」は藤井七段にしか見えない新感覚の一手だったのかも知れません。

控室では人工知能(AI)が藤井七段の終盤のわずかなミスを発見していました。人間では見逃すレベルですが、藤井七段はそれに気づいており、対局後の感想戦で反省していました。その深い読みに渡辺二冠が脱帽した瞬間でもありました。

私は中盤の「5五角」のことを聞きました。ごく自然に読み筋を語る藤井七段。新しい感覚を習得し、また一つ覚醒したのかもしれません。弟子に対する頼もしさを感じると同時に、同じ棋士として恐ろしささえ感じたものです。

対局後、夜の新幹線で地元の愛知に戻るという藤井七段。一緒に帰ろうかとも考えましたが、私はテレビ局での仕事が残っており、別々に帰ることに。「そうなんですか」とあどけない笑みを浮かべる藤井七段の表情は、16歳の高校生に戻っていました。

すぎもと・まさたか 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2019年2月に八段。01年、第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太七段の師匠でもある。

情報源:誰もが思った「作戦失敗?」、藤井七段の新感覚の一手:朝日新聞デジタル



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