【5時から作家塾】気配りと効率性に海の向こうの社長も惚れた ラブコール受けた日本の梱包材- SankeiBiz(サンケイビズ)

動画に出てくるのはアート引越センター、一部引っ越しのサカイ。


2019.1.24 07:00

「日本の梱包材」との出会い

2014年の初め、オランダの南部で急成長中の引っ越し会社を営むリック・ディテレン氏は、フェイスブックで同業者がシェアしていたある動画をクリックした。「Leave it all to the movers(引っ越し業者に全ておまかせ)」というタイトルのついたその動画は、まずとある日本の家の中が映され、「今日引っ越しですか? なんの荷造りもしていないじゃないですか! もう引っ越しトラックが来てしまいますよ!」という少々わざとらしい英語のナレーションで始まる、日本の至れり尽くせりの引っ越しサービスを紹介するものだった。

フルサービスと利用者満足度で急成長を遂げている引っ越し会社リック・ディテレン(公式サイトより)
フルサービスと利用者満足度で急成長を遂げている引っ越し会社リック・ディテレン(公式サイトより)

その後「新居に汚れを持ち込まないために、まず家の中にあるもの一つひとつをきれいにすることから始める」「壁や床を傷めないために、まずプロテクターを張り巡らす」「新居に引っ越し荷物を搬入する際は、床を絶対に汚さないように新しい靴下に履き替える」などと、きめ細やかな日本の引っ越しサービスの説明を続ける動画を、オランダとはずいぶん違うものだなと思って観ていたディテレン氏は、やがて動画の中の業者が家具を梱包する際に使用している、魔法のように伸縮する梱包材に目を奪われた。

のちに株式会社アサヒ(本社:東京都足立区)の「ハイパット(現在『フィットカバー』に商品名を変更)」であることが判明するこの梱包材は、たっぷりの綿で厚みを持たせたキルト生地を特殊な技術で筒状に縫製したもので、どんな家具にも上からかぶせるだけでぴったりとフィットして上下に余った部分が縮んで閉まるというもの。

アサヒ「フィットカバー」(アサヒ公式サイトより)
アサヒ「フィットカバー」(アサヒ公式サイトより)

「ヨーロッパ中の引っ越し業者が欲しがるはず」

当初はぜひ自分の会社の引っ越し作業に使いたいと考えたという。が、すぐに「こんな素晴らしい商品ならばヨーロッパ中の引っ越し業者が欲しがるだろう」と確信し、「できることなら自分が輸入代理店となって普及させたい」という野望を持った彼は、ちょうどその直前に日本から彼の会社の近所に移住していた筆者を仲介に立て、製造元のアサヒに熱烈なラブコールを開始した。そしてその期間中、同様にインターネット上で知ったアートコーポレーション株式会社の特許製品「エコ楽ボックス(食器ケース)」にも目をつけ、同社にもコンタクトを開始。昨年念願の初来日を果たし、両社を訪問する機会を得た。

「エコ楽ボックス(食器ケース)」(アートコーポレーション公式サイトより)
「エコ楽ボックス(食器ケース)」(アートコーポレーション公式サイトより)

「日本らしい」両製品の魅力とは

昨今の日本ブームを尻目に、一切日本に興味も縁もなかった同氏の心を打ちぬいた日本の商品の魅力とは何だったのか、今回改めて聞いたので以下にまとめたい。

1.ユニークさ

「フィットカバー」も「エコ楽ボックス」も、類似のものを見たことがない。引っ越しの時の家具や食器の梱包が大変な手間であることは世界のどこでも変わらない事実なのに、それに対するソリューションを形にしたものを初めて見た。

2.サステナビリティー

なんといっても、使い捨てでなく繰り返し使える環境への優しさはポイントが高い。通常オランダの引っ越しでは、家具はそのまま運ぶか、梱包用の布で巻いた上から伸縮性のあるプラスチックのフィルムをかける。そのまま運べばある程度のダメージは避けられないし、梱包用の布は再利用するがフィルムはもちろん使い捨てで、包むものが大きいだけに一回の引っ越しで大量に利用する。食器を一つ一つ包む紙も相当な量になる。これが避けられるだけでもコストと資源の消費と廃棄物をカットできる。また日本製で品質が高く、消耗しづらいので長く使える。

3.効率性

これらの製品を自社で使い始めて、梱包に費やす時間が短縮され、同じスタッフの数で一日にこなせる引っ越しの数が倍になった。

4.安全性

梱包に使い捨てのプラスチックのフィルムを使えば、当然引っ越し先でそれを開封するために刃物を使うので、けがをする可能性も高まる。エコな梱包材の使用で従業員の安全性も高まる。

「日本らしい繊細な『気遣い』が形になったようなものだと思う。梱包される家具や食器、家への気遣いが第一義だろうが、同時にそこに環境、引っ越しスタッフ、顧客、経営などへの気遣いが詰まっている」と言ったディテレン氏は、「やっぱりこんなものを他で見たことはなかった」と繰り返した。

日本の会社とのコミュニケーションに難しさは?

「日本の会社とやり取りする中で困難はなかったか?」と尋ねた筆者に同氏は、「両社ともいつも確実で誠実な対応をしてくれるし、日本を訪問した時もとても親切に、寛容に対応してもらい、素晴らしい体験になった。問題があったとすれば引っ越し業の方が忙しすぎて連絡をスピーディーに取れなかった自分だ(現在梱包材の輸入販売は、別会社「DuVeMa」を設立し鋭意PR中である)」と答えた。

しかし仲介として連絡のサポートをした筆者としては、日本の会社に面識のない海外のビジネスマンが突然英語で問い合わせた場合すぐには信用を得られないこと、日本語とオランダ語というマイナーな言語同士の一定レベル以上の通訳者を見つけるのが簡単ではなかったこと、彼が日本の会社に何か質問をした場合、上層部の許可を得たり会社としての決定をしたりする必要がありどうしても回答に時間を必要とする場合がある日本のビジネス文化を理解するのに筆者の説明が必要だったことなどを知っている。

メールや翻訳ツールで海外のビジネス関係者と「連絡」は取りやすくなっても、文化のギャップを越えて理解しあう「コミュニケーション」を取るにはやはりまだ「人」の力が必要であることを実感した。

現在両社と関税や輸送費なども考慮した上で、価格や条件など細部の交渉の準備を進めているというディテレン氏。ヨーロッパ中の引っ越しを日本の「気遣い」で包む日は近いかもしれない。

情報源:【5時から作家塾】気配りと効率性に海の向こうの社長も惚れた ラブコール受けた日本の梱包材- SankeiBiz(サンケイビズ)




ほぉ・・・