捨てられた茎で…「偶然の発見」から生まれた芭蕉和紙:朝日新聞デジタル

芭蕉・・・


開発した芭蕉和紙。透明度が高く、裏側の明かりが透けている(福垣内准教授提供)
開発した芭蕉和紙。透明度が高く、裏側の明かりが透けている(福垣内准教授提供)

捨てられる植物の茎を、紙として商品化できないか――。紙産業が盛んな愛媛県で多年草「バショウ」の茎を使った「芭蕉(ばしょう)和紙」の研究が進んでいる。中心となっているのは、愛媛大学社会共創学部産業イノベーション学科の「紙産業コース」の学生だ。

バショウは愛媛県の宇和島市や大洲市など、南予地域に自生している。家の庭に植えられていることも多く、盆の時期になると長さ30センチ以上の葉が家の棚飾りに使われる。

制作した芭蕉和紙のタペストリー。透明度が高く、向こう側の明かりが見える=福垣内准教授提供
制作した芭蕉和紙のタペストリー。透明度が高く、向こう側の明かりが見える=福垣内准教授提供

ただ、茎は捨てられてきた。「これを有効活用できないか」。南予出身の学生が昨年、農学博士で紙産業について教えている准教授の福垣内暁(ふくがいちさとる)さん(45)に相談した。

南予地域は和紙の産地。試しにバショウの茎で和紙を作ると、厚さ0・05ミリという極薄の和紙ができた。フィルムのような手触りで、力を加えるとパリパリと音がする。バショウの茎は他の植物より繊維が細いため、繊維をナノ単位(1ミリの100万分の1)まで細かくした新素材「セルロースナノファイバー」を従来より簡単に作れた。

開発した透明度の高い芭蕉和紙=福垣内准教授提供
開発した透明度の高い芭蕉和紙=福垣内准教授提供

完成した和紙はティッシュや髪の毛の直径より繊維が細いが破れにくい。色づけしても濁らないほど鮮やかで、ペンで文字を書いてもにじまない。福垣内さんは「偶然の発見だった。若い学生の着眼点が良かった」と振り返る。

この「芭蕉和紙」の商品化を目指し、昨年冬にビジネスコンテストに出場して入賞した。和紙インテリアを製作している南予の企業にコラボを呼びかけ、住民らに作り方を教える活動も始めた。福垣内さんは「かつてほど和紙産業に勢いがないので、新しい素材で伝統産業の役に立ちたい」と期待を込める。

芭蕉和紙の商品化を目指してデザインの案などを考える学生ら=松山市
芭蕉和紙の商品化を目指してデザインの案などを考える学生ら=松山市

課題もある。バショウの繊維が細過ぎて通常のすき方では作るのが難しく、今は約20センチの大きさでしか作れない。大量生産にも向いていないが、福垣内さんは「だからこそ手すきの風合いを残し、手作りの商品に生かして付加価値を高めたい」と話す。

活動の目標や商品のコンセプトを決めるために今年10月から有志の学生が外部のデザイナーや県職員とワークショップを始めた。デザイナーや県産業技術研究所の職員からはマーケティングやデザインについて学んでいる。

芭蕉和紙の商品化を目指してデザインの案を考える学生ら=松山市
芭蕉和紙の商品化を目指してデザインの案を考える学生ら=松山市

紙産業について学びながらプロジェクト代表を務める森和佳奈さん(20)は「加工していないのに透けてすごいと思った」と参加したきっかけを話す。「そのすごさをどう消費者に知ってもらい、商品に生かすか考えている。芭蕉和紙を日常の生活に根ざす素材にしたい」と話した。(藤井宏太)

情報源:捨てられた茎で…「偶然の発見」から生まれた芭蕉和紙(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュースコメント

情報源:捨てられた茎で…「偶然の発見」から生まれた芭蕉和紙:朝日新聞デジタル


ほぉ・・・