“災害時の避難所には「TKB」” 学会が提言

“災害時の避難所には「TKB」” 学会が提言 | NHKニュース

トイレ・キッチン・ベッド


“災害時の避難所に「TKB」が必要だ”。こうした提言を専門家の学会がまとめました。「トイレ・キッチン・ベッド」の略で、災害関連死を防ぐために避難所の環境改善を進める必要を訴えています。

医師や災害の専門家で作る避難所・避難生活学会は9日、千葉県松戸市でシンポジウムを開き、国や自治体などに対して、避難所の環境の抜本的な改善を求める提言をまとめました。

近年、災害時の避難生活による体調の悪化などで亡くなる「災害関連死」が問題になっていますが、提言では、関連死の主な原因は、不便で不潔なトイレや冷たい食事、床での雑魚寝などといった避難所の環境にあるとしています。

こうした状況を改善するため、避難所では快適で十分な数のトイレや温かい食事、それに簡易ベッドを提供することを標準とすべきで、そのためにはトイレ・キッチン・ベッド=「TKB」の準備をふだんから進める必要があるとしています。

避難所・避難生活学会の会長で新潟大学の榛沢和彦医師は「避難所の生活をできるだけ日常生活に近づけることが被災者の健康の維持になる。災害関連死を減らすために『TKB』の改善が欠かせない」と話していました。

避難所の「TKB」の現状 必要なことは?

避難所・避難生活学会が改善が必要だとする「TKB」。現状と目指すべき方向について次のように説明しています。

【T=トイレ】
避難所でトイレの数が不足していたり汚かったりすると、水や食事を控える人が増えるということです。

これが健康上のリスクを高めることにつながるため、快適で十分な数のトイレを導入することが欠かせません。

【K=キッチン】
避難所では、衛生上の問題からパンやお握り、弁当など、冷たくて栄養の偏った食事が出ることが多くなります。

被災者が体調を崩すほか、精神的な負担につながるということです。このため、キッチン・台所を利用して温かく、栄養のとれる食事を出すことが必要だとしています。

【B=ベッド】
避難所では、段ボールベッドなどの簡易的なベッドが一部で使われ始めています。

ベッドを使えば、寝ているときに床から舞うほこりを吸い込みにくいため衛生的な環境を保てるほか、床から伝わる冷たさを防いだり、いす代わりに腰掛けて使えたりする利点もあります。

毎日同じパンとおにぎりが…

学会の提言で課題とされた「冷たい食事」。

西日本豪雨で大きな被害を受けた岡山県倉敷市真備町の避難所では、ほぼ毎日、同じ種類のパンとおにぎりが出されていました。

真備町の森脇敏さんは、今月初めまで避難生活を余儀なくされていました。

このうち、10月までは小学校に設けられた避難所で生活していましたが、そこではおよそ4か月間、ほぼ毎日同じような冷たい食事が続いたといいます。

ボランティアや地域の人による炊き出しもありましたが、それ以外の日は、朝は昆布とさけ、明太子のおにぎり、昼はメロンパンやレーズンパンなど3種類のパン、夜は弁当の繰り返しで、当初は電子レンジもなく冷たいまま食べていたということです。

倉敷市によりますと、被災者に最大で3000食を提供するなど大量の食事が必要だったことに加え、食中毒対策などのため種類を絞らざるをえなかったということです。

森脇さんは「4か月間、全くメニューが変わりませんでしたが、出していただくだけでもありがたいということで、自分たちの立場から文句は言えませんでした」と話していました。

「温かい食事」提供の取り組み

小学校の避難所が閉鎖され、森脇さんは先月、別の避難所に移りました。

そこでは、避難生活を支援するNPO法人の看護師が施設のキッチンを利用して、「温かい食事」の提供を始めました。

看護師の山中弓子さんは、市が用意する弁当のおかずなどのほかに、炊きたてのごはんや野菜の入ったおかずなどを温かい食事を提供しています。

先月取材に訪れた際には、弁当のおかずに加えて、山中さんが用意した炊きたてのごはんと白菜やタマネギ、シメジがたっぷり入ったみそ汁が夕食に出されました。

食事を食べた森脇さんは「『まいうー』です。野菜がたくさん食べられるのがありがたいし、高級ホテルで食事をしているような感じです」と話していました。

山中弓子さんは「支援に入ったときに、食事の栄養バランスが悪く、災害関連死のリスクを考えるとすぐに改善しないといけないと思いました。『避難所だから我慢しなければならない』ではなく、『避難所だからこそストレスの低い生活を送る』ために工夫できることはたくさんあるのではないか」と話していました。

段ボールベッド導入進む

TKBのうち、「B=ベッド」は各地で起きた災害で導入が進みつつあります。

使われているのは「段ボールベッド」です。

避難所・避難生活学会の調査によりますと、西日本を中心とした豪雨では、岡山県倉敷市が災害の発生から10日ほどあとに2000余りの段ボールベッドを導入し、すべての避難者に行き渡ったほか、北海道地震では、震度7を観測した厚真町の避難所で、地震発生から3日後に段ボールベッドが届いたということです。

段ボールベッドの提供は、自治体と段ボールの業界団体の防災協定によって行われていて、先月までに全国31の道府県でこうした協定が結ばれているということです。

倉敷市真備町の避難所で、段ボールベッドを使用している男性は「体育館の床でごろ寝をしていたときに比べて、すごく快適です」と話していました。

イタリアは“TKB”が標準

避難所・避難生活学会では、避難所への「TKB」の導入が進んでいる海外の事例として、日本と同様、繰り返し大地震に見舞われているイタリアの例を挙げています。

2年前のイタリア中部の大地震では、避難した被災者のため、発生から48時間以内に広くて掃除がしやすいコンテナ型のトイレが整備されたほか、家族ごとにテントとベッドが支給されました。

また、災害の発生直後から被災者に温かい食事を提供する態勢も整えられています。調理を担うボランティア団体は、「キッチンカー」と呼ばれる台所を備えた車を各地に準備し、災害時には調理師がパスタなどの温かい食事を用意します。

国の機関がボランティア団体に指示を出し費用を負担する仕組みが整えられているということで、学会は日本でも導入を検討する必要があるとしています。

避難所・避難生活学会の水谷嘉浩理事は講演で、「日本では、TKBのうち“キッチン”が最も遅れている。イタリアの事例を参考に変えていかなければならない」と述べていました。

情報源:“災害時の避難所には「TKB」” 学会が提言 | NHKニュース


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