秋の褒章 林真理子さん 羽生善治さんら受章

秋の褒章 林真理子さん 羽生善治さんら受章

おめでとうございます。


長年にわたって、その道一筋に打ち込んできた人、芸術やスポーツの分野で功績のあった人などに贈られる「秋の褒章」の受章者が発表され、小説家の林真理子さんや、将棋棋士の羽生善治さんなど、797人と22の団体が受章することになりました。

ことしの「秋の褒章」を受章するのは、
▼人命救助活動で功績のあった人や団体に贈られる「紅綬褒章」が4人。
▼ボランティア活動で功績のあった人や団体に贈られる「緑綬褒章」が21人と22の団体。
▼長年にわたって、その道一筋に打ち込んできた人に贈られる「黄綬褒章」が255人。
▼芸術や文化、スポーツ、それに学術研究の分野で功績のあった人に贈られる「紫綬褒章」が16人。
▼公共の仕事で顕著な功績があった人に贈られる「藍綬褒章」が501人です。

このうち、「紫綬褒章」では、
◆脚本家、演出家として幅広く活動し、軽やかな喜劇感覚と都会的なセンスに貫かれた作品で多くの観客を魅了するケラリーノ・サンドロヴィッチさん、
◆長年にわたり幅広い役柄を演じ、日本を代表する俳優として国際的に活躍する真田広之さん、
◆女性ならではの視点から、エッセイや伝記小説、恋愛小説など幅広い分野ですぐれた作品を発表している小説家の林真理子さん、
◆将棋棋士として長年、第一線で活躍し、将棋の普及や振興に大きく貢献した羽生善治さんらが受章します。

「秋の褒章」の受章者は、今月14日に、皇居で天皇陛下からお言葉を受けることになっています。

真田広之さん「予期せぬご褒美のようだ」

紫綬褒章を受章する俳優の真田広之さんは、東京都出身の58歳。

子役として俳優人生をスタートさせ、20歳のとき、アクション映画で初主演しました。

1991年(平成3年)のNHK大河ドラマ「太平記」では、主役の足利尊氏を、1996年(平成8年)の大河ドラマ「秀吉」では、石田三成を演じました。

また、活躍の場を海外にも広げ、1999年から2000年にかけては、イギリスの歴史ある劇団、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの「リア王」に出演しました。すべて英語のセリフで、真田さんは唯一の日本人キャストとして挑みました。

また、2003年にはトム・クルーズ主演のハリウッド映画「ラストサムライ」に出演したほか、2004年には、主演した時代劇「たそがれ清兵衛」がアメリカのアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされるなど、日本を代表する俳優としてその地位を固めました。

10年余り前にハリウッドのある、アメリカ西海岸のロサンゼルスに拠点を移し、アメリカの映画やテレビドラマなどで幅広く活躍しています。

ロサンゼルスで記者会見した真田さんは受章について「身に余る栄誉をたまわり、驚きと喜びと、ことの重大さをひしひしとかみしめている。予期せぬご褒美のようだ」と喜びを語りました。

また、今後の抱負について、「俳優としての挑戦を続けながら、裏方として日本のすばらしい人材や美しさをよい形で発信していきたい。ここ最近、いち俳優として言える限界を感じており、プロデューサーとして来年から始動したい」と話していました。

林真理子さん「うれしく光栄なこと」

紫綬褒章を受章する小説家の林真理子さんは、山梨県出身の64歳。

大学を卒業後、コピーライターをへて、昭和57年にエッセー集「ルンルンを買っておうちに帰ろう」でデビューしました。

昭和61年には「最終便に間に合えば」と「京都まで」という作品で直木賞を受賞し、その後も幅広いジャンルで機知に富んだリズミカルな文章による優れた作品を発表しています。現在放送中のNHKの大河ドラマ「西郷どん」は、林さんの小説が原作となっています。

林さんは受章について「36年間、愚直にひたすら書いてまいりましたが、こういうふうに認めていただけたことをうれしく、光栄なことだと思っています。とにかく世の中に出たい、有名になりたいという軽薄な形で出てきた私が、小説を書くということに出会って書かせてもらったことで、非常に成長させてもらったと思っております」と喜びを語りました。

そのうえで、「私の作家としての芯は物語を作るのが大好きだということで、書いていることを快楽に感じます。今後、後世に残る小説を1冊書きたいと思う」と抱負を述べていました。

また、ふるさとの山梨について聞かれると、「私の3作目の小説、『葡萄が目にしみる』は山梨を舞台にしたもので、故郷への思いはとてもあります。自分の故郷を背負っているという気持ちはずっとありました。私の作品のモチーフにも何度も何度も登場しますし、とても大切な場所です。山梨の皆さんに喜んでいただけるとうれしいなと思います」と話していました。

羽生善治さん「大きな励みに前進続ける」

紫綬褒章を受章する将棋棋士の羽生善治さんは、埼玉県出身の48歳。

昭和60年に史上3人目の中学生棋士としてプロ入りし、4年後の平成元年に初めて挑んだタイトル戦の竜王戦を制して、当時の最年少記録となる19歳2か月で初タイトルを獲得しました。

25歳だった平成8年に当時の七大タイトルをすべて独占する「七冠」を史上初めて成し遂げ、その後もトップ棋士として活躍を続けています。

去年12月、将棋界の7つの永世称号の資格をすべて獲得して前人未到の「永世七冠」を達成し、ことし2月には将棋界初となる国民栄誉賞を受賞しました。

これまでに獲得したタイトルの数は歴代最多の99期に上り、現在タイトル保持者として戦っている竜王戦に勝てば、通算100期の大記録を達成します。

羽生さんは受章について、「今までの活動だけでなく、これから先の歩みに対しての期待も込められているのかなと受け止めています。将棋にはまだまだ研究すべきことがたくさん残されていて、そのおもしろや奥深さが前に進んでいく上でのエンジンになっています。受章を大きな励みに前進を続けていこうと思います」と話していました。

 

情報源:秋の褒章 林真理子さん 羽生善治さんら受章 | NHKニュース


記者会見の動画はこちら

将棋棋士の羽生善治竜王(48)が平成30年「秋の褒章」において、紫綬褒章を受章すると日本将棋連盟より発表され、東京将棋会館にて記者会見が行われた。

紫綬褒章は、長年にわたり学術・芸術上の発明、改良、創作に関して事績の著しい者に授与されるもので、将棋界での紫綬褒章受章は、谷川浩司九段、佐藤康光九段、森内俊之九段に続き15人目。

羽生竜王は2017年12月に竜王位を奪取、永世竜王の資格と同時に永世七冠の資格を獲得。2018年2月には囲碁の井山裕太六冠とともに国民栄誉賞を受賞している。

現在、羽生竜王は第31期竜王戦第3局の真っ最中で、防衛すればタイトル通算100期、失冠すれば約27年ぶりに無冠となる。

紫綬褒章は「大変な名誉なこと」

司会:
それではお時間になりましたので、平成30年秋の褒章の記者会見を始めたいと思います。それでは羽生(善治)竜王お入り下さい。

それでは始めに代表質問を行ないます。代表質問は東京記者会幹事より行っていきます。代表質問の後、質疑応答に移りますので、質問ある社は挙手をお願い致します。それでは代表質問、お願い致します。

──記者会幹事の共同通信のイケマツです。本日はおめでとうございます。

羽生竜王:
はい、どうもありがとうございます。

──2月に国民栄誉賞を受賞されて、今回紫綬褒章ということで、今のお気持ちからお聞かせいただけますでしょうか?

羽生竜王:
そうですね、1年で2つも大変名誉ある賞をいただきまして、とても驚いていますし、また大変な名誉なことであるなというふうにも思っています。今までの活動だけではなくて、これから先の棋士としての歩みに対しての期待も込められているのかなというふうにも受け取っています。

──今回の受章に関して、ご家族は何か仰っていらっしゃいますでしょうか?

羽生竜王:
そうですね、やはりあのとても栄誉ある章であるので、喜んでくれましたし、祝福もしてくれました。

──羽生さんはこれまで永世七冠など、数々の偉業を成し遂げられてこられたんですけれども、今年48歳になられました。今までの棋士人生を振り返って、いかがだったでしょうか。

羽生竜王:
もうすでに棋士になってから30年以上という長い歳月が流れていますので、長いといえば長いんですけども、無我夢中で続けていたら、この年齢になっていたというところもあります。

──タイトル100期というのが目前にされてるわけですけども、今後のまだまだ先、棋士人生長いと思いますが、目標といいますか、何かそういったものがあればお聞かせいただけますか?

羽生竜王:
そうですね、将棋の中身といいますか、内容そのものは、ここ5年くらいでも大きく変わっていますし、自分自身も対局をしていく中で、新たな発見とか、知らなかったことというのもかなりたくさんあったんだなということを実感しているので、その中で自分なりに何か新しいものといいますか、自分なりの発見みたいなものを見つけ続けられていけたらいいなというふうにも思っています。

──わかりました。幹事からは以上です。

前進を続けていかなくてはいけない

──フジテレビのウメダと申します。この度は受章、誠におめでとうございます。

羽生竜王:
どうもありがとうございます。

──先程タイトル通算100期というお話が出ましたが、一方でこのタイトル戦に負けてしまうと、無冠ということにもなってしまいます。ある意味その勝てば100期、負ければ無冠という非常に羽生さんにとってもこれは大きな分かれ目の対局かと思いますが、そういったタイミングでこの度受章されまして、改めて今どういったお気持ちでしょうか?

羽生竜王:
そうですね、もちろんその棋士の活動というのは、休みなく続いていくわけですし、安定した状態というのは常にないので、そういった中で自分なりに持てるものを出し切っていくということが問われているというふうに思っています。

その時期といいますか、それが続いている中で今回こういった章をいただけるということで、ひとつ大きな形で評価をしていただけるというのは、とてもありがたいことでもあると思ってますし、またそうですね、これを大きな契機といいますか、励みにして前進を続けていかなくてはいけないなというような気持ちを新たにしています。

──ありがとうございました。

──東京新聞のヒグチと申します。この度おめでとうございました。

羽生竜王:
どうもありがとうございます。

──羽生さんと言えばですね、将棋の対局以外でも、いろんな各界の著名な方との対談とかですね、講演とかですね、そういった幅広い活動……活躍をされてらっしゃると思うんですけど、先だって、奥様のTwitterとかでも、講演を少し抑えるみたいなそういうお話をちょっと伺ったりしたんですけども、いわゆる将棋にちょっと集中したい、集中するというふうなお考えが今あるのか、それとも引き続きそういった講演等の活動も並行してやっていく、今竜王戦の季節だからというそういうことなのか、ちょっとそこのところ伺ってよろしいでしょうか?

羽生竜王:
そうですね、なんというんでしょうか。将棋の世界は基本的にオフシーズンがないので、1年中何かやっているということがあります。ありがたいことにですね。その将棋以外の話もいただくこともあるんですけど、もちろん対局に支障がないようにやるというのが大前提だと思っていますので、その辺りを見極めながら活動していきたいというふうに思っています。

ただ一方でですね、やはりその将棋の世界以外の人達に興味や関心を持って貰うということも大切なことだと思っているので、完全にそういう活動しないとそういうことではないです。

──産経新聞のナカタです。この度はおめでとうございます。先程30年以上棋士になったという、これからも長い棋士人生が続くと思うんですけれども、これまでで思い出に残っている対局あるいはなんか出来事等あったら教えていただけますか?

羽生竜王:
そうですね、うーん、まあでも例えばやっぱり1番最初のデビュー戦とか、それはパッと言われてすぐに思い出すという意味では印象に残っています。

私は棋士になるまで、あまり記録をとった回数が少なかったものですから、あまりその何ていうんでしょうかね、その公式戦の雰囲気といいますか、わからない中でデビューしたということもあるので、パッと思い浮かんだのはそのデビュー戦の宮田先生との一局は非常に印象に残っています。

──ありがとうございました。

合間の時間に頭の中で研究

──毎日新聞のマルヤマです。この度はおめでとうございます。

羽生竜王:
どうもありがとうございます。

──講演とかいろんなことでご多忙な生活を送られているということなんですけども、その中でご多忙の中でいつ研究を、将棋の研究をされているのかなというくらい忙しいと思ったんですけども、その研究のタイミングってどういったところでやられているのか、まずは教えて下さい。

羽生竜王:
そうですね、特になんか定時で何時から何時までやるということではなくて、空いた時間で行っているということもあるというのと、あとその棋士にとってちょっと良いところっていうのは、仮にその将棋盤と駒がなくても、頭の中で考えることも出来るということはあるので、ちょっとした合間の時間、隙間の時間とかそういった時に少し考えたりするという感じです。

──すみません。別のことで、今、若手棋士が特にソフトで研究するということも多くなっていると思うんですけども、そういったことも含めて今までにない指し方も増えていて、そういった若手に対抗するには、どうしたらいいかということをお考えでしょうか?

羽生竜王:
そうですね、これはやっぱりソフトにどういうふうに向き合っていくかというのは、今全ての棋士に与えられている課題みたいな面もやっぱりあるので、実際その戦術的なところでも、大きな変化っていうのがあるので、何というんでしょうかね、そのセオリーとか定跡みたいなものを今現在進行形で、ひとつずつ再確認して、また構築していっているという状況だとは思っています。

もちろんその非常に便利なものでもあるし、優れたものだと思ってるんですけども、そこにですね、いかに自分なりの個性とか、スタイルを付け加えることができるかということが問われているのかなと思っています。

──NHKカワイと申します。この度はおめでとうございます。羽生さんがこれまで将棋を歩んで来られた歩みの中では、タイトルをひとつとり、そして七冠を達成したとか、様々な目標を超えていって今にあると思うんですけれども、今タイトル100期を目前にしていて、ただ今も最前線で将棋を指されていて、今やこれから、今の時点でですね、羽生さんの将棋に対するモチベーションの根本にあるものというか、なんかやはりどういう気持ちが1番こう自分をこの将棋の盤に向かわせるというかですね、大事に持たれているものなんでしょうか?

羽生竜王:
そうですね、やはり何ていうんでしょうか、もちろん公式戦だけでももう約2000対局をしていますので、類似した形とか同一した展開とかってなるケースももちろんあるんですけども、ただやはりまだまだ新たな未開のテーマとか、研究すべきところとか考えるべきところとか、そういうのはやっぱりたくさん残されているというところが、非常に面白い、また将棋の奥深いところなのではないかなというふうに思ってまして、そこがですね、一応続けていく前に進んでいく、ひとつのエンジンのような役割にはなっているのかなあと思っています。

──ありがとうございます。

佐藤九段、森内九段の存在は「長く続けていく中で大きな刺激」

──報知新聞のキタノです。この度は受章おめでとうございます。昨年、佐藤(康光)会長、森内(俊之)九段が紫綬褒章受章されてですね、お二人とは同世代で同期でもある存在だと思うんですけども、ある競技において、同期でその競技を始めた方が3人紫綬褒章を受章するというのは、中々過去にも歴史的にあることなのか、すごい珍しいすごく異例のことだと思うんですけれども、そこにはそれぞれの切磋琢磨というか、それぞれの存在というのはあったんじゃないかなと思うんですけども、そのお二人の存在、今までの歩みにおいて受けてきた影響みたいなものを伺えますでしょうか?

羽生竜王:
そうですね。佐藤さんとも森内さんとも、10代の頃から、本当にお互いに切磋琢磨をして、今日まで続いてきたというところがあります。もちろんその対局している時には、非常に厳しい相手でもあるんですけども、逆にですね、それが長く続けていく中で大きな刺激になったり、自分も頑張ろうというような気持ちになったりという意味では大変ありがたい存在だなというふうにも思っていますし、今まで数多くのタイトル戦とか大舞台で対局してきたということもありますので、そういう意味では非常にたくさん記憶に残る対局も残っている存在です。

──あともう1件、年齢に関して伺いたいんですけども、48歳にちょうどなられたんですが、今も最高位につかれていて、例えば同世代で生きる皆さんとかその活躍する姿に励まされているところがあると思うんですけども、今先生はプレイヤーとして48歳というご年齢をどのように捉えて、日々戦っておられるんでしょうか?

羽生竜王:
そうですね、もちろんその何ていうんでしょうかね、将棋の世界の場合は、若さとか勢いとか、あるいは新しい感覚とか、そういうものも非常に大事ですし、また一方でそのまあ長く積み上げてきた経験みたいなものも問われる時もあるということもあるので、何というんでしょうかね、うーん、たくさんの様々な経験した厚みみたいなものをどうやって現代的なものとして、残していけるかどうかということが常に考えてはいます。

──あの体力的に落ちてきたなとか、逆にこういうふうに工夫して若くあるというか、その辺りあのもう少し伺えますか?

羽生竜王:
ああそうですね、一局で対局していることに関して言えば、そんなに20代の時と今の時とそんなに違いはないという感覚なんですけど、ではその昔年間で一番多い時で89局やったことがあったんですけど、今はちょっとその89局をちゃんときちんとこなせるかとなるとちょっとそこは難しい所もあるのかなあという感じはあるので、まあ一局一局に関しては特には大丈夫かなあとは思っています。

──朝日新聞のムラカミです。この度はおめでとうございます。

羽生竜王:
ありがとうございます。

──今の質問にも絡むんですけども、これまでって将棋界って年齢を重ねるとだんだん戦いが厳しくなっていくという歴史があるんですけど、人工知能AIの出現によって、これって羽生さんにとっては、いい方向に向かっていくのか、それとも人工知能の出現というのは逆風になっているのか、その羽生さん自身はその人工知能を自分にとってはどういうふうに捉えてらっしゃいますか?

羽生竜王:
どういったらいいんでしょうかね、すごくソフトが強くなって、どういうことが起こったのかということをその考えた時に、個人的にはですね、何かこう全員が同じスタートラインに立ったという感覚なんですよね。だから同じスタートラインに立って、そこから何ができるかっていうことなので、それはその若い人でも経験のある人でも同じスタートラインから何を作り出せるかっていうことだと思ってます。

──それはまあそうするとですね、これまでの蓄積みたいなものは、1回さらにして、スタートしなければいけないということなんですか。

羽生竜王:
その感覚もあります。もう1回、何かこう元の状態に戻って、やり直さなければいけないという感覚も、実際はあります。ただ何というんでしょうかね、そういうソフトにとっては古いも新しいもないんで、時には古い将棋が出てくるということもあるので、そういう時には昔経験してきたことは役に立つというケースはあるかなと思っています。

──お気持ちとしてはですね、大変だなという気持ちなのか、それとも未知のものが出てくるワクワク感があるのか、どういう気持ちでそのAIの出現というのを捉えているんでしょうか?

羽生竜王:
もちろんそうですね、それに対応していくという点では、非常に大変というか、厳しい状況だというふうにも思っています。ただ一方で、棋士として何というんでしょうかね、アナログの時代から今の時代のところまで、なんかこう様々な経験をこの30年くらいで出来たというのは、中々こう得難い、いい時期に棋士になれたんじゃないかなというような気持ちも持っています。

──朝日新聞のムラセです。どうもおめでとうございます。2点ありまして、まず1点が紫綬褒章は師匠の二上九段も受章された章なんですけども、師弟でご受章になった、受章ということになったことについてのご感想を1言いただきたいのと、2点目は今まで仰ってたことと多少重なるところがあるかもしれませんが、長年将棋を続けて来られて、研究を重ねて更にはAIソフトの出現もあってという中で、羽生さんご自身としてはこう将棋の真理というかですね、どんどん最善の方に近づいているなという実感がおありなのか、その辺りの自分のやってきたことがこうどういう方向に向かっているかということを、どういうふうに考えていらっしゃるかということをちょっと伺えればと思うんですけども。

羽生竜王:
はい。最初の方の質問は、そうですね。師匠はもちろんプレイヤーとしてだけではなくて、将棋連盟の運営に対しても、大変こう長きに渡って貢献をされていた先生ということでもあるので、何というか、同じ章をいただくというのは、比較してしまうとちょっと申し訳ないというような感覚もあります。

それでもう1つの方の質問に関して言うと、もちろん何というんでしょうかね、何かこう少し前に進んでいるとか、前より変わっているという感覚はあるんですけど、じゃあそれが何かその究極的に何か解明できる方向に進んでいるかとか、何か本質的に進歩しているかどうかということは、全くわからないというのが実感ですね。もちろん進んではいるんでしょうけども、ちょっとやはり今でも、暗中模索というか、それが続いている感覚だとは思っています。

──例えばその将棋全体の、ちょっと表現が難しいんで100だとして、何十くらいわかってるんじゃないかとか、そういうことはボンヤリと、半分くらいかなとか、ボンヤリとイメージできる数字っていうのはありますでしょうか。

羽生竜王:
いやでも、何というんでしょうかね、あまりにも膨大な可能性を前にして、あまり何というか、どれくらいまで来てるかというようなところは全くわからないというところですね。結構実際将棋のいろんな局面って漠然としたものがすごく多いので、何手で終わるとか、どっちが有利とかそういうのは全くわからないので、やっぱりなんかこう漠然としていて、よくわからないものに対峙しているという感覚は今も続いているという感じです。

──東京新聞のヒグチと申します。ここ最近で動きが大きい将棋界ではありますが、将棋関連のニュースで羽生先生がこのまあ1~2年くらいで1番印象の残っている出来事っていうのを、もしお伺えたらと思うんですが、いかがでしょうか。

羽生竜王:
そうですね、やっぱりそれは藤井さんの活躍ですね、なんといっても。デビューしてやっぱり連勝記録の、新しい記録を塗り替えたというところで、非常に大きなインパクトがあったと思っています。

──実際にその藤井さんの登場以降、何か羽生さん自身も変化というか、何か変わったなというふうにお感じの所はおありでしょうか。

羽生竜王:
そうですね、何というんでしょうか、新しい時代の感覚といいますか、将棋を藤井さん指されているので、たくさんの棋士が今影響を受けているという状況だと思っています。

──はい、ありがとうございました。

座右の銘「玲瓏」はほとんど実現出来ていない

──報知新聞のキタノです。先程師匠ところでも少しお話されていましたが、佐藤九段、森内九段の2人、連盟のトップで運営に携わっていらっしゃいますけれども、(羽生)先生も今会館の建設準備委員会を率いていかれることになると思うんですけども、ゆくゆくその運営側でこの世界を率いるといいますか、立つというか、そういうビジョンというのは、今、かなり先のことになるのかもしれないですけれども、どのようにイメージされてらっしゃいますでしょうか。

羽生竜王:
そうですね、現状で特になんかそういう具体的な何かを考えてるということは、全くなくて白紙の状態ではあります。もちろんその現状でその自分が出来ることをしっかりと関わってやっていくということが大切なのかなというふうにも思っています。

──毎日新聞のマルヤマです。座右の銘というところをお伺いしたいんですけど、将棋を指す上での羽生さんの座右の銘というものがあったら、お聞かせいただけますか。

羽生竜王:
そうですね、これは色紙とかにもよく書く「玲瓏」という言葉がそうで、もともとは、「八面玲瓏」という四文字熟語なんですけども、まっさらな気持ちといいますか、明鏡止水といいますか、邪念が入っていない状態で臨むというのが、1つの理想として座右の銘として持っています。

──実際に指していてどのくらい実現できているかどうかというのはいかがでしょう。

羽生竜王:
いやほとんど出来ていないので、あくまでも理想で、ほとんど実際は出来ていないですけど、まあまあ1つの理想ですね。

──ありがとうございます。

司会:
はい、では他に質問ある方いらっしゃいますでしょうか。特になければこれで終わりたいと思います。ではないようですので、これで記者会見を終わりたいと思います。羽生竜王ありがとうございました。

羽生竜王:
はい、どうもありがとうございました。

情報源:羽生善治竜王、紫綬褒章の受章が決定 将棋界では佐藤康光九段、森内俊之九段に続き15人目【記者会見コメント全文】


この度、平成30年「秋の褒章」において、羽生善治竜王(48歳)が紫綬褒章を受章することになりました。
紫綬褒章は、長年にわたり学術・芸術上の発明、改良、創作に関して事績の著しい者に授与されるものです。将棋界での褒章受賞者は15人目になります。

羽生善治竜王コメント

「この1年で紫綬褒章、国民栄誉賞と名誉あるものを頂くことができて、とても驚いたと同時に名誉あることだと思っています。今までの活動だけではなく、これから先の棋士としての歩みに期待を込められていると思っています。

棋士になってから30年以上という長い歳月が流れているので、無我夢中で指していたら、この年齢になっていました。
将棋の内容そのものはここ5年ぐらい大きく変わっていますし、自分自身も対局していくなかで新たな発見や知らなかったがあることを実感しているので、そのなかで自分なりの発見を見つけ続けたいと思います。

棋士の活動というのは休みなく続き、安定した状態というのは常にあるわけではないので、そのなかで自分なりにもてるものを出し切っていくことが問われていると思っています。それが続いていく中で、1つ大きな形で評価をしていただけるのはとても有り難いと思っていますし、これを大きな励みとして前進を続けていかなくてはならないと気持ちを新たにしています。

同じく紫綬褒章を受章した佐藤康光九段、森内俊之九段とは10代のころから本当にお互いに切磋琢磨をして、今日まで続いていて、対局をしているときは非常に厳しい相手ですが、その関係が続いていくなかで、大きな刺激になったり、自分も頑張ろうという気持ちになったり、大変有り難い存在と思っています。」

日本将棋連盟 褒章受章者名簿

受章順・肩書は受章当時
氏名(受章当時) 生年月日 受章時年齢 受章年月日・種類
木村義雄十四世名人 明治38年2月21日生 55歳 昭和35年11月3日 紫綬褒章 *棋界初
升田幸三九段 大正7年3月21日生 55歳 昭和48年11月3日 紫綬褒章
塚田正夫九段 大正3年8月2日生 61歳 昭和50年11月3日 紫綬褒章
大山康晴十五世名人 大正12年3月13日生 56歳 昭和54年4月29日 紫綬褒章
丸田祐三九段 大正8年3月30日生 62歳 昭和56年11月3日 藍綬褒章
原田泰夫八段 大正12年3月1日生 59歳 昭和57年11月3日 藍綬褒章
廣津久雄九段 大正12年2月26日生 63歳 昭和61年4月29日 藍綬褒章
二上達也九段 昭和7年1月2日生 60歳 平成4年4月29日 紫綬褒章
加藤一二三九段 昭和15年1月1日生 60歳 平成12年4月29日 紫綬褒章
米長邦雄永世棋聖 昭和18年6月10日生 60歳 平成15年11月3日 紫綬褒章
中原誠十六世名人 昭和22年9月2日生 60歳 平成20年4月29日 紫綬褒章
谷川浩司九段 昭和37年4月6日生 52歳 平成26年11月3日 紫綬褒章
佐藤康光九段 昭和44年10月1日生 47歳 平成29年4月29日 紫綬褒章
森内俊之九段 昭和45年10月10生 47歳 平成29年11月3日 紫綬褒章
羽生善治竜王 昭和45年9月27生 48歳 平成30年11月3日 紫綬褒章

情報源:羽生善治竜王に紫綬褒章|将棋ニュース|日本将棋連盟



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