地下鉄ホームのPM2.5濃度 最大で地上の約5倍に

地下鉄ホームのPM2.5濃度 最大で地上の約5倍に | NHKニュース

ほぉ・・・


健康への影響が指摘される極めて小さい粒子状の大気汚染物質、PM2.5について、慶應大学のグループが地下鉄で調査をしたところ、最大で地上のおよそ5倍の濃度に上ったことがわかりました。ブレーキの際に車輪やレールなどが削れて発生しているとみられ、専門家は「呼吸器などに病気がある人や長期間働く人などへの影響を調査する必要がある」と指摘しています。

PM2.5は1000分の2.5ミリ以下の極めて小さい粒子のことで、吸い込み続けると、呼吸器や循環器などへの影響が指摘されています。

日本では9年前に屋外の大気中の環境基準がつくられ監視が強化されてきましたが、地下鉄や地下街、屋内など閉鎖した場所の基準はなく、実態がよくわかっていません。

慶應大学の奥田知明准教授のグループは、横浜市交通局の協力を得て、横浜市内の地下鉄のホームで、ことし7月17日の午前5時から午後8時までPM2.5の調査をしました。

その結果、始発から濃度が上がり始め、1立方メートルあたりの1時間の平均濃度は、午前9時から10時でもっとも高い、およそ120マイクログラムとなり、同じ時間帯の地上のおよそ5倍に上りました。

また、始発後の午前6時から14時間の平均濃度はおよそ80マイクログラムで、環境省の屋外の1日平均の基準35マイクログラムと比べると、およそ2.3倍となりました。

成分を分析したところ金属が多く、特に鉄を含むPM2.5は地上のおよそ200倍に上りました。

発生原因について、調査したグループでは、電車がブレーキをかける際に車輪やレール、ブレーキの部品が摩擦で削れるほか、パンタグラフと架線の接触でもPM2.5が発生しているとみています。

慶應大学の奥田准教授は「地上のPM2.5は改善されているが、地下鉄の実態はわかっていない。今回は1日だけの調査だったが、ほかの駅や地下鉄にも調査を広げる必要がある」と指摘しています。

横浜市交通局 換気などの粉じん対策

横浜市交通局では送風機などでトンネルや駅構内の換気を行っているほか、トンネル内の清掃も定期的に行って粉じん対策をしているということです。

今回のPM2.5の調査結果について、横浜市交通局は「健康への影響について科学的な知見や研究成果がまだ少ないなかで今すぐ具体的な対策を講じるのは難しいが、今後の研究成果によっては対策を検討していかないといけないと考えている」としています。

高濃度に地下鉄特有の事情

高い濃度のPM2.5が地下鉄で計測された理由について、専門家は地下鉄特有の事情があるといいます。

電車がブレーキをかけると、
▽車輪とレールやブレーキの部品がこすれて削られるほか
▽パンタグラフと架線も摩擦で少しずつ削られ、金属のPM2.5が発生するとみられています。

PM2.5はトンネル内を浮遊したり、底にたまったりして、電車が通過するたびに巻き上げられてホームに流れ込むと考えられます。

また、通勤ラッシュで濃度が高くなるのは、
▽時間あたりの電車の本数が増えることや
▽多くの人を乗せているため、車体が重くなりブレーキをかける際、車輪やレールにより摩擦がかかるためとみられます。

地下鉄には送風機などで換気する仕組みがあるほか、地下鉄各社は定期的に構内で清掃などを行っていますが、十分に取り除けていないとみられます。

地下鉄各社の現状は

PM2.5の濃度を把握しているかどうか、主な地下鉄に取材をしました。

東京メトロでは駅構内で換気を行い、外気を取り込んで空気をきれいにする仕組みを設けているほか、トンネルや駅の粉じんを除去するため清掃も行っているということですが、PM2.5を含めた粉じんの定期的な計測はしていないとの回答でした。

福岡市地下鉄は比較的大きな浮遊粒子状物質については、駅員が長時間滞在する駅務室で定期的に濃度を計測しているほか、換気や清掃などを行い、粉じん対策を進めていますが、PM2.5の濃度は把握していないということです。

名古屋市営地下鉄でも比較的大きな浮遊粒子状物質については、ホームや駅務室などで定期的に計測しているほか、構内の換気や清掃を行い粉じん対策をしていますが、PM2.5の濃度は把握していないとの回答でした。

Osaka Metroも駅構内で比較的な大きな浮遊粒子状物質の濃度は定期的に計測しているほか、換気や清掃を行って粉じん対策はしていますが、PM2.5の濃度は把握していないということです。

海外の鉄道は

海外の地下鉄では10数年前からPM2.5の問題が指摘され、実態調査と対策が進んでいます。

このうち、世界で最も古いイギリス・ロンドンの地下鉄では、2003年に調査が行われ、最も高い駅では1立方メートルあたりの3日間の平均濃度が、およそ480マイクログラムとなるなど、汚染が確認されました。

調査結果をまとめた報告書では、駅員や一般利用者の肺への影響は低いとする一方、PM2.5の成分の中に鉄が認められ、毒性が確認されたとして、削減努力をすべきと指摘しています。

こうした実態を踏まえ、ロンドン市長は去年、地下鉄の環境を改善するための行動計画を発表し、観測装置の設置や微粒子の吸着装置を使った除去などを行うとしました。

また、スペインのバルセロナでは、2015年から2016年にかけ、研究機関と地下鉄事業者が大規模な調査を実施、いくつかの駅でWHO=世界保健機関のガイドラインと比べて、高い数値が出たということです。

この計測データは誰でもわかるようにホームページで公開されているほか、PM2.5が発生しにくいブレーキ部品の開発などが提案されています。

このほか、スウェーデンのストックホルムの地下鉄でもPM2.5が問題となり調査が行われ、2003年に出されたレポートでは、高い濃度の汚染が報告されています。

売店の従業員からは心配の声

東京メトロの地下鉄の売店で働く契約社員などでつくる労働組合の支部の委員長の後呂良子さんは、10年以上、地下鉄の駅の売店で働いています。

週5日、駅のホームですごしています。売店では手袋とタオルで商品の汚れを払っていますが、1日たつと粉じんとみられる黒っぽい粉で汚れるといいます。また、1日の仕事を終えて鼻をかむと、ティッシュが真っ黒になるといいます。

後呂さんの労働組合の支部では、平成21年に売店の運営会社に駅構内の粉じん調査を要望、会社が調査を実施した結果、「人体の健康被害は考えにくい」という回答でした。

しかし、調査をした時はPM2.5について、屋外を対象にした国の基準もなく、回答の中ではPM2.5の健康影響までは評価されていませんでした。

後呂さんは「えたいの知れないものを吸い込んでいると思うと気持ちが悪い。地下鉄を止めることはできないので、日ごろから濃度を把握できるようにしてほしい」と話し、実態の解明を求めています。

労働組合の支部の要望で9年前に粉じんの調査をした、売店を運営する東京メトロの子会社、メトロコマースは「平成21年の調査結果を踏まえると、駅構内の環境が健康に影響する可能性は低いと考えておりますが、従業員から要望がくることについては、今後も会社として従業員の労働環境・健康管理に適切に対応していきたいと考えております」とコメントしています。

専門家「短時間であれば大きな問題ではない」

PM2.5の健康影響に詳しい、京都大学の高野裕久教授は「濃度自体は高いが、一般の利用者のように駅を利用する時間が短ければ大きな問題にならないと考えられる。しかし、PM2.5の影響を受けやすい呼吸器や循環器に疾患がある人やアレルギーの人、高齢者や子ども、また長く駅に滞在する人は、より注意をする必要がある。また、成分が屋外と異なって鉄などの金属が多いということが気になる。金属は一般的な大気環境中のPM2.5では、悪影響を及ぼす成分であると指摘されていて、地下鉄のPM2.5でも影響があるか調べることが必要だ」と話しています。

環境省の基準は

PM2.5は大気中を浮遊する大きさが1000分の2.5ミリ以下の極めて小さな粒子で、成分は鉄などの金属や硫酸塩や硝酸塩、そして有機物などさまざまです。

工場や自動車の排ガスなどから発生するほか、中国からも飛来し、吸い込むと肺の奥まで入りこみ、ぜんそくや気管支炎、肺がんなど、呼吸器の病気や不整脈など循環器の病気のリスクが相対的に高まるとされています。

環境省は昭和48年に、大きさが1000分の10ミリ以下の微粒子について、大気中の濃度の環境基準を定めました。その後、より小さなPM2.5が健康に悪影響があることを示す科学的な知見が報告されるようになり、環境省は平成21年9月に、大気中のPM2.5の濃度を年平均で、1立方メートルあたり15マイクログラム以下に、また日平均で1立方メートルあたり35マイクログラム以下にすることが望ましいとする環境基準をつくりました。

ただし、この環境基準は屋外が対象で、地下鉄や地下街、建物の中など閉鎖された場所でのPM2.5の濃度の国の基準は現在ありません。

地下鉄など閉鎖された屋内の基準はなし

地下鉄のPM2.5について、環境省に取材したところ、現在のPM2.5の環境基準は屋外の大気中のものが対象で、地下鉄や地下街、建物の中など閉鎖された屋内の空間は対象にならないということです。

屋内のPM2.5の濃度の基準をつくる具体的な予定は現時点ではないとしています。

厚生労働省では建築物の環境衛生管理の基準で、図書館や博物館、学校など特定の建築物を対象に浮遊する粉じんの濃度の上限は設けていますが、地下鉄の駅は原則、対象とはなっていないということです。

また、粉じんの中でPM2.5の濃度の基準はなく、現時点では地下鉄などを対象にした環境衛生管理の基準を決める検討もしていないとの回答でした。

鉄道を管轄する国土交通省は、地下鉄の駅やトンネル内に換気設備を設けることは義務付けていますが、粉じんの濃度に関する基準は設けていないということです。

地下鉄でPM2.5の調査を行った慶應大学の奥田知明准教授は「地下鉄の空気の環境を誰が責任をもつのかわかりずらい。今まで見過ごされてきた空間だといえる。今後、地下鉄をはじめ、閉鎖空間の基準の整備も検討すべきだ」と話しています。

情報源:地下鉄ホームのPM2.5濃度 最大で地上の約5倍に | NHKニュース



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記事の有効期限: 2018年12月14日 Friday 9:54am