【関空不全~台風21号の爪痕(中)】海上空港の“死角”地下施設リスク 「護岸偏重」のツケも(1/3ページ) – 産経WEST

ふむ・・・


関西国際空港はこうして機能不全に陥った
関西国際空港はこうして機能不全に陥った

分厚い鉄扉の表面には、無数の草の切れ端が帯状に張り付いていた。

台風21号の被害からちょうど1週間が経過した今月11日。報道陣に公開された関西国際空港第1ターミナルビルの地下1階「高圧電気室」には、関西の“空の玄関口”を機能不全にした台風の爪痕が、くっきりと刻まれていた。

床上80~90センチのあたりに残る草の切れ端は、流れ込んだ海水の痕跡だ。浸水防止のため扉の下部に設置された止水板(高さ40~50センチ)の高さを優に超えており、空港全体に電気を供給する関空の「心臓部」が完全に海水に漬かっていたことを物語っている。

浸水「不可抗力」

台風21号のもたらした強風で、いかりごと船が流される「走錨(そうびょう)」に見舞われたタンカーが連絡橋に衝突し、関空は文字通り「孤島」となった。取り残された利用者や従業員計約8千人が見舞われたのは、大規模な施設内の停電だった。

地下に計6室ある電気室の中には、関空島に送られてきた電気の電圧を変えてビル内に送り出す変電器がある。台風が通過した4日、高潮による海水がスロープを下って地下に流れ込み、このうち3室の変電器が水をかぶった。

関空を運営する関西エアポートは、台風に備えてスロープの地上部分に土(ど)嚢(のう)を積んだり、室内の変電器を約30センチかさ上げしたりするなどの対策をとっていたが、それは大雨の被害を想定したもの。大阪港で過去最大の3・29メートルを観測するなど「140年に1度のレベル」という高潮の前では、無力だった。

「津波でも高潮でも、かさ上げ(した護岸)で守られている地下であれば、安全だと思っていた」

関西エアの山(やま)谷(や)佳之社長は8日の記者会見でこう述べ、「日本の空港や大きなオフィスビルの電気施設は、おおむね地下にある。通常の大雨なら(故障した)排水ポンプで全て排水できた」と、今回の浸水が「不可抗力」だったとの見解をにじませた。

護岸偏重のツケ

これまで関空がとってきた根本的な防災対策は、「護岸偏重」といえるものだった。

関空のある人工島の地盤は軟らかく、関西エアによると、第1ターミナルのある1期島は平成6年の開港時から現在までに平均で約3・4メートル沈んでいる。16年の台風の際は波が護岸を乗り越え道路などが冠水する事態が発生。これを機に高潮・高波対策が本格化し、地盤沈下を補いつつ、護岸を水面から5メートルの高さにかさ上げする工事などが実施されていた。

これで「50年に1度の波にも耐えられる」(関係者)はずだったが、台風21号の高波は護岸をやすやすと乗り越えたとみられる。

早稲田大の柴山知也教授(海岸工学)によると、23年の東日本大震災による福島第1原発事故を契機に、一部自治体や警察施設では、地下にある重要施設を上階に移動させる対策が進んだという。

国土交通省航空局などによると、国が所管する空港では、配電設備などの重要施設の大半が建物の1階に入っている。関西エアの担当者は「(地下にある)配電設備などの重要施設は常時稼働しており、スペースの確保も難しい。(移設は)簡単ではない」と話すが、重要施設が地下にあることのリスクを十分に認識していたとは言い難い。

東日本大震災で被災した仙台空港を除き、電源設備を上階に移動させた例はない。国交省の担当者は理由について、「非常に重い設備のため、移動そのものが困難」と説明する。

「海上空港である関空では、護岸を積み上げることだけに意識が集中し、地下施設の対策がおろそかになっていた可能性がある」。柴山教授はこう指摘し、続けた。

「万が一、施設が浸水しても、空港の基本的機能だけは死守するという視点が抜け落ちていた。全国の海上空港に共通する課題だ」

情報源:【関空不全~台風21号の爪痕(中)】海上空港の“死角”地下施設リスク 「護岸偏重」のツケも(1/3ページ) – 産経WEST


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