広島・巨人を支えるドミニカン・パワー  WEDGE Infinity(ウェッジ)

ふむ・・・


巨人のチーム構成に、一見地味なようで、実は大きな異変が起こっている。今年84年目を迎えた球団史上、初めての出来事だろう。一軍メンバーに育成選手出身の外国人が3人登録されたのだ。これまで資金力に物を言わせて元大リーガーや国内他球団の大物外国人を獲得してきた巨人が、これほど発展途上の人材を登用していることは、ひとつの〝歴史的事件〟と言ってもいいと思う。

この3人はみんなドミニカ共和国出身で、先発投手のクリストファー・クリソストモ・メルセデス(24歳、2年目、年俸270万円=金額は推定、以下同)。リリーフ投手のサムエル・アダメス(24歳、3年目、年俸300万円)。内野手のホルヘ・マルティネス(25歳、2年目、年俸250万円)。年俸は3人合わせても1000万円に届かず、中日から巨人に移籍した昨季の本塁打王、アレックス・ゲレーロの年俸3億円の30分の1にも満たない。

しかし、そのゲレーロが打撃不振、クローザーのアルキメデス・カミネロ(年俸2億3000万円)が体調不良で二軍落ち。代わって中継ぎから抑えに回ったスコット・マシソン(同3億6800万円)も左膝のケガで登録抹消となり、高橋由伸監督も彼ら若きドミニカ人たちの手を借りなければならなくなった。

とくに、メルセデスは先発ローテーションの穴を埋めて余りある活躍ぶりだ。デビュー戦となった7月10日のヤクルト戦(神宮)で5回無失点で初勝利を挙げ、続く同月18日の阪神戦(甲子園)でも7回無失点で2勝目をマーク。さらに、勝ち星こそつかなかったが、同月26日のヤクルト戦(京セラドーム大阪)でも8回を無失点。そして、8月2日のDeNA戦(横浜)では3勝目を「野球人生で初めて」だったという完投勝利で飾った。

ちなみに、デビューから2連勝して防御率0・00は外国人や育成出身はおろか、日本人を含めても球団史上初。デビューから25イニング連続無失点は、プロ野球が2リーグ制となった1950年以降、83年に槙原寛己が記録した17回3分の2を抜いて球団史上最長である。もっと言えば、外国人投手の来日初登板からの連続無失点記録としても、2000年の中日メルビン・バンチが持つ21回3分の2を抜いてプロ野球最高となった。このドミニカ人の活躍を〝歴史的事件〟と表現した理由がおわかりいただけるだろう。

巨人の二軍首脳陣によると、メルセデスの最大の特長は、「左から150㎞台の真っ直ぐを投げられるパワーもさりながら、あらゆる球種を狙ったところにコントロールできる制球力にある」という。調子が悪くて真っ直ぐが走らない日は、腕の出どころを変え、変化球を増やし、カットボール系の球種を多投。セットポジションから投げる間合いも小刻みに変えて打者のタイミングを外してゆく。

そういう我慢強い投球ができるのも、頭とメンタルがしっかりしているからこそ。2年前の2016年には、広島がドミニカで経営する〈カープアカデミー〉と契約しながら、理由も告げられないままに1年で解雇。その年のシーズンオフに巨人の入団テストに合格するも、1年目の翌17年は二軍で18試合に登板し、2勝3敗、防御率3・29とパッとせず。

しかし、こういう投手が大化けするから、野球は面白いのである。私生活では母国ドミニカに同い年の妻がいて、昨年は待望の長男が生まれたばかり。その家族にもっと豊かな生活をさせてやりたい、という思いが最大のモチベーションになっている。

苦労人・フランスア

一方、そのメルセデスを解雇した広島でも、今季新たなドミニカ人投手が台頭してきた。5月に契約金1100万円、年俸800万円で6年契約を結んだヘロニモ・フランスア(24歳)である。ローテーションの谷間を埋める先発、中継ぎにロングリリーフと抑え以外は何でもこなし、瞬く間に勝ちパターンのセットアッパーへのし上がった。広島といえば強力打線で打ち勝ってきた感が強いが、「フランスアの粘り強い投球で落としそうな試合を拾ってきたことが大きい」と広島のチーム関係者は指摘する。

このフランスアもメルセデスと同様の苦労人。2014年に練習生として来日したが、当初はまだ力不足を見られたのか、2年目の16年に四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスに派遣されている。ここで日本の野球や投球をじっくり勉強して広島に復帰してからも、今春の日南キャンプでは依然として練習生扱いだった。

それがいまでは、〝勝利の方程式〟の一員としてチームを支える存在になった。これに刺激を受けたのか、昨年ヒザの手術を受けた松坂世代の〝元守護神〟永川勝浩が復活するという相乗効果も生まれている。

このように、広島にしろ巨人にしろ、ドミニカ人が大物大リーガーみたいな「助っ人」ではなく、日本人と同じ「生え抜きの若手」としてチームに溶け込んでいることも非常に興味深い。ある広島の関係者はこう予言している。

「あと何年かしたら、あちこちの球団で育成上がりのドミニカ人が活躍するようになるだろう。巨人のゲレーロ、阪神の(ウィリン・)ロサリオみたいな外国人に頼る時代は、そろそろ終わりじゃないか」

情報源:広島・巨人を支えるドミニカン・パワー  WEDGE Infinity(ウェッジ)


ほぉ・・・