眠気の“正体”は脳内タンパク 筑波大チームが発表

悪用されなければいいが・・・


脳内にある80種類のタンパク質の働きが活性化すると眠くなり、眠りにつくと働きが収まるのをマウスの実験で発見したと、筑波大の柳沢正史教授(神経科学)のチームが発表した。「スニップス」と名付けたこの一群のタンパク質は眠気の“正体”とみられ、睡眠そのものに深く関わっているらしい。

柳沢教授らは、タンパク質が睡眠を促して神経を休息させ機能の回復につなげているとみている。「睡眠の質の向上や、不眠など睡眠障害の治療法の開発につながる可能性がある」という。

チームは眠らせないで寝不足にしたマウスと、眠い状態が続くように遺伝子操作したマウスを使って実験。寝不足マウスの脳内では、眠くなると脳内のタンパク質が活性化する「リン酸化」と呼ばれる反応が起き、眠ると元に戻るのを確かめた。この反応をじゃまする薬を与えると、マウスの眠気が収まるのも脳波の分析から確かめた。

情報源:眠気の“正体”は脳内タンパク 筑波大チームが発表 – SankeiBiz(サンケイビズ)


2018.3.24 11:00

睡眠研究に欠かせない分析装置を紹介する、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史機構長=茨城県つくば市(原田成樹撮影)
睡眠研究に欠かせない分析装置を紹介する、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史機構長=茨城県つくば市(原田成樹撮影)

眠気とは何か。人はどうして眠らないといけないのか。この研究に取り組む筑波大の柳沢正史教授(57)は1999年にマウスの特殊な睡眠障害を発見し、世界の睡眠研究に大きな風穴を開けた。最近では睡眠に異常を起こすマウスの作製にも成功し、眠気の全容解明に突き進んでいる。

柳沢さんは筑波大の大学院生だった87年、弱冠27歳で血管の収縮に関わる「エンドセリン」という分子を発見した。循環器系に関わる分子は当時、ホットな研究テーマで、世界的な快挙となった。

これを契機に、医学や生物学で最先端を行く憧れの米国を目指した。エンドセリンで得た名声を利用してリクルート活動を展開し91年、米テキサス大で准教授の職を得た。

ここで、遺伝子の配列が分かっているが、機能が不明なタンパク質の機能解明に取り組む。いわゆる「宝探し」である。

98年、ある遺伝子が食欲に関係することを突き止め、その遺伝子が作る分子をギリシャ語の食欲に由来する「オレキシン」と名付けた。しかし、この遺伝子を働かなくしたマウスを観察しても、食欲が増えたり減ったりでどっちつかず。そこで、活発に動くはずの夜間にビデオ撮影して観察すると、突然止まって床に倒れるなどの異常行動が見つかった。

睡眠障害と出合い創薬へ

てんかんなら、すでに研究され尽くしているので、さっさと論文を書いてほかの研究に移ろうと思っていた。ところが脳波を測ってみると、てんかんではなく、覚醒から一気にレム睡眠に移る特殊な障害と分かった。

脳には3つの状態があり、通常は覚醒からノンレム睡眠を経てレム睡眠に移行する。このマウスは人間の「居眠り病(ナルコレプシー)」と同じ症状で、メカニズムは全く不明。「これは面白い」と、のめり込んだ。

オレキシンの発見は、2014年に日米などで発売された新しいタイプの睡眠薬の開発につながった。ナルコレプシーの治療への応用も期待されている。

帰国した柳沢さんは現在、筑波大に設立された国際統合睡眠医科学研究機構のトップとして、陣頭指揮を執る。

オレキシンは覚醒を引き起こす作用があり、目の覚めた状態を維持するが、睡眠メカニズムを理解するには、たくさんの分子の関わりを解明する必要がある。「どうして眠らないといけないか、生物の種に特有の睡眠時間はどのように決まっているのかという肝心なことに迫れていない」と柳沢さんは歯がゆさを隠さない。

本質に迫るためもっと大量に探索しようと、マウスにランダムな突然変異を起こして遺伝子の機能を探る手法を本格導入。これまでに新たな変異を持つ8千匹のマウスを生み出した。16年には1日の睡眠時間が異常に長い「スリーピー」と、夢をみるとされるレム睡眠が異常に短い「ドリームレス」の2系統を作製しており、眠気の正体に向けて着実に歩を進めている。

幼少期に芽生えた探究心

子供のころは、近所の小川で流れが渦を巻く様子を1時間でもじっと観察していたという。「一つ間違えれば危ない子」と冗談めかすが、自然への探究心がそのころから芽生えていたのだろう。

小学校に入ったころまで黙って落ち着くことができなかったが、年齢を重ねるにつれ、頭で考えて自分を抑えていくようになったと医師らしく自己分析する。

医師の父に勧められ、筑波大の医学部へ進学。臨床医になるか悩んだが、臨床実習などを通じて日本の医療の遅れを痛感し、研究者への道を選んだ。

「睡眠を研究するなんて思いもよらなかった」と振り返る柳沢さん。今では140人以上の研究者を擁する大所帯の研究機構を率い、世界の睡眠研究をリードしている。(科学部 原田成樹)

やなぎさわ・まさし 1960年、東京都生まれ。筑波大大学院医学研究科博士課程修了。米テキサス大サウスウエスタン医学センター教授などを経て、2012年から筑波大国際統合睡眠医科学研究機構の機構長兼教授。17年度、朝日賞。

情報源:【科学の先駆者たち】柳沢正史・筑波大教授 眠りのスイッチ遺伝子を発見(1/3ページ) – 産経ニュース



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