山形)将棋名人戦の駒どれに? 天童の職人らの候補4作:朝日新聞デジタル

羽生竜王が最終局に持ち込むか、佐藤名人が防衛を決めるか。


第76期将棋名人戦七番勝負第6局(朝日新聞社、毎日新聞社主催)が19、20日、天童市である。3連覇へあと1勝に迫った佐藤天彦名人(30)に、最終局へ持ち込みたい羽生善治竜王(47)が挑む対局も注目だが、駒作りが盛んな天童ならではの楽しみ方もある。どの駒が使われるか。県内の伝統工芸士が作った高級駒4組が候補だ。

名人戦で使う駒の候補は通常、日本将棋連盟か地元の愛棋家が提供する。だが天童では、天童商工会議所が駒師や販売店主が所属する県将棋駒協同組合の組合員に呼びかけて用意するという。そのため、候補全てが地元産になりやすい。今回は申込数が4組と少なく、絞り込まずに会場の天童ホテルへ運び込まれる。

18日午後5時からの会場の検分で、両対局者が、駒を盤上に広げたり感触を確かめたりして使う1組を選ぶ。決まらない場合は、立会人が意見を出すこともあるという。

天童市での名人戦開催は今回で11回目。2008年以降は天童ホテルが会場で、両対局者ともこの地で名人位を獲得している。佐藤名人は、16年の第5局で羽生名人(当時)を破り、初めてタイトルを獲得した。羽生竜王は08年の第6局で森内俊之名人(当時)に勝って名人に返り咲き、永世名人(十九世)の資格を得た。(上月英興)

藤井七段に触発され

将棋名人戦第6局の検分に自作の駒を出す国井孝(雅号・天竜)さん=2018年6月10日午後、山形県天童市田鶴町2丁目
将棋名人戦第6局の検分に自作の駒を出す国井孝(雅号・天竜)さん=2018年6月10日午後、山形県天童市田鶴町2丁目

駒作りを始めて70年になる天童市の国井孝(雅号・天竜)さん(83)は「虎杢(とらもく)」という木地でしま模様が目立つ駒を用意した。

模様の目立つ駒は目が疲れやすいと言われ、対局では避けられる傾向があるが、テレビで藤井聡太七段(15)が使っているのを見て出すことにした。書体は、模様が目立つよう小柄な「源兵衛清安」にした。

https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20180615005425_commL.jpg
https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20180615005425_commL.jpg

手彫りにこだわり、鋭さを保つため小刀は毎日2回以上研ぐ。「龍や馬などの曲線に、丸みが出るよう心がけている」と話す。

太字浮き立つ漆の技

将棋名人戦第6局の検分に自作の駒を出す桜井和男(雅号・掬水)さん=2018年6月12日午後、山形県天童市蔵増
将棋名人戦第6局の検分に自作の駒を出す桜井和男(雅号・掬水)さん=2018年6月12日午後、山形県天童市蔵増

2008年の名人戦第6局で自作の駒が使われた天童市の桜井和男(雅号・掬水〈きくすい〉)さん(70)は、しま模様のある「虎斑(とらふ)」の駒を用意した。

若い棋士は模様があっても気にしないと聞き、初めて虎斑の駒を出すことにしたという。書体は安定感があり、模様に負けないよう太字の「錦旗(きんき)」を選んだ。

将棋駒「錦旗(きんき)書虎斑(とらふ)」
将棋駒「錦旗(きんき)書虎斑(とらふ)」

文字を漆で浮き立たせる盛上げの技法を独学で習得したという。「精いっぱい作った。自然に使ってもらい、良い棋譜ができたらうれしい」

妥協ない独特の書体

将棋名人戦第6局の検分に出される駒を作った故・村川邦次郎(雅号・秀峰)さん
将棋名人戦第6局の検分に出される駒を作った故・村川邦次郎(雅号・秀峰)さん

昨年11月に71歳で亡くなった村山市の村川邦次郎(雅号・秀峰)さんが作った駒も出される。30年以上交流のある天童市の男性(57)が製作を依頼し、2016年夏に完成品を受け取った。木地は「虎斑」、書体は「水無瀬(みなせ)」だ。「妥協を許さない村川さんらしい、独特な書体。最高の仕事をしてくれた」

将棋駒「水無瀬書虎斑(とらふ)」
将棋駒「水無瀬書虎斑(とらふ)」

男性はこれまで一切使わずに保管してきたが、表舞台に出すのを決めた理由はこうだ。「もし使ってもらえれば、村川さんもきっと喜んでくれる」

16年の第5局で使用

将棋名人戦第6局の検分に自作の駒を出す桜井亮(雅号・淘水)さん=2018年6月12日午後、山形県天童市蔵増
将棋名人戦第6局の検分に自作の駒を出す桜井亮(雅号・淘水)さん=2018年6月12日午後、山形県天童市蔵増

桜井和男さんの息子、亮(雅号・淘水〈とうすい〉)さん(41)は、佐藤名人が2016年に天童ホテルで羽生竜王を破ってタイトルを獲得した名人戦第5局で使われた駒を出す。

木地は「赤柾(あかまさ)」、書体は「巻菱湖(まきのりょうこ)」。スタンダードで対局に使ってもらいやすいと思っていたという。「もう一度、使っていただければ光栄ですが……」

将棋駒「巻菱湖(まきのりょうこ)書赤柾(あかまさ)」
将棋駒「巻菱湖(まきのりょうこ)書赤柾(あかまさ)」

文字の線の1本1本をしっかり表現することにこだわる。「理想からはまだ遠い。今後も持ち味を生かしてより良い駒を出せれば」

情報源:山形)将棋名人戦の駒どれに? 天童の職人らの候補4作:朝日新聞デジタル



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