フェイク肉バーガーは地球を救うか (1/4ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ)

ほぉ・・・


インポッシブル・フーズの創業者で生化学者のパトリック・ブラウン氏は、同氏が地球上で最大の環境問題と呼ぶ「牛肉問題」を解決するため、「魔法の材料」を開発した。大豆の根や遺伝子組み換え酵母から作られたこの材料は、インポッシブル・フーズのベジタリアンバーガーに使われており、ファストフードチェーンのホワイト・キャッスルなど取扱店も増えている。

どちらがインポッシブル・バーガーか見分けがつかない(ブルームバーグ)
どちらがインポッシブル・バーガーか見分けがつかない(ブルームバーグ)

植物由来の血

この材料には赤身肉に多く含まれる「ヘム」という成分が含まれており、ブラウン氏の発明は「植物由来の血」と考えることもできる。同氏によれば、インポッシブル・バーガーがジューシーで本物の赤身肉のような味と香りがするのはこのヘムのおかげだ。

牛肉に似ていることはインポッシブル・バーガーの強みだが、これが悩みの種になる可能性もある。同社はあらゆる規制を順守しているが、透明性の観点から、商品の安全性について米食品医薬品局(FDA)の審査を受けている。これまでのところ、同社は基準を満たしていないというのがFDAの評価だ。FDAは、植物由来のヘムは極めて新しく、承認にはより多くの証拠が必要だと考えている。インポッシブル・フーズは再申請に対するFDAの回答待ちだと述べた。

米環境保護団体、環境防衛基金のトム・ネルトナー氏は「社会に大きな可能性をもたらす食品だ。私たちは科学を正しく使わなければならない」と話す。

インポッシブル・バーガーの製造工程(ブルームバーグ)
インポッシブル・バーガーの製造工程(ブルームバーグ)

安全性には議論も

ヘムには別の議論もある。ステーキ好きは大腸がんを発症する危険性があるとの研究結果が示されたのだ。鶏胸肉が好きな人にはこうした傾向は見られなかった。赤身肉を赤くするのはヘムであり、米ミネソタ大学のロバート・タースキー教授によれば、これが「問題」の原因だと考える研究者もいるという。

こうした議論はブラウン氏をいらだたせる。同氏はこれまで、ヒト免疫不全ウイルス(エイズウイルス、HIV)に関する真実を明らかにしたり、ゲノム研究を容易にしたり、研究と国民を隔てる「有料コンテンツの壁」に風穴を開けたりしてきた。米スタンフォード大学は同氏に好きな研究をするためのラボを提供したが、ブラウン氏はこの「世界一」の職場を去り、2011年にインポッシブル・フーズを立ち上げた。

世界の“牛肉中毒”は急を要する問題だ。畜産農業は驚くべきことに、地球上にある土地の30%を“食べ尽くして”いる。ブラウン氏は、牛ひき肉よりも土地使用が95%、水使用が75%少ないバーガーを開発することで、この問題に取り組んでいる。インポッシブル・フーズは投資家のビル・ゲイツ氏や米グーグルの投資部門、グーグル・ベンチャーズ、シンガポールの政府系投資会社テマセクなどから約4億ドル(約441億円)を集めた。

インポッシブル・バーガーのパティの密度を測る作業(ブルームバーグ)
インポッシブル・バーガーのパティの密度を測る作業(ブルームバーグ)

フェイクミート(肉代替食品)は今年、一大ブームになりそうだ。オランダの金融機関ラボバンクによれば、時々肉も食べる柔軟な菜食主義者「フレキシタリアン」がこうした傾向を支えている。490億ドル規模の赤身肉・鶏肉市場と比べれば小さく見えるが、代替タンパク質の売り上げは年率約17%の伸びを見せ、21年には8億6300万ドルに達すると米銀コバンクは予想する。

環境負荷軽減の期待

インポッシブル・フーズは、ビヨンド・ミートのビヨンド・バーガーなど、競合品との競争にも関心を持っているが、ブラウン氏の目標はさらに大きい。同氏は牛肉に取って代わりたいと考えているのだ。そして、FDAの承認獲得も目標の一つだ。

他の先進国では新製品を発売する前に政府の承認が必要だが、米国にはGRAS(一般に安全と認められる食品)という認証制度があり、専門家が安全と認めれば、FDAの承認なしに新成分を含んだ食品を販売することができる。インポッシブル・フーズは14年に専門家会議を開き、GRAS認証を得た。

法的には必要ないものの、同社は14年にFDAの初審査を受け、科学的証拠をより多く集める必要があるとの回答を得た。最近の申請ではFDAの要求を満たすため、1000ページ以上に及ぶ試験データを提出した。

インポッシブル・フーズの創業者、パトリック・ブラウン氏(ブルームバーグ)
インポッシブル・フーズの創業者、パトリック・ブラウン氏(ブルームバーグ)

FDAの反応を受け、一部の消費者や環境保護団体からは同社商品を市場から引き揚げるべきとの声も上がったが、インポッシブル・フーズの広報担当は「当社のバーガーは完全に安全だ」としている。

非営利団体「憂慮する科学者同盟」のリカルド・サルバドール氏は、インポッシブル・フーズの成功により「同社が取り除く環境負荷の恩恵は無限になるだろう」と述べた。

ブラウン氏は、人々が求めているのは肉ではなくヘムだが、牛は「ヘム配送システム」としては効率が悪いと話す。「この世界的な問題を解決するためには、食生活を変えるのではなく、私たちは間違った科学技術を使っていると理解することが重要だ。ヘムなしに肉好きの人が満足する肉を生産することはできない。ヘムは魔法の成分だ」と同氏は述べた。(ブルームバーグ Lydia Mulvany)

情報源:フェイク肉バーガーは地球を救うか (1/4ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ)


へぇ・・・