将棋・名人戦、息詰まる終盤 解説者もハラハラ:朝日新聞デジタル

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将棋の名人戦第5局の前夜祭で、対局の見どころを語る杉本昌隆七段(左から2人目)=2018年5月28日午後、名古屋市中区、上田潤撮影
将棋の名人戦第5局の前夜祭で、対局の見どころを語る杉本昌隆七段(左から2人目)=2018年5月28日午後、名古屋市中区、上田潤撮影

将棋界で一番歴史が古く、格式と伝統があるタイトルが名人戦です。竜王戦と並ぶビッグタイトルです。

江戸時代の世襲制から実力制に移行し、名人戦は約80年間、数々の名勝負を繰り広げてきました。実力制になってからの名人経験者は、歴代13人。通算5期保持した棋士にのみ与えられる「永世名人」の称号は、資格保持者を含めて、木村義雄十四世名人から数えてわずか6人です。

他のタイトルは、1年目の棋士が獲得することも理屈では可能ですが、名人だけは最短でも5年掛かり、A級八段にならないと挑戦権が得られません。その険しさゆえに、棋士の永遠の目標であるのが名人なのです。

佐藤天彦名人に羽生善治竜王が挑戦する第76期名人戦は、現在2勝2敗。29日から、名古屋市の万松寺で第5局が指されます。織田信長や徳川家康とも縁が深く、歴史ある名人戦との組み合わせで、最高の舞台です。

今回、羽生竜王にはタイトル通算100期が懸かっています。一方の佐藤名人も防衛を果たせば、名人位は通算3期。永世名人への足がかりにしたいところでしょう。

名人戦を含むタイトル戦には必ず「立会人」がいます。朝日新聞、毎日新聞共催の名人戦には副立会人も2人付き、朝日新聞の副立会人を私が務めます。

立会人は、対局が円滑に進むよう周囲に目を配り、勝負を最後まで見届けるのが仕事です。新聞やネット記事の解説、対局開始の合図や封じ手を開封するのも立会人の役目です。対局室にずっと座っているイメージを持たれるかもしれません。しかし、意外と立会人は対局室にいないもの。実は控室にいる時間の方がずっと長く、その理由は棋士の習性にあります。

目の前に将棋盤があったら思わず次の指し手を考えてしまうのが棋士の性(さが)。これは立会人も同じです。対局者の意表の一手に思わず目を見開く……なんてことはまずありませんが、驚きや動揺が伝わらないとは限りません。なので、対局者が集中しやすいよう、私たちは控室で対局の行方を見守るのです。控室にいればのんびりできるから……なんていう理由ではありませんので、念のため。なお、今回の記録係は私のまな弟子の宮田大暉三段。しっかり任務を果たしてもらいたいものです。

現地では29、30日に大盤解説会も開かれます。田中悠一五段、中座真七段が解説。聞き手も地元愛知出身の中澤沙耶女流初段や北村桂香女流初段と豪華です。解説会のだいご味は、解説者と観客の心理的な距離感。息詰まるような終盤戦では解説者も一緒にハラハラして、同じ思いを共有します。

私も解説会で「こんな手はどうですか?」と質問を受け、あまりの鋭さに「いやお強い、参りました」と感心したことも。こんなやりとりも解説会の楽しさです。お近くの方はぜひお越しください。私たちもファンの方に会うのを楽しみにしています。

すぎもと・まさたか 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2006年に七段。01年、第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太七段の師匠でもある。

情報源:将棋・名人戦、息詰まる終盤 解説者もハラハラ:朝日新聞デジタル


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