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ほぉ・・・


観客はNetflixなどから映画館に戻ってくるか?  Krists Luhaers on Unsplash
観客はNetflixなどから映画館に戻ってくるか?  Krists Luhaers on Unsplash
<映画業界では劇場の高級化によって集客アップと入場料アップを図るというのが主流だが、一部ではまったく違う発想も出てきた──>

あなたは映画館でSF映画やスペクタクル映画を見ている時、「今、この天井が落ちてきたらどうしよう……」などという想像をしたことはないだろうか? それが韓国のある映画館で現実に起きた。

4月7日韓国・京畿道にある廣州CGVの上映中の映画館の天井が12枚落ちてくるという事件が起こった。映画を観覧していた観客11人が軽傷を負い病院で手当てを受けた。落ちてきたのは60センチ×110センチの天井部分で、厚さが5mmで軽かったため大きな負傷者は出なかったものの、この映画館がたった6か月前にオープンしたばかりのCGVの映画館だったことに注目が集まった。

この事故に対し、CGV関係者は「韓国国内の物価上昇に伴い、家賃と管理費も値上がりしており、施設投資に使われる費用も継続して増加している状態。負担が大きかった」と訴えた。折しもCGVは映画料金の1,000ウォン(=約102円)の値上げを発表しており、この事故の4日後の4月11日から値上げされた料金で映画チケットを発売。韓国国内では「映画1万ウォン時代突入」と大きく報道されることとなった。しかし、事故直後のタイミングで値上げすることにCGVへの批判が集中した。

廣州CGVの天井崩落事故を伝える韓国のニュースMBCNEWS / YouTube

韓国の映画事情

CGVは韓国でトップシェアを誇るシネマコンプレックスチェーンである。その後をロッテシネマとメガボックスの2社が追いかけるという状況だ。今までに何度か料金の値上げはあったが、いつもまずCGVが発表し、その後に2社も続いて値上げするというパターンだった。今回も例外なく19日にはロッテが、そして27日からはメガボックスも各1,000ウォンの値上げをした。筆者が韓国に住み始めた2000年には6,000ウォンだった映画料金だが、この18年の間に4,000ウォン、率にして60%もアップしてしまった。

前回のCGVの値上げは2年前の2016年に行われた。しかし、この値上げスタイルがなんとも不思議で今までの方法とは違っていたため消費者を混乱させることとなった。その仕組みとは、館内での座席の位置別で価格を決めるというもので、最前列や通路側など見づらい席と、真ん中の良い席との差別化を図ったもので、場所により細かく価格設定されている。発表当時、窓口で買うよりも自動券売機やネット予約の利用が多い韓国では分かりにくいと不満が集中した。

映画料金の値上げを消費者団体が告発!

今回の3社の値上げ発表後、すぐに反対運動に動き出したのが韓国消費者団体協議会をはじめとする11の団体だった。13日には記者会見を開き値上げ反対を訴えた。その後、23日には3社が一斉に値段を上げたことに対し、公正取引委員会に告発。「韓国国内の映画館全体の97%を占める3社は事実上寡占構造である。他に安く良い商品を探すことのできるほかの品目とは違い、映画は観客が選択できない状態。マルチプレックス3社はより良いサービスを行うため競争しなくてはならないのにも関わらず、不当な共同行為を行っている」と訴えた。

しかし、映画1本の入場料が1万ウォン(=1,020円前後)だったら、日本の一般的な価格1,800円と比べて韓国の料金は安く感じるかもしれない。また、韓国ではよほど特別なとき以外、劇場で上映作品のグッズ販売は行っておらず、映画館で買えるものと言えば食べ物と飲み物ぐらいである。観客向けのパンフレットももちろん制作されておらず、マスコミ向けのプレスシートが日本でいうパンフレットとよく似ているが一般に出回ることは少ない。

そのせいか、ポップコーンや飲み物の充実度が高い映画館が多い。また、CGVは財閥のCJグループの傘下なので、映画館と一緒にCJ系列のカフェやレストランが併設されているところも多い。韓国人の知人が日本の映画館でのグッズの充実度やパンフレットに700円や800円も出して購入しているのを見て驚いたと言っていたのもうなずける。韓国の映画館では劇場に入ってからお金を落とすのは飲食だけなのだ。

割引きが充実しているアメリカ

では、アメリカの映画料金はどうなっているだろう。こちらはシネマコンプレックスのチェーンではある程度統一されているが、とはいえ千差万別である。ある映画館は安い料金で提供している代わりに音響やスクリーンの設備は古かったり、その反対に最新式の設備を導入しているところは10〜15ドルを超える料金だったり。

映画館の場所によっても料金が微妙に違っている。早朝割引や平日の曜日割引、さらに正午までならいくらといった細かい割引も多い。また、ミリタリー割引というものもある。こちらは現役だけでなく退役軍人にも適応される。軍人に敬意を持っているアメリカらしい割引である。徴兵制のある韓国でもたまに軍人割引を行っている映画館もあるが、特定の日のみだったり基地に近い街など一部のみのようだ。

日本では、レディースデーや映画の日に割引が行われているようだが、逆に一時的に値上げされたこともあった。2015年末に日本公開された「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は、TOHOシネマズが一部の劇場で通常より200円高い2,000円で上映し話題となった。世界的に見ても高い入場料であるのに、これ以上の値上げは勘弁してほしいものだ。

韓国でも値上げのタイミングは、常に話題の大作と共に行われている。今回の1,000ウォン値上げについても「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」公開のタイミングに合わせて行われたという声がネットに上がっていた。

映画ファンの救世主登場?

これまでにない新しい手法で映画館に観客を集めているMoviePass

値上がりし続ける映画入場料。ファンは今後どのように映画館で映画を楽しめばいいのか? そのヒントとなるシステムがすでにアメリカでスタートし大ヒットしている。それが「MoviePass」である。その名の通り月額たった9.95ドル(約1,100円)払えば映画が見放題(ただし1日1本まで)という映画好きには夢のような定額サービスで、昨年末には加入者が100万人を、さらに今年2月には200万人を突破して話題となった。

筆者もアメリカで早速加入し、映画を毎日映画館で見るようになった。ワシントンDCの映画料金は10ドル〜12ドル前後。1本見ただけで元が取れるのである。大体どこの映画館(小劇場やアート系映画館では使用できないところもあり)もカバーしている。もちろん最新の封切り映画もこのパスで見ることができる。

一方、アメリカの映画館チェーン「シネマーク」は、ムービーパスの勢いに対抗して、シネマーク独自のメンバーシップ制度を発表。こちらは入会で1か月1本無料などのサービスが受けられる。アメリカの興行界もさらなる値段サービスに動き出した。MoviePassは大きな起爆剤になったようだ。

MoviePassはNetflixやRedboxというDVDレンタルサービスでCOOだったミッチ・ロウという人物が2016年にCEOに就任。昨年から会費を9.95ドルに値下げして会員を増やしてきた。入場者数に合わせて映画館側にその分の料金を支払うということで、会員が映画を見れば見るほど会社としては赤字が増える。

果たしてそんな商売がいつまで続くのか、将来的にどういうビジネスモデルを描いているのか明らかにはされていないが、2017年に親会社がマーケティング会社になったことから、会員の映画鑑賞についての情報を分析して映画会社などへ販売するのではないかと言われている。

今ではネット環境があればどこでも映画が気軽に見られるようになった。NetflixやHuluなどの定額で見放題というネット配信サービスが消費者に受け入れられて定着している。ムービーパスはそれを映画館に「逆輸入」し、映画ファンのニーズにぴったりハマったというわけだ。日本や韓国の映画業界もただ値上げばかりを考えるのではなく、映画料金システムそのものを見直さなければいけない時期に来ているのかもしれない。

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映画館なんて最後に行ったのは何時だったかな・・・