放っておくとPCの“賞味期限”が切れる!? 情シスを悩ませる「Windows 10」運用 (1/3) – ITmedia エンタープライズ

PCのレンタル業者か・・・


数十万台規模のレンタルPCを企業に提供している横河レンタ・リース。最近、同社に多く相談が寄せられるのは、何かと話題のWindows 10。OSのアップグレード方式が変わったことで、なんと「PCに“賞味期限”が生まれる」という、とんでもない事態が起きているという……。

はじめまして。横河レンタ・リースで、ソフトウェアの製品開発を担当している松尾太輔と申します。

こう名乗ると「レンタル会社がソフトウェア製品の開発?」と不思議に思うかもしれませんが、当社は2003年に日本ヒューレット・パッカードからPC管理ツールの開発、販売事業を継承して以来、レンタル会社でありながら、ソフトウェアベンダーという顔も持っているのです。

とはいえ、当社のメインビジネスはもちろんPCのレンタルです。「レンタル」というと、CDやDVDなどに代表されるように、短期的にモノを貸すビジネスというイメージが一般的でしょう。

しかし、PCのレンタルはそうではありません。貸し出しているPCは全てレンタル会社の資産。PCが壊れれば修理し、再度セットアップしますし、資産として管理も行います。まさにPCの運用全般をアウトソースし、物理的なPCそのものさえも含めて提供する「サービス」なのです。最近では「Workspace as a Service(サービスとしての働くための空間の提供)」という言葉もあるほどです。

レンタル会社として、PCの運用管理に関するノウハウを持つとともに、レンタルからは想像できないような、PC管理ソフトウェアの開発ノウハウもある――横河レンタ・リースはそんな会社なのです。

情シスを悩ませる「Windows 10」、その理由は?

さて、そんなわれわれには日々、PCの運用に関する相談が多く寄せられます。最近、特に多いのが、Windows 10の運用に関する相談です。“Windows as a Service”というコンセプトのもと、OSアップグレードの方針が大きく変わったためです。

もちろん、Windows 10それ自体は素晴らしいOSだと思っています。今話題の働き方改革や生産性向上にも多くのメリットがあるでしょう。しかしながら、OSアップグレードの方法が大胆に変わったことから、その運用については、従来の常識が全く通じなくなってしまいました。

Windows 10は“Windows as a Service”というコンセプトのもと、OSアップグレードの方法をこれまでと大胆に変えたのが特徴です
Windows 10は“Windows as a Service”というコンセプトのもと、OSアップグレードの方法をこれまでと大胆に変えたのが特徴です

企業向けとして標準の“Semi-Annual Channel”では、半年に1回(3月と9月)のペースで「Feature Update」という大型アップデート(正確にはアップグレード)が配信されます。この方式では、2バージョン前までしかセキュリティパッチが提供されないので、1つのバージョンは最大で18カ月(猶予期間の2カ月を含む)しか使えないことになります。

Windows 10リリース当初は、リリース時期が不定期だったり、サポート期間が変更されたりと混乱もありましたが、最近は「3月と9月のリリース」「2バージョン前までのサポート」「1バージョンのサポート期間は18カ月」ときれいに整理された感もあるので、当面は変わらないでしょう。サポートを切らさないためにも、原則、半年に1回アップグレードが必要ということになります。この状況には、最初は当社も悩みました。

OSのバージョンアップに追い付かず、“賞味期限切れ”になるPCが出てくる

多くの企業では、PC環境を標準化するためにマスターイメージ(ゴールデンイメージ)を持っています。また故障に備えて、予備のPCを用意していることもあるでしょう。読者の皆さまはお気付きかと思いますが、放っておくと、これらのイメージや予備のPCがサポート切れになってしまうのです。さながら、時間の経過とともに“賞味期限切れ”を起こす食品のようなイメージでしょうか。

また、PCをクリーンアップするには、一般的には購入時のリカバリーメディア(※)を使うのですが、Windows10 の場合、このリカバリーメディアのバージョンも、半年で最新ではなくなり、18カ月でサポートが終わってしまうため、実質的に使えないものになってしまいます。

※購入時にプリインストールされているOSのイメージが保存されたメディア。多くはPCに付属しているか、別売で提供される

Windows 10になって以降、OSのバージョンアップで、在庫PCが“陳腐化していく”という事態に見舞われたのです(写真はイメージです)
Windows 10になって以降、OSのバージョンアップで、在庫PCが“陳腐化していく”という事態に見舞われたのです(写真はイメージです)

当然、当社のようなレンタル会社の在庫PCについても同じ状況です。PCはレンタル商品としてベストの状態に整えて在庫され、お客さまからリクエストがあれば、すぐに必要なだけのPCを提供します。役割が終われば返却され、社内で厳格な品質管理を行った後にまた在庫します。この在庫PCも、何もしなければ“賞味期限切れ”になってしまうのです。

Windows 7までは、OSが多少古くなっても、Windows Updateでパッチを当て続ければ、最新かつセキュリティ的にも安全な状態になりました。「サービスパック」という便利なシステムもありました。それを当てれば、あっという間に最新のWindowsです。しかし、Windows 10はそうもいきません。Feature Updateは、OSの中身を丸ごと入れ替えるような「アップグレード」なのです。

アップグレードなので、ドライバやセキュリティソフトウェア(ウイルス対策、多要素認証など)など、OSのコア(カーネル)で動くソフトウェアの互換性はシビアです。特に企業向けPCでは、その動作確認を、所有しているPC、予備のPCやそのマスターイメージまで全て同じように行おうとすれば、相当タフな仕事になるでしょう。

レンタルPCのプロとして、Windows 10運用のプロジェクトを発足

さらにPCのハードウェアそのものに関する心配も出てきます。これまで、PCリプレースの主な動機は、バッテリーがもたない、キーボードが反応しないといった「ハードウェアの経年劣化」でした。しかし、今後はハードウェアアーキテクチャそのものが陳腐化する可能性もあります。OSの進化から取り残される形で、2~3年で、まるで役に立たなくなるハードウェアが出てくるかもしれない――というわけです。

今後は、5~7年ごとに予算化する、大規模なPC入れ替えプロジェクトなんて現実的ではなくなるでしょうし、PCのリプレースサイクルは大きく短縮するはずです。

情報システム部門にとっては、PCを購入して所有することの負荷が増え続けています。「もはや、PCを購入(所有)することはリスクでしかない」と考えるユーザー企業も少なくありません。これが当社に多くの相談が寄せられるようになった理由です。

私たちは、この問題をレンタルPCのプロとして克服する必要がありました。難しいWindows 10の運用まで含めて、PCハードウェアを提供する「サービス」として提供することで、レンタルの価値は高まるはず――。

そのために、われわれは社内で専門のプロジェクトを発足し、課題解決に向けて対応してきました。激的に変わるWindows PCの運用。この連載では、当社のさまざまな取り組みを紹介しながら、これからの時代におけるWindows PCの運用管理について考えていければと思っています。お楽しみに!

情報源:放っておくとPCの“賞味期限”が切れる!? 情シスを悩ませる「Windows 10」運用 (1/3) – ITmedia エンタープライズ


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