ラベルはがした方がいいですか?羽生戦を前に驚きの配慮:朝日新聞デジタル

ふむ・・・


将棋|名人への道 藤井聡太:朝日新聞デジタル

頂点まで「あと2勝」という大舞台を控えていても、藤井聡太六段(15)は落ち着いていた。

17日に行われた第11回朝日杯将棋オープン戦(朝日新聞社主催)の準決勝。藤井六段は1次予選から勝ち上がり、8連勝でここまでコマを進めた。1日には、順位戦の昇級決定に伴って五段に昇段したばかりだが、この日、準決勝と決勝を制して優勝すると、規定に伴って史上最年少で六段に昇段できる。相手は、過去5回の優勝を誇る羽生善治竜王(47)。非公式戦では2度対戦し、1勝1敗だったが、公式戦で戦うのは初めてだ。

朝日杯将棋オープン戦本戦の準決勝に臨む羽生善治竜王(左)と藤井聡太六段=17日午前10時41分、東京都千代田区、越田省吾撮影
朝日杯将棋オープン戦本戦の準決勝に臨む羽生善治竜王(左)と藤井聡太六段=17日午前10時41分、東京都千代田区、越田省吾撮影

会場は有楽町朝日ホール(東京都千代田区)。対局開始の約1時間前、先手番と後手番を決める振り駒が控室で行われた。先手番を握ったことを確認した藤井六段は、コクンとうなずき、退室間際、運営担当者にこう尋ねた。

「ペットボトルのラベルは、はがした方がいいですか」

羽生善治竜王との準決勝で、初手を指す前にカフェラテでのどを潤す藤井聡太六段=17日午前、東京都千代田区、恵原弘太郎撮影
羽生善治竜王との準決勝で、初手を指す前にカフェラテでのどを潤す藤井聡太六段=17日午前、東京都千代田区、恵原弘太郎撮影

持参したカフェラテを対局室に持ち込むつもりだったが、協賛企業の飲み物が用意されていたため、配慮したのだ。大勝負の前の中学生とは思えない言葉に、居合わせた関係者らは目を丸くした。

午前10時25分、藤井六段と羽生竜王がステージに現れた。約600人の観客が見つめる公開対局。テーブルの上の盤に駒を並べる両者の横で、カメラのシャッター音が鳴り響く。そして10時30分、対局開始。藤井六段はカフェラテを一口飲んでから、初手の▲2六歩を指した。

多くの報道陣が注目する中、対局に臨む羽生善治竜王と藤井聡太五段(左)=17日午前、東京都千代田区、柴田悠貴撮影
多くの報道陣が注目する中、対局に臨む羽生善治竜王と藤井聡太五段(左)=17日午前、東京都千代田区、柴田悠貴撮影

藤井六段が目指したのは得意戦法「角換わり」。羽生竜王はそれを避け、最近流行している「雁木(がんぎ)」を志向した。対局後、羽生竜王は「藤井六段はどんな形でも対応できるタイプ。せっかくなので、最新型で戦おうと思った」と明かした。

ただ、藤井六段にとっては、この戦法も研究の範囲内。戦いが始まる頃、検討室で戦況を見守っていた師匠の杉本昌隆七段(49)は「藤井が不満のない進行です」と話した。

勝負どころの中盤戦。盤面中央で激しく駒がぶつかりあった局面で、藤井六段が歩を打って王手をした。79手目▲4三歩(1図)。羽生竜王の陣形を弱体化させる好手だった。

1図・▲4三歩まで
1図・▲4三歩まで

羽生竜王は迷った。残り5分あった持ち時間を使い切り、藤井六段と同じ1分将棋になった。苦心の末に選んだ手は△4三同金左。相手に▲2三飛成と竜を作る手を許す大胆な手だ。藤井六段は「あまり予想しておらず、驚いた」という。

朝日杯将棋オープン戦本戦の準決勝で対局する羽生善治竜王(壇上左)と藤井聡太五段=17日午前10時37分、東京都千代田区、越田省吾撮影
朝日杯将棋オープン戦本戦の準決勝で対局する羽生善治竜王(壇上左)と藤井聡太五段=17日午前10時37分、東京都千代田区、越田省吾撮影

しかし、秒読みの中、意外な手を目の前にしても冷静だった。逆に、挽回(ばんかい)を図った羽生竜王にミスが出てしまう。羽生竜王の玉将が徐々に追い詰められていく。藤井六段の指し手は緩まない。

午後0時30分。羽生竜王が「負けました」の声と共に、頭を下げて投了。世紀の対決は、中学生棋士の劇的な勝利で幕を閉じた。「自分の全力を尽くした結果、勝つことができてとてもうれしく思っています」。藤井六段は、そう喜びを語った。

インタビューの後、検討室で両者が対局を改めて振り返った。藤井六段は遠慮がちに、黙々と手を進める。しかし、その指し手は読みの深さを雄弁に物語っていた。

1図の局面で、▲4三歩への対応として自然な△4三同金右も調べられた。以下、▲6三角△8二飛▲5五銀△9九角▲4四歩△同銀▲同銀△同金▲4一銀△3一金▲5二銀打△7六歩▲2三飛成。藤井六段は読み筋とばかりに手を進め、2図になった。この局面を前にして、羽生竜王は「これ、詰めろなのかあ」と声を上げた。一見、角と銀の働きの効率が悪そうだが、後手が放置すると、▲4三歩△同金▲3二銀成△同金▲4一銀成というパズルのような手順で後手玉が詰む。詰将棋を得意とする藤井六段の鋭さが垣間見える場面だった。

2図・▲2三飛成まで
2図・▲2三飛成まで

藤井六段はこの後、決勝で、タイトルを獲得したこともある広瀬章人八段(31)を破り、「最年少棋戦優勝」を果たした。しかも、参加棋士を若手などに限定したトーナメントではなく、全棋士参加棋戦で、出場した160人の棋士らの頂点に立ったのだ。

「中学生での優勝」は、今回がラストチャンスだったが、それをきっちりと生かした。羽生竜王は「中学生の優勝は空前絶後でしょう」と脱帽した。

終局後、来場者を前に、大きな将棋盤を使って対局を振り返る羽生善治竜王(左)と藤井聡太六段=17日午後、東京都千代田区、柴田悠貴撮影
終局後、来場者を前に、大きな将棋盤を使って対局を振り返る羽生善治竜王(左)と藤井聡太六段=17日午後、東京都千代田区、柴田悠貴撮影

藤井六段が、加藤一二三九段(78)とデビュー戦を戦ったのは2016年12月。まだ1年2カ月ほどしか経っていないが、この日、将棋盤に向かった時の藤井六段の精悍(せいかん)な顔つきからは成長が感じられた。

優勝を決めた藤井六段に控室で追加の取材をした。締めていたえんじ色のネクタイが目に留まったため、「新しいネクタイ」ですかと問うと、「そうだと思います」。照れくさそうに白い歯を見せたその表情は、やはり少年のものだった。(村瀬信也)

情報源:ラベルはがした方がいいですか?羽生戦を前に驚きの配慮:朝日新聞デジタル


ほぉ・・・