羽生竜王の望み砕いた「焦点の歩」 藤井、2度の妙手:朝日新聞デジタル

ふむ・・・


藤井聡太五段(左)と対局する羽生善治竜王=17日午前、東京都千代田区、柴田悠貴撮影
藤井聡太五段(左)と対局する羽生善治竜王=17日午前、東京都千代田区、柴田悠貴撮影

中学生棋士の藤井聡太五段(15)が第11回朝日杯将棋オープン戦で優勝し、史上最年少の全棋士参加棋戦制覇・六段昇段を果たした。準決勝の羽生善治竜王(47)戦では、絶妙なタイミングで放った2度の「焦点の歩」で勝利をたぐり寄せた。

羽生×藤井戦のポイント
羽生×藤井戦のポイント

17日、東京・有楽町であった準決勝・決勝には、公開対局とあって、世紀の一戦を生で見ようと約600人のファンが詰めかけた。100人以上の報道陣が待ち構える中、2人が壇上に上がり、午前10時30分に対局開始。相居飛車の戦いとなった。

羽生×藤井戦ポイント
羽生×藤井戦ポイント

中盤、1筋からの攻めで先にポイントを挙げたのは藤井五段だったが、羽生竜王も反撃に出て攻め合いに突入した。中央の勢力圏争いから藤井五段が5五の地点で銀をぶつけ、羽生竜王がその銀を取ったところで、藤井五段に好手が出た。

すでに40分の持ち時間がなくなって1手60秒未満で指さなければならない「秒読み」になっていた藤井五段が▲4三歩(A図)。相手の金2枚と王将が利いているところに打つ「焦点の歩」だった。この王手が羽生竜王を悩ませた。5二の金で取ると隙ができ、6三に絶好の角を打たれてしまう。王で取ると▲5五銀とされ、次の▲4四歩が厳しい。

打った藤井五段も「どちらで取られるか全く分からなかった」と言う。

ここで羽生竜王も持ち時間を使い切って「秒読み」に入り、ぎりぎりまで考えて△同金左と3二の金で取ったが、その後に乱れる。△同金左以下は▲5五銀△9九銀▲9八金△8八歩▲2三飛成と進み、藤井五段が飛車を成り込むことに成功した。△9九銀が羽生竜王が悔やんだ失着。△9九角(先手が▲9八金なら5五の銀を取れる)ならまだ難しかったという。

だが羽生竜王は「苦しい」と思いながらも角を自陣に打って決め手を与えず、挟撃態勢を築いて藤井陣に迫っていく。最後に自陣角を働かせれば逆転も見えるという局面まで迫った。

羽生×藤井戦ポイント
羽生×藤井戦ポイント

だが藤井五段はその望みを打ち砕く好手を用意していた。99手目の▲4三歩(B図)。2度目の「焦点の歩」だ。

後手の3二の角が7六や6五に出られれば先手陣への脅威となるが、焦点の▲4三歩がそれを遮る手となった。羽生竜王も対局後「▲4三歩で(形勢が)はっきりしてしまった」。

後手は△4三同角と角で取りたいが、3二の角が動くと▲1二竜と王手をかけられて困る。羽生竜王は仕方なく△4三同玉と取ったが、角道が止まってしまった。勝利を大きく引き寄せる一着だった。藤井五段は▲4四銀から一気に追い詰めることに成功した。

午後0時30分、藤井五段の119手目を見て羽生竜王が「負けました」と頭を下げると、静まりかえっていた会場から大きな拍手が起こった。

対局後、藤井五段は「羽生先生は自分が将棋を始めたころから大きな存在だったので、公式戦で対局するのが一つの夢だった。そこで勝利をおさめることができた。感無量です」と話した。

〈指し手〉先手・藤井五段 ▲2六歩△8四歩▲7六歩△3二金▲7八金△8五歩▲7七角△3四歩▲6八銀△4四歩▲4八銀△6二銀▲4六歩△6四歩▲4七銀△6三銀▲5六銀△5四銀▲6九玉△4二銀▲7九玉△5二金▲2五歩△3三角▲3六歩△4三銀上▲3七桂△4二玉▲9六歩△9四歩▲1六歩△1四歩▲4八金△7四歩▲4五歩△同歩▲3三角成△同桂▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛△4四角▲7七角△同角成▲同銀△7三桂▲1七角△4四角▲同角△同銀▲1五歩△同歩▲2四歩△同歩▲1五香△1二歩▲2四飛△2三歩▲2九飛△7五歩▲6六銀△9五歩▲同歩△9七歩▲同香△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8一飛▲3五歩△同銀▲5五銀左△8八歩▲同金△5五銀▲4三歩(A図)△同金左▲5五銀△9九銀▲9八金△8八歩▲2三飛成△8九歩成▲6八玉△3二角▲2二竜△2一歩▲1一竜△3六桂▲3八金△7六歩▲2三歩△7七歩成▲5八玉△4四金▲4三歩(B図)△同玉▲4四銀△同玉▲6六角△5五銀▲同角△同玉▲5六銀△5四玉▲2二歩成△4三角▲7四歩△4六銀▲7三歩成△7九角▲5五銀打△同銀▲同銀△同玉▲4七桂まで、119手で藤井五段の勝ち

観戦した早稲田大教授マイク・モラスキーさんの話

会場で観戦しました。40年来の将棋ファンです。普段は白髪が目立つ観客席に、今日は若い女性の姿もたくさん。社会現象になっていることを実感しました。歴史的対局に神秘的なオーラを求めていて、それを生で感じたいという気持ちかもしれません。

あれだけ若くして、藤井五段は羽生竜王と同様に、自由自在に指しこなしています。秒読みに入ってからは、時間切れ寸前に「焦点の歩(▲4三歩)」を放ち、流れが変わったように感じられました。大勢の人がいるのに、ホールにはほとんど音がなく、沈黙に包まれながらの頭脳のやりとりでした。

将棋観戦の魅力は、棋士一人一人の個性とそれぞれの美学が鮮明に表れることです。コンピューター将棋との大きな違いを感じました。(聞き手・江戸川夏樹)

情報源:(文化の扉)特別編 2度の好手、絶妙 「焦点の歩」、羽生竜王の望み打ち砕く (朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュース

情報源:羽生竜王の望み砕いた「焦点の歩」 藤井、2度の妙手:朝日新聞デジタル


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