初任給40万円 中国・華為になびく日本人たち

ハァ・・・


「初任給40万円」「これじゃ優秀な人はどんどん流れていってしまうね」――。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の求人情報がインターネットを騒がせたのはこの夏のこと。スマートフォンの出荷が1億台を突破し米アップルを追い上げる同社は、2018年初めにも千葉県船橋市に第2の研究拠点を開設する。給料だけではない。一線の研究者を引き寄せるファーウェイ独自の体制とは。

初任給40万円 中国・華為になびく技術者たち
初任給40万円 中国・華為になびく技術者たち

■ソニー狙い「引き抜き拠点」

「欧米企業にやっと肩を並べたレベルで、珍しくはない。優秀な人を取るためのグローバルスタンダードです」。初任給40万円について、ファーウェイ・ジャパン(東京・千代田)の広報からはこんなコメントが返ってきた。新人採用は全て理系で、12年から毎年10人前後をとっている。「15年から初任給を徐々に上げてきたことで、最近では優秀な人材が集まってきた」(広報)という。

就職情報サイト「リクナビ2018」によると、ファーウェイは9月~翌3月の秋採用を始めており、理工系専攻の大卒・大学院修了予定者を対象に「アルゴリズムエンジニア」「カメラオプティクスエンジニア」など3職種を募集している。給与は学士卒で40万1000円、修士修了で43万円を提示。同じくリクナビで公開されているソニーの「大卒21万8000円、修士卒25万1000円」(16年実績)と比べても突出している。

今年夏、ファーウェイは東京・品川駅前のビルに画像認識技術の研究拠点を開いた。横浜の研究所が手狭になったためで、数十人が在籍する。あるヘッドハンティング会社の社長は「品川に事業所のあるソニーやキヤノン、東芝の技術者狙いだ」と話す。この3社を含め、マックス年収3000万円ですでに5人前後が引き抜かれた。「中国本社はさらに高いが、日本の技術者でそんなにもらっている人はいない。国内転勤もないので条件は良い」(同社長)

入社2年目の高橋秀子(26)は、中国の大学でバイオテクノロジーを専攻し、帰国して新卒で同社に入社した。日本企業は中堅メーカー1社だけ比較したが、「大学時代と同じように競争が厳しい世界」だと覚悟してファーウェイに飛び込んだ。「今年の部門予算はどうする?」。入社2年目でも社内会議で発言を求められる。

「正直、インセンティブが大きい」。他社との新規事業の立ち上げに関わる千田充治(38)はこう断言する。今はソフトバンクとの共同実験など、職場のエースとして活躍する。同僚の日本人も国内電機大手や通信キャリアからの転職組がほとんどだ。

プロジェクトを完遂すれば、年収が日本企業の数倍になるケースもある。千田は「給料だけでなく、実力がちゃんと評価される仕組みがモチベーション向上につながる」とも強調する。国内メーカーで無線通信の技術者として働いていた時は典型的な年功序列で、キャリアアップに限界を感じていた。

生産工程を研究する華為の新拠点は18年初めにも稼働する(千葉県船橋市)
生産工程を研究する華為の新拠点は18年初めにも稼働する(千葉県船橋市)

■研究開発費、日立の4倍

「今度も人材が流出しないかと、人事部門はぴりぴりしている」。通信機器でファーウェイのライバルとなるNECの中堅社員はこう話す。千葉県・船橋市にあるDMG森精機の工場跡地はいま、ファーウェイの第2研究所への衣替えが進行中だ。早ければ18年年初にも稼働する。

ファーウェイは2005年に日本に進出。13年に横浜研究所を開設した。横浜研究所が上流の製品開発に特化しているのに対し、船橋は、ものづくり部分まで踏み込んだ研究ラボにする。ここでの採用対象となるのは電機や精密業界の工場での長い経験をもつ日本人技術者だ。製造プロセスを丸ごと研究する実験場にする予定で、「採用枠は数十人だが、すでに十数人は確保した」(幹部)という。

2016年の売上高は約8兆7000億円で、富士通とNECの合計を超えた。創業から30年でソニーを超え、日立製作所に迫る。実はスマホの販売は売り上げの一部でしかなく、主力は携帯電話の基地局に設置する通信機器などだ。1987年に人民解放軍出身の任正非が、電話交換機を扱う販売店を立ち上げたのが始まりで、農村部から中国全土、新興国を順に開拓してきた。

めったにメディアに登場しないことで知られる(ファーウェイ創業者の任正非CEO、2015年のダボス会議で)
めったにメディアに登場しないことで知られる(ファーウェイ創業者の任正非CEO、2015年のダボス会議で)

任の口癖は「財散人集」。言葉どおりファーウェイは、その売上高の10%を研究開発費に充てている。16年は1兆2000億円で日立の4倍近く、トヨタに迫る。潤沢な研究開発費は世界中で優秀な技術者を集めてきた。

■「34歳以上リストラ」のうわさ

中国・深圳の本社は、さながら成果主義と報酬体系の実験場のようだ。

「今年の配当金はいくらだろう?」。毎年4月になると、同社の社内SNS「心声社区」には配当についての書き込みが増える。華為は、国営企業でもなければ上場企業でもない。株式は任の持ち分以外、98.6%を8万人の中国人社員がもつ。入社15年以上になると100万元(約1700万円)の配当を受け取る社員もいる。その半面、過酷な社内競争もある。

今年2月、中国の旧正月にあたる春節の時期に、社内でこんなうわさが広まった。「34歳以上の社員のリストラが始まった」。同社の人事査定は、評価に応じて4段階に区分けされる。A、Bであればボーナスが支給され、30歳で部長級に飛び級するのも可能な代わり、Cは自主退社を迫られ、Dは雇用契約を打ち切られる。この評価が今年からは四半期に1回と、さらに頻繁になったこともうわさに油を注いだ。

一般社員も管理職も例外なく社員の5%程度が定期的に淘汰されるシステム。リストラ説について、会社側はすぐに根も葉もないデマだと否定したが、その後の社内向けの談話で任は「会社は奮闘しない社員に給料を出すつもりはない」とクギをさした。中国本社の平均年齢は30代前半。社内外では今でも「ファーウェイは45歳で退職」という定説が消えない。

■「世界のトップ研究者700人を採用」

「過去3年間、全世界で700人規模のトップ級の科学者を採用した」。最高財務責任者(CFO)の孟晩舟は昨年秋の講演でこう語った。現地の人材を吸収して勢力を広げる。そのやり方は日本だけではない。

イタリアのミラノ。マイクロ波レーダーの研究が盛んなこの地には、マイクロ波に特化した研究開発センターを置いている。独シーメンスなどから研究者を引き抜き、専門チームが部品開発を手掛ける。数学者が多いロシアではコンピューターのアルゴリズム(計算手法)研究、インドのバンガロールにはソフトウエア開発を任せる。いずれも100人規模の開発センターへと陣容を拡大してきた。

日本で通信技術の展示会を開催した(16年11月、千葉市美浜区)
日本で通信技術の展示会を開催した(16年11月、千葉市美浜区)

こうしたスケールメリットを生かした製品の品質や、価格競争力はもはや富士通やNECといった日本の通信機器メーカーが追いつけない領域に達しつつある。

日本では大手通信キャリアのうち、ソフトバンクグループがいの一番に機器を採用した。サーバーなどのIT機器ではサイバーエージェントやバンダイナムコといった大手企業の採用が広がっている。通信キャリア首脳は「ファーウェイ製品は(富士通やNECなど)国内メーカーの半額。使わないと駄目かもしれない」とつぶやく。

日本ではあまり知られていないが、同社の社内SNS「心声社区」は外部にも公開されている。“本音を自由に言い合える場所”という意味の造語で、社員の不満を直接経営に反映させるために設置したという。未上場ゆえに透明性が低く、創業者の任が人民解放軍に所属していたことで中国政府とのパイプも警戒されるファーウェイだが、こうした取り組みは中国国内はもちろん、日本でも珍しい。停滞する日本のITメーカーから技術者をひきつける吸引力の理由は、待遇や実力主義だけでもなさそうだ。

=敬称略

(薬文江、阿部哲也)

情報源: 初任給40万円 中国・華為になびく日本人たち


なんだかなぁ・・・