記者の眼 – 「遅くて使いものにならない」という光回線への声、定額制も限界か:ITpro

えぇ・・・


あまり話題になっていないが、インターネット接続事業者(プロバイダー)の提供する光回線サービスが「遅くて使いものにならない」という声が一部で出ている。「モバイル回線のほうがまだまし」とさえ言われるほどだ。規格上の通信速度で1Gビット/秒をうたったサービスが主流となっているにもかかわらず、何が起こっているのか。

同現象は、NTT東西の「フレッツ光」を使ったプロバイダーの一部サービスで起こっている。NTT東西の基幹網「NGN(次世代ネットワーク)」とプロバイダーを接続するネットワーク機器(網終端装置)が恒常的な混雑状態に陥っているのだ。顧客の新規獲得を抑えることで対処しているプロバイダーもある。

この問題はNTT東西が設けた網終端装置の増設基準に起因しており、総務省の有識者会議が年内にも一定の結論を出す見通し。筆者が気になっているのは、その先の展開である。プロバイダーはトラフィック増加に長年苦しんでおり、これまでなんとかしのいできた。だが、いよいよ限界を迎えそうなのだ。「あと2、3年も持たないのではないか」「最後は従量制に切り替えるしかない」といった悲痛の声が聞こえてくる。

増設基準はセッション当たり100kビット/秒

上記の問題を補足すると、ユーザーがNTT東西のNGN経由でプロバイダーと接続する方法には「PPPoE方式」(IPv4/IPv6、トンネル方式)と「IPoE方式」(IPv6、ネイティブ方式)の2種類がある。

ユーザーがNGNを介してプロバイダーと接続する方法 出所:総務省(NTT東西の提出資料)
ユーザーがNGNを介してプロバイダーと接続する方法
出所:総務省(NTT東西の提出資料)

後者のIPoE方式は「VNE」や「代表ISP」と呼ぶ16社に接続事業者が限られるものの、大容量のゲートウエイルーターを利用するので混雑しにくく、自由に増設できる。一方、前者のPPPoE方式はNTT東西が増設を判断しており、その基準が実態に見合っていないとしてプロバイダーが見直しを求めている。

具体的には、網終端装置に収容するPPPoEのセッション数が基準となり、1Gビット/秒で接続する大型装置で1万セッションなど。「セッション当たりの帯域」に換算すると、100kビット/秒まで低下しなければ増設できないことになる。

PPPoE方式における網終端装置の増設基準 出所:総務省(NTT東西の提出資料)
PPPoE方式における網終端装置の増設基準
出所:総務省(NTT東西の提出資料)

もっとも、全てのユーザーが常に通信するわけではない。統計多重効果を見込めるため、さすがに100kビット/秒まで低下することはないが、「遅くて使いものにならない」といった声が出るのも当然である。業界事情に詳しいユーザーを中心にPPPoE方式のサービスをやめ、IPoE方式に乗り換える動きも進んでいる。

NTT東西がこうした増設基準を設けた理由はコスト負担の増大を抑えるため。PPPoE方式の網終端装置のコスト負担は、NTT東西の約9割に対し、プロバイダーは約1割である。プロバイダーの要望に応じて増設すると、NTT東西の負担ばかりが雪だるま式に増えていくので「たまらない」(幹部)というわけだ。プロバイダーがコスト負担を増やすのであれば見直しも構わないとする。

PPPoE方式とIPoE方式の設備の違い 出所:総務省(NTT東西の提出資料)
PPPoE方式とIPoE方式の設備の違い
出所:総務省(NTT東西の提出資料)

実際、NTT東西は自らのコスト負担を抑え、増設基準を緩和したメニューを提供済み。コスト負担をNTT東西が約6割、プロバイダーが約4割としたメニューでは、増設基準をセッション当たりの帯域で500kビット/秒に緩和した。プロバイダーの全額負担を条件に網終端装置を自由に増設できるメニューも用意する。

プロバイダーは依然として増設基準の引き下げ、または増設基準を「トラフィック」に変えることを要望しているが、結局はコスト負担が争点。NTT東西はコスト負担の増加につながる見直しには断固反対の姿勢を示している。

一方、プロバイダーにとっては、増設基準のないIPoE方式を採用する選択肢もある。しかし、IPoE方式は接続事業者が16社に限られ、そもそものコスト負担がPPPoE方式に比べて高い。中小のプロバイダーには大きなハードルとなっている。

4K/8K映像のネット配信が苦境に追い打ち

総務省は有識者会議でわざわざ同問題を取り上げたこともあり、PPPoE方式とIPoE方式のどちらについても一定の緩和措置を期待できそう。ただ、NTT東西に一方的にコスト負担を押し付けるわけにもいかず、抜本的な対策とはなりそうもない。

改めてプロバイダーの置かれた状況を整理すると、今後もトラフィック増加でますます厳しくなっていくのは明らか。これまではユーザー数の増加による収益拡大で設備増強をまかなってきたが、いまや昔の話である。最近ではモバイルへのシフトなどでユーザー数の減少も目立ち、設備低廉化(NGNに接続する光回線を含む)による恩恵もあまり期待できなくなってきた。

かたやトラフィックは容赦なく増え続けている。総務省によると、2017年5月時点におけるブロードバンド契約者の総トラフィック(下り)は前年同月比39.0%増。1年前は同50.0%増、2年前は同58.4%増だった。

ブロードバンド契約者の総トラフィックの推移 出所:総務省
ブロードバンド契約者の総トラフィックの推移
出所:総務省

米グーグルの「YouTube」をはじめとした動画配信サービスをテレビ感覚で垂れ流しにするユーザーが増え、中小のプロバイダーでは「毎月のWindows更新プログラムの配信日になると、決まって遅いとのクレームが来る」(関係者)ような有り様という。

ただでさえ厳しいにもかかわらず、今後は4Kや8Kの映像配信でさらにトラフィックが跳ね上がる。NHKや民放がテレビ番組のネット配信を本格的に始めようものなら確実に耐えられないとされる。総務省の有識者会議では、日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)が「2020年に東京オリンピックが始まっても地方(の中小プロバイダー経由)でまともに視聴できない」(立石聡明副会長兼専務理事)と訴える場面もあった。

大手プロバイダーも例外ではない。ユーザー数の規模が大きいゆえにトラフィック増加の影響が「中小以上に深刻に出る可能性がある」(同)。

従量制で応分負担が濃厚か

米国ではトラフィック増加に対処するため、コンテンツ事業者から費用を徴収する動きも見られる。だが、特定コンテンツの優遇を巡っては、「ネットワーク中立性」の問題がある。「資金力のあるOTT(Over The Top)がますます強くなるだけであり、公平・平等を是とするインターネットの精神にもとる」として反対の意見が少なくない。案としてはだいぶ前からあるが、交渉を含め、全く進んでいないのが実情だ。

となれば、残るは値上げしかない。トラフィック増加のたびに値上げするのは避けたいため、従量制への切り替えが濃厚とされる。モバイル回線と同様、毎月の通信量に上限を設け、超えた場合に速度を制限したり、追加負担を求めたりするものだ。「現在のインターネットは無駄なトラフィックであふれている。ユーザーに応分負担を求めることで見直す良いきっかけになるかもしれない」(あるプロバイダー)といった声まである。

定額制を維持しつつ、品質に応じて料金に差を設ける案もある。ただ、品質の違いは説明が難しく、設備に相当の自信があるプロバイダーでなければ詳細を開示できない。やはり従量制が本命となる。現状はプロバイダーの“我慢比べ”が続いているが、抜本的な解決策が見つからない限り、従量制への移行は濃厚な気配である。

情報源: 記者の眼 – 「遅くて使いものにならない」という光回線への声、定額制も限界か:ITpro


定額じゃないと困るよ・・・