脳裏よぎる過労死…トイレで絶望するアダルト誌編集者ら 出版社のブラックな実態:イザ!

中国語ねぇ・・・


【銀幕裏の声】

ブラック企業、辞めました-。徹夜続きの“デスマ(デスマーチ=死の行進)”を強要されるIT企業社員の実話を描いた映画「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」が8年前に公開され話題を集めたが、老舗出版社の元編集マン、初田宗久さんの労働状況も過酷だった。新刊「ブラック企業やめて上海で働いてみました」(扶桑社)で明かす体験談は壮絶を極める。退社後、習得した中国語を生かし、中国のメーカーに就職した初田さんは言う。「私は40歳近くの“アラフォー”で会社を辞め、間もなく50歳の“アラフィフ”おじさん。辞めて正解かどうか分かりませんが、間違いなく今の方が楽しいです」。元敏腕編集マンが吐露する苛烈なデスマの日々とは…。(戸津井康之)

続々とトイレに逃げ込む編集マン

「初田。初田。初田。初田はどこだあ!」

深夜の社内で編集長が怒鳴り散らしながら自分を探しまわる声を、初田さんは何度もトイレの中で聞いたという。

誰もが知る東京の老舗出版社の編集部で月刊誌などを担当、中堅の編集マンとなっていた初田さん。だが、月刊誌の締め切り前の深夜残業や徹夜が増え続ける状況に、しだいに体調を崩すようになっていた。そんな苛烈な職場で、少しでも休憩しようと会社のトイレの個室の中に逃げ込む時間が増え始めていたのだ。

「あと半年間、このペースのまま仕事をしていたら過労死してしまう…」。トイレの便器の上で頭を抱えたままうずくまり、初田さんはこう死を実感したという…。

初田さんは昭和45年、愛知県生まれ。早稲田大を卒業後、テレビ製作会社などを経て、東京都内の老舗出版社へ就職する。

当時、発行部数数十万部を誇ったベストセラーの男性ビジネス誌などの編集デスクなどを担当していた優秀な編集マンだったが、インターネットの普及で出版不況の時代がやってくる。

「『何か売れるアイデアを出せ!』と上司に怒鳴られましたが、一度落ち始めた部数は、どんな企画や特集を打ち出しても食い止めることはできませんでした」と初田さんは振り返る。

過労死か窓際か!?

入社して11年。初田さんは男性ビジネス誌の売り上げ不振の責任を取らされ、廃刊寸前のアダルト誌の編集担当に左遷させられたという。

初田さんはアダルト誌と言って謙遜するが、同誌はかつて人気アイドルのカラーグラビア特集などでベストセラー誌として隆盛を誇った、

タイトルを知らない人がいないほどの有名な青年誌だ。だが、深刻な出版不況を前に、初田さんが異動した後も、売り上げを回復させるための方策はなかった。

しかし、ここでも編集長の執拗(しつよう)なパワハラは続いたという。「月刊誌の売り上げ減分を隔月のムック本の発行によって補え、という方針。つまり編集者に、もっと働けという過酷な命令でした」

雑誌数が増えた分、編集作業はより過酷になり、編集部員たちの徹夜の日数はさらに増えたという。

「あまりのしんどさに耐えかねて編集部員たちは次々と編集長の目を盗んでトイレへ駆け込むのですが、5~10分休むのが精いっぱい。労働量は増え続ける一方で、鬱病を発症する部員が相次ぎました」

辞められない負のスパイラル

「典型的なブラック企業でした」と初田さんは振り返る。

過労死が頭をよぎるなかで、それでもなぜ会社を辞めなかったのか?

「雑誌が廃刊になったら、担当の編集者はその責任を取らされ、雑誌の配送センターがある“埼玉の倉庫送り”というパターンが編集部内の常識でした。窓際族送り、つまり事実上のリストラ勧告です。過労死か窓際か。そんな恐怖心で編集マンたちは働かされていたのです」と初田さんは打ち明け、こう続けた。

「過労死も窓際も絶対に嫌ですが、40歳のアダルト誌の編集マンが、今、出版社を辞めても再就職できるのか…。みんな、そんな恐怖心を抱える“負のスパイラル”に陥ってしまうのです」と。

初田さんは「だからみんな会社を辞められないんです」と訴える。会社もその状況を分かった上で、パワハラを見逃しているから社員の鬱病の発症や過労死が一向になくならないのではないか、と初田さんは指摘する。

40歳で留学を決意

40歳で出版社を退社した初田さんは一念発起。中国語を学ぶために上海の大学への留学を決意する。

「出版社にいた頃から台湾旅行が好きで、中国語に興味を持っていたんです。当時は独学で中国語を覚え、旅行に行くことで、仕事のつらさを忘れることができて…。でも、いざ留学していかに無謀だったかを思い知らされましたが」と初田さんは留学時代を思い出しながら苦笑した。

中国の大学では初田さんが最年長だったという。

最初は年齢の離れた同級生とまったく会話ができず、クラスの中で一人浮いていたというが、親友もでき、しだいに元気を取り戻すとともに、中国語のスキルもめきめきと上達。現在は中国の大手メーカーに就職し、中国語の通訳として、商談などのために日本と中国を行き来する充実した日々を送っている。

「決してあきらめるな!」新たなに夢に向かって

「最近も大企業の電通で自殺者が出るなど日本の“ブラック企業”の実態は私が辞めた頃と少しも変わっていませんね。私のように苦しんでいる人は現在も多いと思います」と、初田さんは中国で暮らしながら日本の会社員たちを憂い、心配する。

「中国での私の今の仕事も決して楽とは言えませんが、東京の出版社のトイレの中でうずくまって絶望していたときよりは、はるかに幸せです。今、会社で苦しんでいる人たちもみんな夢をあきらめずに頑張ってほしい」。第二の人生を切り開き、持ち前の快活さを取り戻した初田さんは笑顔で、日本の会社員たちにこうエールを送る。

情報源: 脳裏よぎる過労死…トイレで絶望するアダルト誌編集者ら 出版社のブラックな実態:イザ!

好きこそもののなんとやらかね・・・
この人は独学でも、下地があったわけだ。