ニセの兵馬俑まで登場!西安の観光客争奪“冬の陣”日本人は割高当たり前:イザ!

さすが中国・・・


中国メディアのサイトに掲載された、「ニセ兵馬俑の摘発」写真(上)と武人俑の模型とされる写真

【藤本欣也の中国探訪】

陝西省の省都・西安はその昔、長安と呼ばれた。言わずと知れた唐の都である。西周、秦、前漢、隋などの時代も含めると、1000年の長きにわたり都となったのが西安と周辺だ。その中国随一の観光名所に、とんでもない事態が起きていた。(西安 藤本欣也、写真も)

西安一帯の観光のハイライトは、何と言っても、延べ1億2000万人以上が見学したという「兵馬俑(へいばよう)」だろう。

西安中心部から北東に約40キロ離れた地に、1987年、世界遺産に登録された「秦始皇帝陵博物院」がある。

タクシーから降りると、ワーッと四方八方から人が集まってきた。みな大声で数字をぶつけてくる。100元(約1700円)、150元、200元…。一様に顔は笑っているが、声は殺気立っていた。物売りやガイドの連中だ。

十数人の山をかき分け、博物院の入り口を目指して歩いてゆく。たいていは次なる“獲物”を求めて四散するのだが、1人だけ離れようとしない男がいた。

髪の毛を7・3に分け、メガネを掛けた一見、学者風のガイドである。

「兵馬俑はここだけではありませんよ。少し離れていますが、心配はご無用。車で送ってあげます!」

地図を見せながら、ひたすら中国語で繰り返す。費用の方は、移動・ガイド代込みで250元(約4200円)だったと記憶している。

またあのガイド連中に追い回されるのはうんざりだ。いっそ彼にまかせようか。物知りのようだし…とも一瞬思ったが、ガイド料金の相場が分からず、結局、断った。

博物院の入場料は120元(約2000円)。年間の入場料収入だけでかなりの高額になるな…などと考えていたら、「日本の方ですか?」と日本語で声を掛けられた。

40代ぐらいの女性ガイドだった。「孫と申します」。発音は悪くない。150元(約2500円)で博物院内の兵馬俑のガイドをしてあげるという。「日本語で説明を受けられるのなら」と思い、彼女にお願いした。

先ほどの学者風の男のことが頭をよぎった。「頼まなくて良かった」と胸をなで下ろしたが、そのときはまだ事の重大性を認識していなかった。

地元の農民が井戸を掘っていて、たまたま兵馬俑の破片を発見したのが74年。秦の始皇帝(紀元前259~紀元前210年)の陵墓を守る将兵・軍馬など、陶でできた副葬品が2000年以上もの時をへて出土したのだ。

一号坑で出土した兵馬俑。手に持っていた武器は土中でなくなった

その発見場所に建てられた「一号坑」に入った。

まるで、巨大な体育館といった感じである。230メートル×62メートル。広さ1万4260平方メートルの地下5メートルのところに、兵馬俑がずらりと並んでいた。出土数約6000体。将兵(武人俑)の平均身長は約180センチという。想像以上に大きい。

「当時の人間とほぼ同じ身長といわれています。始皇帝も大きかったそうです。何センチだと思いますか? 186センチとの説があります」

始皇帝は、その名の通り、中国を初めて統一した最初の皇帝だ。郡県制を設けて中央集権体制を築き、度量衡や貨幣を統一。焚書坑儒により思想の統一も敢行した。国境の長城を増改築し、「万里の長城」として整備したことでも知られる。

西安出身という孫さんの話には驚かされることが多い。武人俑の顔も1体ずつ異なるという。

「でも、ひげをはやしていることと、一重まぶたである点は共通していますね」

胸部は空洞だが、足の部分は重くなっている。倒れにくくするためらしい。もともとは色彩が施されていて、色の残る兵馬俑が出土することもあるという。

1980年代には、武人俑の頭部を切断して香港で売りさばこうとした輩(やから)がいたが、「捕まって死刑になりました」。

この地を訪れた国内外の著名人の写真も展示されていた。シンガポールのリー・クアンユー元首相は発見後間もない70年代に訪問。習近平国家主席の父、習仲勲元副首相の写真もあった。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領も以前に訪れている。

「プーチン(ロシア大統領)さんは出土した軍馬をまじまじと見て、なんて質問したと思いますか」

「うーん、見当も付きません」

「『どうして、あぶみがないのか』と聞いたそうです」「土の中でなくなったのではありません。当時の馬は小さかったので必要なかったと考えられています。それにしても、人によって目の付け所が違うんですね」

1時間ほど見学して外に出ると、空気がかなり冷たい。12月下旬のこの日の最低気温はマイナス5度まで下がった。2月まで西安観光はオフシーズンという。

「だから、ガイドたちも客を確保するのに必死なのです。私はあなたがきょう2人目。1人目も日本人でした。幸運でした。中国人客より日本人客の方がいい」

「あっ、日本人は割高なのですね…」

「はい、日本人は150元。中国人だったら90元(約1500円)です」

孫さんは悪びれることなく、そう言った。外国人を対象にした割高料金は観光地では横行しているものだ。彼女を批判しても仕方がない。もっと信じられないことが、西安では起きていたのだから-。

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今年に入り、北京の支局で新聞を読んでいて目が点になった。

「西安当局、ニセ兵馬俑を破壊!」

中国共産党機関紙、人民日報系の英字紙「グローバル・タイムズ」の見出しはそう躍っていた。中国人業者が兵馬俑の模型を展示して、高い入場料を取っていたというのである。当局が1月11日夜、摘発に乗り出し、「40体以上のニセ兵馬俑」が破壊された。

西洋人だったか、兵士に変装して兵馬俑の列に紛れていた、という話は以前聞いたことがある。今度はまがい物が作られたらしい。

兵馬俑の模型とされる写真をネットで見た。「赤い唇」に「二重まぶた」である。笑ってしまった。

ネットでは「本物の見分け方」の文章まで出回っていたというが、違いは一目瞭然だ。

北京の女子大生は模型を見学させられて、「秦始皇帝陵博物院」の2倍の料金(240元)を取られたというから、開いた口がふさがらない。

ガイドも、タクシー運転手もぐるになって、観光客をカモにしていた。私も、あの学者風の男に一杯食わされるところだった。

摘発の発端は、西安市トップの王永康・党委員会書記がネットで「本物の見分け方」の文章を目にしたこと。地元当局に指示し、強制捜査が決まった。

王書記は「西安を訪れる観光客の皆さまに申し訳ない」と平謝りだが、地元では以前から知られていたらしい。摘発されると、地元の観光業界の評判が落ちるので、結局、見て見ぬふりをしてきたようだ。

せっかく世界遺産を残したというのに、そのふがいない活用ぶりに、始皇帝もあきれていることだろう。

修復中の兵馬俑。現在も発掘調査は続いている
実際に出土した武人俑。一重まぶたが特徴
秦始皇帝陵博物院の「一号坑」
秦始皇帝陵博物院の「一号坑」

情報源: ニセの兵馬俑まで登場!西安の観光客争奪“冬の陣”日本人は割高当たり前:イザ!

うへぇ・・・