過労死につながる「定額残業代」とは (毎日新聞) – Yahoo!ニュース

どうにかならんのかね。


「定額残業代」という制度があります。毎月一定時間の残業が発生することを前提に、その時間分の残業代を固定給で支払うのですが、この制度が長時間残業の温床となっているケースが見られます。特定社会保険労務士の井寄奈美さんが事例をもとに解説します。

◇みなし残業時間を過労死ラインに設定する例も

少し前の判例ですが、新入社員の居酒屋店長が、過重労働による心疾患で死亡した大庄事件(大阪高裁、2011年5月25日判決)があります。大庄は「日本海庄や」などを展開する外食チェーンです。新入社員の月給19万4500円のうち7万1300円が、「役割給」の名目で支払われる80時間分の定額残業代でした。

過労死ラインとされる毎月80時間の残業を前提とした賃金設計と、月平均112時間と認定された長時間残業を放置していたことで、会社だけではなく代表者と人事担当役員らの会社法上の責任、不法行為責任も認められました。遺族に7680万円を支払うよう命じる判決が下されています。

通常、会社が社員を雇う時は、所定労働時間分の給料額を示します。残業代は、残業時間に応じて別途計算して支払うのが原則です。会社は社員に残業させると金銭的負担が増えます。この負担を強いることで長時間労働を抑制するのが、本来の法律の意図です。

ところが、定額残業代を導入する会社では、社員が一定時間まで残業しようがしまいが毎月の支払額は変わりません。「一定時間」(みなし残業時間)を過労死ラインの80~100時間に設定し、長時間労働を放置しているケースが見受けられます。また、「一定時間」をある程度に抑えていても、社員の労働意欲をそいでしまう場合もあります。

こうした会社では、固定された給与の総額を単純に基本給と残業代に分けて、「給与総額の中に残業代も含まれる」と社員に説明するケースがあります。すると、例えば正社員とアルバイトとの時間給が逆転してしまうことがあります。ある小売りチェーンで実際にこれが起こった事例を紹介します。

◇バイトから登用されて時給が減った正社員のケース

小売りチェーン店でアルバイト勤務をしていたAさんは、当初時間給950円で雇用されました。1年ほどまじめに勤務したことが認められて時間給は1100円に上がりました。

Aさんは残業も積極的にこなし、アルバイトながら月に200時間も働くことがありました。その月は、おおよそ30時間分の割増残業代が支払われ、給料が23万円ほどになることもありました。

そんなAさんに会社は正社員への転換を打診しました。月給は24万円。ただし月給には50時間分の残業代が含まれていました。フリーターが長かったAさんは、20代後半になって家族からも定職に就くよううるさく言われていたので、会社の打診を受け入れることにしました。

Aさんが社員になって初の給料日。給与明細には「基本給17万5000円、固定残業代6万5000円」と記されていました。アルバイトのときよりも残業をいとわず働いたのですが、それでも給料は毎月固定です。

数カ月が経過し、明らかに毎月の労働時間が長くなっているのに給料が増えていないと感じたAさんは、経理職の姉に給与明細を見せて相談しました。すると、時間給がアルバイトのときよりも下がっていることがわかったのです。正社員としての時間給は1030円でした。

◇アルバイトより低い時給に判然としない思い

Aさんはアルバイトの同僚に正社員になったことを自慢げに話しており、仕事帰りの食事で自分が多めに支払うなどしていました。しかし、実は時間給はアルバイトの方が高いことがわかり、ぼうぜんとしたそうです。

もちろん、正社員のメリットもありました。賞与が支給されたり、給料額が安定し生活設計がしやすかったり、家族が喜んでくれたりしたことなどです。ただ、Aさんは「アルバイトより時間給が低い正社員ってどうなんだ?」と、どうも判然としない思いを抱えるようになりました。

これまで積極的に引き受けていた残業もできるだけ避けるようになりました。残業しなくても給料は同じだからです。仕事にも興味が薄れてやる気もなくなってしまったそうです。そうしたAさんの変化に会社側も困っています。

「定額残業代」の制度自体が悪いわけではありません。社員側は、残業をしてもしなくても一定額を得られます。業務を効率化して早く仕事を切り上げようという意識も働くでしょう。ただ、業種や職種によっては、この制度が長時間労働の温床となったり、社員のやる気をそぐリスクがあったりすることも、考えておく必要があります。

情報源: <長時間労働>過労死につながる「定額残業代」とは (毎日新聞) – Yahoo!ニュース

これこそ、制度改革しようや。