金色で強力?偽バイアグラで巨利むさぼる密売集団 インクで着色、不衛生な粗悪品:イザ!

正規ルートで購入すればいい。

【衝撃事件の核心】

大阪市内の集合住宅の一室が“偽バイアグラ工場”と化していた。性的不能(ED)治療薬「バイアグラ」の模造品を販売目的で隠し持っていたとして、台湾人や韓国人ら男女3人の密売グループが10月、医薬品医療機器法違反(販売目的貯蔵)などの疑いで大阪府警に逮捕された。府警は複数の関係先から国内で過去最多級となる錠剤約30万錠を押収。中には「ゴールドバイアグラ」と称して金色にコーティングし、強力な効能をうたった錠剤もあった。グループは中国の密売組織から韓国経由で錠剤や容器などを品目ごとに輸入していたとみられ、それらを大阪で集約して拠点の“工場”で製品化。全国の密売人に売りさばいて巨利を得ていたようだ。日中韓3カ国にまたがる国際犯罪をうかがわせるが、全容は果たして解明できるのか。

犯人グループが売りさばいていた架空の「ゴールドバイアグラ」(手前)や偽物のバイアグラ
犯人グループが売りさばいていた架空の「ゴールドバイアグラ」(手前)や偽物のバイアグラ

「ファイザー社」刻印も

「韓国から偽バイアグラや容器、ラベルなどが、国際スピード郵便で府内に頻繁に送り付けられている」。昨年11月、大阪税関から府警に寄せられた情報が捜査の始まりだった。

今年2月に逮捕された偽バイアグラの密売人の取り調べから、市内に「卸元」がいることが判明。内偵を続けていた府警は9月20日、同市西成区の集合住宅など4カ所を一斉に捜索したのだ。

その結果、偽バイアグラなど6種類の錠剤計約30万錠を押収。容器やラベル、封をするための圧着機なども見つかった。

グループの主犯格とみられる台湾籍の住所不定、貿易業の女(36)の潜伏先に偽バイアグラはなかったが、販売目的で所持していたとみられるルイ・ヴィトンの偽財布など67点が見つかったため、商標法違反容疑で現行犯逮捕。後日、偽バイアグラなど約7万錠を販売する目的で保管したとして、医薬品医療機器法違反容疑で再逮捕した。

さらに、バイアグラの製造元の米・ファイザー社のロゴマークを刻印した模造薬を所持していたとして、商標法違反容疑で韓国籍の無職の男(47)=同市天王寺区=と日本人の雑貨店経営の男(64)=同市西成区=も逮捕された。

府警の取り調べに対し、逮捕された男2人は「販売目的で持っていた」と容疑をおおむね認める一方、女は「知人のものを袋詰めしていただけ」などと否認し、その後も雑談にしか応じなかったという。

観光客を隠れみのに

府警によると、女らのグループは韓国の協力者から、府内の在日韓国人らが経営する料理店やエステ店に容器やラベルなどを品目ごとに送付させていた。後日、グループの関係者が「送り先を間違えた」などと説明し、引き取りに来ていたという。

送り主の名前や住所は韓国語の通訳が読んでも意味が分からない走り書きだった。不審な荷物として大阪税関が着目し、開封して検査したことが事件発覚の端緒となった。

捜査幹部は「荷物を受け取った人たちは『中身は知らなかった』と言い張っており、同じ犯行グループだと判断できない。一般的な日本人なら不審な荷物は預からないだろうが、韓国人ならではの同郷意識の強さに目を付けたのかもしれない」と推測する。

錠剤は郵便だけでなく台湾人の女や韓国人の男が、自ら運び屋となって韓国から持ち込むこともあったようだ。今年9月までの2年9カ月の間に女は64回、男は37回も出入国を繰り返していた。他にも、キャリーバッグを引いて観光客を装ったアジア系外国人が、グループの拠点に出入りする姿も確認されている。

2人が利用していた関西国際空港は韓国や中国からの観光客であふれており、捜査関係者は「大阪で外国人が大きなキャリーバッグを引いて歩いても目立たない。堂々と錠剤を持ち込むための隠れみのにした可能性もある」と指摘する。

こうして密輸した錠剤や容器などを、拠点としていた西成区の集合住宅や浪速区のビルの一室に集め、1ボトルに30錠を詰めて次々と製品化していた。

府警によると、2人は偽バイアグラの「卸元」で、一緒に逮捕された日本人の「中卸し」の男に正規品の30分の1以下の1錠あたり40円で売りつけていた。この男が全国に100人以上いるという密売人に同100円で転売。最終的に「個人輸入品」として雑誌などの広告を見て申し込んだ人に、同500~600円で売られていた。密売人には暴力団関係者も含まれていたとみられる。

偽物服用で死亡例も

府警が9月に押収した錠剤約30万錠は氷山の一角とみられるが、国内最多級の量だけに府警の計数作業は難航を極めた。

捜査関係者は「(捜査の拠点だった)吹田署内で山積みされたボトルを開封し、十数人が手作業で3日間、朝から晩までバイアグラを数え続けてげんなりした」と振り返る。

バイアグラの錠剤は通常、青色に着色されており、国内で処方されている正規品には有効成分「シルデナフィル」が25ミリ、または50ミリ含まれる。米国では100ミリのものもあるが、日本では未承認のため処方することはできない。

府警によると、日本人の体格なら50ミリでも100ミリでも効き目に大差はない。むしろ欧米人より体格が小さい分、副作用が大きくなるため、国内では承認されていないという。

押収した偽バイアグラは正規品のコピーである青い錠剤もあったが、捜査関係者の目を引いたのは金色に塗られた錠剤だった。「ゴールドバイアグラ」と名付けられた架空の商品で、成分は正規品の5~10倍の「シルデナフィル220ミリ含有」をうたっていた。

すさまじい効能がありそうだが、捜査幹部は「数字が大きければ効果が高いというものではなく、体格に応じた適量がある。粗悪品で実際に表示された含有量があるのかどうかも分からず、健康被害が心配だ」と厳しい表情で語る。

海外では偽バイアグラの使用で死亡例があるほか、国内では奈良県で変死した男性の所持品から、偽バイアグラの錠剤が見つかったことがあるという。

韓国マフィアが黒幕か

押収品には、ボトルの密封に使う銀紙の圧着機や錠剤の説明書なども多数含まれていた今回の事件。捜査関係者は「韓国マフィアなどの犯罪組織が日本のマーケットを狙った大がかりな組織の犯罪ではないか」と言及する。

府警によると、中国に偽バイアグラの密造所があるとの情報があり、不衛生な環境下でプリンター用のインクで錠剤を着色している形跡もある。

中国の犯罪組織が密造した偽バイアグラが韓国を経由して日本に持ち込まれた-。これが捜査当局の見立てだが、国内だけでも「卸元」や「中卸し」、「密売人」など役割が明確に分かれていた。組織の全容は分からないが、今回の摘発も「トカゲの尻尾切り」に過ぎないのかもしれない。

非正規ルートで購入するから、こんなことになる。