電通社員「部長指示でウソ申告」残業140→100時間:朝日新聞デジタル

徹底的に洗ってほしいが・・・

25年前に若手社員が過労自殺し、責任を認めた電通。再発防止を誓ったが、再び悲劇が起きた。教訓はなぜ生かされなかったのか。

「もう4時だ 体が震えるよ…… しぬ もう無理そう。つかれた」

昨年10月21日早朝。広告大手、電通の新入社員だった高橋まつりさんは、SNSにこんなメッセージを残した。東京・汐留の本社ビルの入退館記録などによると、この日退社したのは午前3時38分。前日の午前8時56分に出勤してから、19時間近くが過ぎていた。

その4日後。日曜日だった25日は午後7時27分に出社。28日午前0時42分に退社するまで約53時間、ほぼ連続して社内にいた記録が残る。11月5日にはこう書き込んだ。「タクシー乗ったなり へろへろ」

この日の退社時刻は午前2時7分。前日から続けて17時間近く社内にいた。深夜勤務や休日出勤が続いたこのころ、高橋さんはうつ病を発症したとみられる。

12月25日朝、都内の電通の女子寮で身を投げ、自ら命を絶った。24歳だった。

今年9月30日、三田労働基準監督署(東京)は高橋さんの自殺を労災と認めた。労基署が認定した1カ月(10月9日~11月7日)の時間外労働は105時間。試用期間が終わり、10月に本採用になってから倍以上に増えていて、仕事によって強い心理的負荷を受けていたと判断された。

労働基準法は、1日8時間、週40時間を労働時間の上限と定める。これを超えて時間外労働をさせるには、労基法36条に基づいて労使が協定(36〈サブロク〉協定)を結び、労基署に届ける必要がある。電通が届けていた上限は原則として月50時間。ただし、特別な場合には月100時間まで認められる。

電通では、社員が始業・終業の時刻を自己申告し、上司が承認することで労働時間を管理している。この記録では、高橋さんの時間外労働は月50時間の範囲に収まっていた。労基署の認定とは大きな開きがある。

電通は一方で、「フラッパーゲート」と呼ぶ出入り口を通ると、入退館時刻を自動的に記録するようにしている。1991年に入社2年目の社員が自殺し、再発防止策として導入したしくみだ。労基署はこの記録をもとに、高橋さんが36協定の上限を超える長時間残業をしていたと認定した。

電通広報部によると、「入館と始業、終業と退館の間に1時間以上の開きがあった場合、理由を申告し、上司が確認する」という。記録のずれが生じるのは、「ラッシュを避けるために早めに出社したり、終業後にサークル活動や自己啓発活動をしてから退館したりするなど、私的な理由で残っているケースがある」からだと説明する。

だが、30代の現役社員の説明は異なる。夜遅くまで残業したとき、私的な理由で会社に残ったことにして残業時間の申告を減らしているという。終業と退館に1時間以上の差があれば、「『(新聞やテレビなどによる)私的情報収集』『(忘れ物などの)一時的入退館』『自己啓発』などの理由をつけて申告する」という。「勤務時間中の一部を働いていなかったことにして『中抜き』することもある」と明かす。例えば、午前1時に仕事が終わって退館した場合、午後8時から午前0時の間は働いていないことにして申告する。

部長から「残業が100時間を超えないように処理して」と指示を受けているためだ。「ひどい月は140時間は残業しているのが実態だが、ウソをついているので、システム上は残業時間が100時間を超えていない」と打ち明ける。

「部長『君の残業時間の20時間は会社にとって無駄』」。上司に言われたとして、高橋さんがSNSに残した言葉だ。高橋さんにも、「上司が実際より短い残業時間を記録するよう指示していたのではないか」。遺族側はそうみている。(大内奏、編集委員・沢路毅彦)

過労自殺した新入社員の労災認定を受け、電通の本社に立ち入り調査に入る労働基準監督官ら=14日、東京都港区、金川雄策撮影
過労自殺した新入社員の労災認定を受け、電通の本社に立ち入り調査に入る労働基準監督官ら=14日、東京都港区、金川雄策撮影
電通社員が勤務時間を自己申告するしくみ
電通社員が勤務時間を自己申告するしくみ

残業の定義を明確にするべきだよな。
いかなる理由であろうとも、在館=残業にすればいい。