水辺のカメ、ほとんどすべてが外来種 ブーム後の無責任放逐が生んだ結果 | THE PAGE(ザ・ページ)

ふむ・・・

日本でもっともペットとして愛好されているカメ、ミドリガメ。正式な名称はミシシッピアカミミガメで、北米原産の淡水カメです。実は、この「ミドリガメ」が現在、日本国内で侵略的な外来種として問題視されています。

今年の春、環境省が国内全国で野生化しているミシシッピアカミミガメの個体数は790万匹に登るとする推定値を発表しました。この数が多いのか少ないのかすぐにはピンとは来ませんが、在来種のニホンイシガメ野生個体の推定値が100万匹とされるので、圧倒的にアカミミガメが多勢を占めていることが分かります。

この数値からも、アカミミガメがほかのカメや動物たちの餌や住処を奪って、在来の生態系に悪影響を及ぼしているのではないかと、爬虫類学者や生態学者は懸念しています。(解説:国立研究開発法人国立環境研究所・侵入生物研究チーム 五箇公一)

日本国内で見かけるカメ、ほぼすべてが外来ガメ

米国からのカメ目の輸入量の推移(出典:財務省貿易統計)

確かに、身近な公園の池やため池、あるいは河川で見かけるカメは、ほぼすべてがアカミミガメという状況で、むしろこれが日本を代表するカメとして馴染んでしまっていると言っていいでしょう。2010年に山梨県の公園で背中に「カメデス」と落書きされたカメが発見され、市民の間で騒動となり、県が保護を検討した、というニュースが話題になったこともありましたが、このカメもよく見たら外来種アカミミガメでした。

ここまでアカミミガメが増えてしまったのは、やはり人間が逃がしてしまったことが始まりでした。アカミミガメは、1950年代から輸入が始まりました。さきにも記した通り、稚ガメがミドリガメの愛称でペットとして販売され、すぐに国内で人気者となりました。縁日の屋台で、ミドリガメの浮かぶたらいを囲んで「カメすくい」をした記憶が残る読者もいるのではないでしょうか。

1960年代以降、輸入量が急増し、ピーク時は年間輸入数が100万匹を超えたともいわれます。1966年には大手お菓子メーカーが商品の景品に生きたアカミミガメを発送したことも話題になりました。そして1970年代から、全国各地で野生化個体が目立つようになりました。

ペットとして売られるときは、手のひらに収まるほどの大きさで、鮮やかな緑色の甲羅と身体で、とても愛らしいカメですが、寿命は20〜30年と長く、死ぬまで成長を続けるため、最後には甲羅の大きさが30cmを超えるほどまで大きくなります。また、大きくなるにつれ、甲羅と体色は黒ずみ、ミドリガメならぬクロガメと化し、性格も荒くて、へたに指を水槽に入れたりしたら噛み付かれかねないほどになります。飼う場所も手狭になり、水槽から出る音や匂いが気になるなどして飼いきれなくなった飼い主たちが、近くの池や川に逃がしてしまうケースが増えてしまったのです。

その後、輸入数は減ったものの、ペットブームのピーク時に購入された個体がちょうど現在大きく育った頃であり、今後も放棄個体は絶えることはないものと推測されます。

カミツキガメ以上に広範に分布するアカミミガメは、未だ特定外来生物に指定されず

中国・広州の市場で売られたアカミミガメ(写真提供:五箇公一)

寿命も長く、身体が死ぬまで大きくなるという特性は爬虫類全般に当てはまるので、ほかのペット爬虫類でも同様の問題が起こります。すでにカミツキガメやワニガメなど、アカミミガメ以上に大きく成長する種の放逐事例が報告されており、カミツキガメについては、野生化した個体群が急増して問題になっています。カミツキガメも販売時には手のひらに乗るほどの小さなかわいらしい個体でした。それが成長すると50cmに届く大型個体となります。カミツキガメについては2005年に外来生物法の特定外来生物に指定されました。

一方、アカミミガメのほうは、まだ法的な規制は受けておらず、輸入も飼育も自由のままです。本来ならばここまで数も増えて生態影響が懸念される外来種であるならば特定外来生物に指定して、輸入を停止すべきなのですが、あまりに野生化した個体数が多く、また北海道から沖縄まで全国の湖沼・河川に分布が広がっており、現在の環境省予算ではとても防除することができない、という判断から、指定が見送られてきました。

しかし、もはや野生化を放置することはできないと、環境省も本種の規制について検討を開始しました。問題となるのはその防除方法です。特定外来生物に指定されているカミツキガメも野生個体の防除については現時点で捕獲以外に方法がなく、その個体数を減らすところまでの効果はあがっていません。カミツキガメ以上に広範に分布するアカミミガメを捕獲だけで低密度化することはほぼ不可能と言っていいでしょう。アカミミガメを法的な規制対象とするにあたっては、まず有効な防除策を立てる必要があり、新たな防除技術の開発が急がれます。

一度蔓延してしまった外来種を防除するには莫大なコストと時間、そして多くの生命の犠牲を要します。今後の外来種管理に求められることは、これ以上、アカミミガメのような飼育個体の放逐が起こらないようにすることです。そのためには、飼育という行為に求められる責任と知識を広く普及啓発していく必要があります。

生物の飼育は、生物の生き様を観察する行為を通して、生命の尊さや生物学の面白さ・深さを学ぶ重要な機会であり、否定されるべきものではありません。しかし、飼育する前に、その種が飼育に向いているのか、自分が死ぬまで面倒をみられるか等、飼育個体としての適性を判断するための情報をしっかりと飼育前に知っておくことが必要であり、また、研究者や専門家、そして販売者も積極的にそうした生態情報を公開して伝えることが大切だと考えられます。

ちなみに、筆者がかつて中国の広州に動物移送の実態調査で出張した際に、アジア最大規模を誇る広州市の食材市場にも訪れたのですが、大量のアカミミガメが販売されているのをみて驚いたことがあります。大きなかごに、大きさの揃ったアカミミガメが満杯に入れられて店頭に並べられていました。規格が揃っているところをみると、どうやら養殖されているものと考えられました。

このカメをどうやって食べるのかは不明でしたが、さすが「食在広州」とはよく言ったものだと、中国の「食欲」に感心してしまいました(もっともこのことわざの本当の意味は「死ぬまでには広州で美味しいものを食べるべき」ということらしいです)。残念ながら、日本でアカミミガメを美味しく食べるという文化はすぐには生まれることは難しいだろうと思われます。

【連載】終わりなき外来種の侵入との闘い(国立研究開発法人国立環境研究所・侵入生物研究チーム 五箇公一)

マジか・・・