三菱重工、大型客船から撤退へ LNG船に注力:朝日新聞デジタル

ふむ・・・

三菱重工業は18日、造船事業のうち、10万トンを超えるような大型客船の建造から撤退すると発表した。今後は、実績のある液化天然ガス(LNG)船などに注力し、同業他社との提携でコストダウンを探る。川崎重工業も造船事業の抜本的な見直しを表明しており、総合重工メーカーによる造船事業の立て直しの動きが進んでいる。

三菱重工の宮永俊一社長は18日の記者会見で、大型客船からの撤退について「事業部門は何とかなると思い込んでいたが、客観的な意思決定をしないと今後やっていけない」と述べた。

同社が今春から客船事業の見直しを社内で進めてきたのは、巨額の赤字を出したからだ。独企業向けの大型クルーズ船2隻を約1千億円で受注したが、設計の遅れなどで昨年度までに2300億円超の赤字となっていた。

事業見直しの結果、複雑な設計に対応できる人員がいないのに受注を急いだことや、海外顧客とのやりとりにも不慣れで調達先の変更を繰り返したことなどに問題があったと結論づけた。客船事業は今後、10万トン以下の中小型で、国内の調達先で建造できる範囲に受注を絞るという。

今後、造船事業はLNG船など実績のある船に軸足を置き、国内の造船所のコストダウンに取り組む方針だ。低価格で船をつくる能力にたけた今治造船(愛媛県今治市)、大島造船所(長崎県西海市)、名村造船所(大阪市)の専業メーカー3社と8月から提携を協議しており、一部の建造を3社の造船所に任せることなどを検討中だ。宮永社長は「今年度末までに方向性を出したい」と話した。

川重も9月末、新しく手がけた資源開発用船などで大きな損失が出たとして、造船事業全体の抜本的な見直しを発表した。国内の造船所は中国内に持つ現地企業との合弁工場に比べて人件費などのコストが高く、低価格の船の量産は中国で増やしていく方向だ。

■「船余り」解消見えず

造船市況は厳しく、日本船舶輸出組合によると、国内の受注量に当たる今年4~9月の輸出船契約実績は前年の同じ時期に比べて9割近く減った。船を買う側の海運業界が船余りに悩み、新たな発注が激減しているからだ。

「採算度外視で荷物をとりにいく血みどろの値下げ競争をしている」。日本船主協会の工藤泰三会長(日本郵船会長)は9月下旬の記者会見で嘆いた。約10日後、日本郵船は1950億円の特別損失が生じそうだと発表した。保有する船の価値が下がったためで、今月中に公表する16年9月中間決算に盛り込む。

調査会社のトランプデータサービスによると、鉄鉱石などを運ぶ「ばら積み船」の運賃水準を示すバルチック海運指数は、リーマン・ショック前の10分の1以下に落ち込んでいる。最近は回復傾向にあるが、欧州の債務危機や中国の景気減速で荷動きが鈍いところに過去に発注した船が次々と完成し、「船余り」が解消されない状況だ。韓国では大手の韓進が8月末に経営破綻(はたん)している。

そうした状況では造船市況の回復も当面は見通せず、特に大きな損失を出した三菱や川重が国内の生産体制の見直しを迫られた。両社の造船所の地元も仕事が減る不安にかられる。

大型客船事業から撤退することとなった三菱の長崎造船所の地元、長崎県で造船業の年間出荷額は3600億円と県の製造品出荷額の約23%を占め、産業別ではトップだ。三菱重工の下請け会社の社長は「大型客船の撤退だけなら代わりの仕事も探せるが、他の事業も引き揚げられたら会社として成り立たなくなる」と不安がる。

川重の地元、香川県坂出市も川重が造船事業を抜本的に見直すと発表した9月末、現状の把握に追われた。同市は「いまのところは議論の行方を見守るが、検討結果によっては川重を訪問する必要もある」と気をもむ。(奥田貫、高橋尚之、伊沢友之)

三菱重工業と川崎重工業の拠点と見直しの方向性
三菱重工業と川崎重工業の拠点と見直しの方向性

どれだけ首切りがあるのか・・・