ハンター養成学校入校ルポ いざ鹿とイノシシ「狩り」へ 知恵と体力と強運…野生鳥獣との1秒の真剣勝負:イザ!

ほぉ・・・


野生鳥獣による農林業被害を食い止めようと長野県が開設した「ハンター(狩猟者)養成学校」の銃猟講習が長野市内で開かれ、生徒の記者もいよいよ「狩り」に“参戦”した。猟銃を携える猟師の後に付き、里山を駆け回りながら学ぶ狩猟の基本。身体能力で人間をはるかに超越する野生鳥獣を仕留めるには、ありったけの知恵と体力、そして何よりも“強運”が必要だった。

猟銃を携えた猟師とともに鹿やイノシシの痕跡を探す生徒たち=長野市(三宅真太郎撮影)
猟銃を携えた猟師とともに鹿やイノシシの痕跡を探す生徒たち=長野市(三宅真太郎撮影)

色とりどりの落ち葉が絨毯(じゅうたん)をなす長野市若穂の里山が講習の舞台だ。鹿やイノシシなど「大物」を相手にする場合、チームによる「巻狩り」が選択される。山の上部から下へ獲物を追い込んでいく「勢子(せこ)」と、上部から逃れてきたそれらを麓で待ち構える「待ち」に分かれて標的を挟み撃ちにする方法だ。

19日に行われた講習では地元猟友会の講師と生徒が2つのグループを作り、記者は「勢子」の一員として猟師とともに山の尾根に立った。起立するのもやっとの急斜面を1歩1歩降りていく。辺りに響くのは、落ち葉を踏む音だけだ。

「おーい、おーい」。猟師は斜面途中の泥沼の前で突然足を止め、大きな声で周囲に呼びかけた。そこは「沼田場(ぬたば)」と呼ばれる。獣が身体についたダニや寄生虫を洗い落とすための「風呂」で、ついさっきまで使われた形跡があった。

夜間に活発に動く鹿やイノシシは昼間、木陰で寝ており、人間が大声で脅かすと、脱兎(だっと)のごとく逃げ出すという。その瞬間を狙って素早く猟銃を放つのだ。

「獲物を撃てるかどうかは1秒の勝負。山を知り尽くした彼らを仕留めるのは容易ではないよ」

先導する長野市猟友会の徳武袈裟光(けさみつ)さんはそう話し、猟銃を握る手に力を込めた。

下り始めて約30分。下る斜面は一層鋭角になる。木々の小枝が顔を引っかき、ツタが足にからまる。もはや何回転んだか覚えていない。全身泥まみれになりつつ、さらに1時間ほど降りたが、結局“手ぶら”のまま、麓で控える「待ち」のメンバーたちと行き会ってしまった。

途中、記者を含む生徒たちはガサガサと音を立てながら斜面を転げ落ちた。聴覚が鋭い動物はさっさと逃げてしまったのかもしれない。生徒の一人、会社員の岩本康さん(33)=長野市=は「一度も転ばずに斜面を駆け下りて行くなんて…」と、山に慣れた猟師の足運びに感動していた。

しかし徳武さんによれば、ベテラン猟師でも10回の猟で獲物に出合えるのは3回ほど。運良く見つけても銃で的を射なければ万事休すだ。実際に捕獲できる確率はもっと低いという。

「四駆(4本足)で突っ走る鹿やイノシシに、2本足の人間はまともに立ち向かえない。それだけに、やっとの思いで捕まえたときの感動は格別。懲りずににまた山に来てください」

徳武さんは落ち込む記者をそう励ましてくれた。獣たちは木陰から、悪戦苦闘する記者をしたり顔でながめていたに違いない。

とらえた鹿の解体の仕方を生徒たちに教える猟師(手前)=長野市(三宅真太郎撮影)
とらえた鹿の解体の仕方を生徒たちに教える猟師(手前)=長野市(三宅真太郎撮影)

この日は、地元猟師が2日前に捕らえた鹿の「解体実習」も行われた。立派な角を携えた推定4歳の雄鹿だ。刃物を入れて皮をはぎ、背ロースやもも肉、あばらの肉など部位別にばらしていく。脂肪はほとんどなく、赤く引き締まった肉が机の上に並んだ。生徒と猟師の計8人が約2時間かけて解体作業を終えた。

赤く引き締まった鹿の肉が机の上に並んだ=長野市(三宅真太郎撮影)
赤く引き締まった鹿の肉が机の上に並んだ=長野市(三宅真太郎撮影)

帰宅後、分け前でいただいた鹿肉を焼いて食べた。猟師が捕獲後、即座に血抜きと内臓処理を施したため臭みはない。牛や豚とは明らかに違うしっかりとした食感があった。野山を悠(ゆう)々(ゆう)と駆け回る獣たちの姿を思い浮かべながら、敬意を表して胃袋に収めた。(長野支局 三宅真太郎)

情報源: ハンター養成学校入校ルポ いざ鹿とイノシシ「狩り」へ 知恵と体力と強運…野生鳥獣との1秒の真剣勝負:イザ!

大変だよな。